Mission4-5
さあて、ここにも長居は無用だな。
事実かどうかは別として、このアトランティスの事情もなんとなく分かったことだし、そろそろ最上階の天野翔琉博士を救助しにいかなきゃな。
おっと、その前に……。
「おい、アマギ……」
「なんだい?ジェットくん……?」
カチャリ……と、俺は自称神様の眉間に拳銃を押し付けた。
普通ならば、子供に拳銃を向けている青年ってことで、非人道的な光景として映るだろう。
残虐極まりなく、残酷な光景……。
だが、こいつは違う。
こいつは、虐殺をしてきた残虐な神様だ。人の命を弄び、人の命を使って遊んだり……そして、今度は俺の祖父の兄である天野翔琉博士を殺す気でいるのだ。
全人類を助けられる少年と、全人類を滅ぼせる神様ーーーそんなもの、はかりにかけるまでもなく、俺が導き出した答えは決まっていた。
「手を引いてくれないか?天野翔琉博士から……まあ、引いてくれないなら俺は引き金を引くことになるけど」
「ふーん。脅してるんだね、この僕を……」
アマギは余裕の表情でこちらを見つめていた。
流石に、拳銃程度では脅しとしては弱いか。そりゃそうだ。なにせ、相手は神様だ。
「ふふふ……いいよ。今回はいいや」
「今回は?今後もだろ?」
「図に乗るなよ、人間……」
ちょん……っと、俺が眉間に突き立てた拳銃にアマギが手を触れると、拳銃はドロッと溶けてしまった。
「僕が本気になれば、お前程度……造作もないけど、天野翔琉の血統であるお前を殺すには、今はリスクがでかいからな……また今度……いずれな♪」
俺はぞわっとする殺気を感じた。
神の殺気……それは、喉元に巨大な死神の鎌を突きつけられているような……そんな感覚に陥った。
「ふふ……良かったねジェットくん。お祖父さんのお兄さんに助けられて……んじゃーねー♪」
「あ、待て!」
アマギは道化のように嘲笑い、突如できた空間の裂け目へと消えていった。
そして、空間の裂け目は消えた。
「はぁ……はぁ……」
緊張が解れた俺の片膝は地に落ちていた。
どっと、汗が流れ落ちる。
「くそ……びびってんのか、俺……」
こんなにも恐怖で動揺したのは初めての事だった。
今でも、心臓の鼓動が早くなって、口の中が渇いて、そして全てが押し潰されるような感覚が俺を襲っている。
そんな感覚の中、突如として耳のイヤホンから緊急連絡が入った。
【……ジェ……ット?聞……こえ……る?……ジェット‼】
「はぁ……はぁ……ん?なんだ?この声は白百合か?」
【ジェット‼ようやく繋がった……あんた今どこにいんの?】
「ん?巨城の地下だ。何かの実験場で、先程伏兵と応戦した。あと、アマギが居たが、逃がしてしまった……すまない」
【そう……ちょっと、こっちは緊急でね……今すぐ、この巨城の頂上に……】
ブツッ……とそこで、通信は途絶えた。
妨害電波か?
「頂上?99階じゃねーのか?」
俺は急ぎ外へ向かう。
おっと、いけない。
「忘れるところだった」
俺は、【あるもの】をこの研究施設に置いて、すぐに地上へと向かった。
あの白百合が俺に連絡を取った上で、緊急とまで言ったのだ。
なにか起こったんだろうな……。
「よし、地上だな」
と、俺が城から出ると、上空……そう、巨城の頂上付近で、巨大な閃光が走った。
そして直後、雷と炎がその場を多い尽くしていた。
「ライたちも頂上に?」
戦闘中なのか?
だれと?
「んー……こっからだと、あれが使えるかな?」
俺は長距離移動ワイヤー装置(白百合のフックショットと同じもの)を上空めがけて狙う。
「うん……距離的に跳躍力が少ないから、そこは補うか……」
その状態で、腰にフックショットを装着して、上空めがけて放った。
ワイヤーの先に付いた、突起状の金属が上空目掛けて飛躍していくが、次第にスピードを落としていく。
「ふむ……」
と、俺は長距離型ライフルを取り出し、突起状の金属目掛けて弾丸を放つ。
1発、2発、3発、4発、5発……。
6、7、8、9、10っと。
「よし‼」
ガキン、と突起物は頂上の屋根の所に刺さり、ガッチリと固定された。
俺が先程やっていたのは、金属の突起物のスピードと威力を上げるために、弾丸でそれを補わせていたんだ。
長距離型ライフルを応用すれば、こんなことにも使えるって訳だ。
「さて、行くか」
俺はフックショットのワイヤー回収トリガーを押す。
そして、頂上へと向かうのだった。




