Mission4-4
地下の奥深くーーー神殿のような古びた地下は、最新機器のオンパレードだった。
謎のガラス容器がずらっと並べられて、なにか怪しい緑色の液体の中央には、目玉みたいなものが浮かび上がっている。
キモい。
「遺伝子系の実験施設のようだな……」
でも、何でここに?
深海にあるこのアトランティス……そして、この実験施設……。
繋がりがありそうで、なさそうな事だが、なんだろうか。
もう少しで、結び付きそうなんだよな。
「アトランティス……神の怒りによって沈められた都市……遺伝子組系の実験施設……あー、なるほどな。そう言うことか……アトランティスが沈められた原因は……」
「へぇ……何が分かったのかな?ジェットくん」
「……」
パン。
「うお、危ない危ない。てか、よく後ろの僕目掛けて、正確に弾丸出せるな……君は、ターミネーターかよ……」
「……なんのつもりだ?アマギ」
「おやおや、ライたちに何か聞いたようだね。まあいいや」
俺が後ろを振り向くと、小さい少年がにこやかに立っていた。アマギ……ライたちの話によると、天野博士を殺しに来た神だとか。
「ジェットくん。ちょっとお話ししないかい?別段と言って、僕は君に対して、何かする気は【今は】ない。だからこそ、ここは腹を割って話さないか?」
「……いいだろう。ただし、妙な動きをしたら攻撃する。そこだけは、理解してほしい」
「まあ、軍人さん……特に、暗殺なんかの諜報部の人とかはそういう教育受けてるだろうから、構わないよ」
パチン、とアマギが指をならすと、椅子とテーブルが生み出される。
俺とアマギは対面するように、その座席へ座る。
「さてと……さっきの感じだと、君はこの都市がなぜ滅んだのか、分かったみたいだね」
「ああ、まあな」
「じゃあ、答え合わせしてあげるから答えてごらん。僕は神様だーーーしかも、何でも知っている神様だ。君の解答が◯か×か……判定してあげるよ」
「……アトランティスは、沈められたのではなく、自ら沈んだんだ」
「ほう……それは、なぜかな?」
「……海底……つまりは、深海で実験をするために……全ての時間を停滞させてまで、なんの実験をしているのかまでは分からないけど……とにかく深海で実験することに意味があった……」
「うん。正解かな。いいよ、合格だ。まあ、曖昧なところは僕が語ってあげるよ……」
くすりと笑ったアマギは語る。
アトランティスがなぜ沈んだのかーーーなぜ滅んだと言われたのかを。
「アトランティス……かつて、伝説なまでなほどの軍事国家だったこの都市。すでに、この時代から100年前まで程度の科学力が完成していた。当時の王ポセイドンは、軍事国家であることに疑問を抱いていた。なぜ人間同士が戦わなければならないのか……なぜ人間関係はもつれるのか……なぜ人間は愚かなのか。
そういう生物ばかりの世界は、やがて地球を終わらせるほどの愚かな戦いを始めるに違いない。
そう思ったポセイドンは、国民全員を皆殺しにし、自らも毒杯をあおいで、その身を殺した。
だが、彼は死ねなかった。
死んだ直後に、1匹のタコが、彼の身体の中へと侵入し、彼を蘇生させてしまい、彼の身体を操り始めた。
彼の中に侵入したタコは、彼が大事に育て、愛情を注いで育てたペットのタコだった。だから、そのタコはご主人様が死ぬことが許せなかった。勝手に死ぬことは許さないーーーそういう気持ちで彼を生き返らせたが、タコは初めて知った人間の知識に、やがて溺れていった。そして、タコは知った。生命の根源であるものの集まる深海……そこにいるある生物から抽出できるものさえ手に入れれば、自分は永遠に主人と共に生きれるのだと。故にタコは、アトランティスを沈めた。当時の軍事施設をすべて壊し、地盤を破壊し、巨大な空気の膜を都市全体に張った上でーーーさらに都市の皆殺しにされた市民は、全員そのタコの卵を植え付けられて無理矢理生き返らせて操られた。タコは、新たな海底国家を誕生させ、永遠にポセイドンと生きようとした……ここは、タコが求めた不老なる生物とされる【ベニクラゲ】の研究をするためにーーー」
そう言い終わると、アマギはふうっとため息をつく。
どうやら、語り終えたようだ。
「以上だよ、これが模範解答さ」
「いや、憐れだな……そのタコも」
「ん?なんで?」
「人間の知識に溺れてしまって、本来の目的を忘れてしまっているところがさ……」




