Mission4-2
白百合は、勝手に巨城へと入っていってしまった。
まったく、独断行動するなとか、よく俺に言うくせに、お前がやってないんじゃねーかと、叱ってやりたいところだ。
だが、あんなに怒っている状態の白百合に説教などは、火に油であるのだ。
「余計なことを言えば、下手すりゃ殺されるな……」
俺は仕方がなく、一人で巨城へと乗り込むしかなくなってしまったわけだ。
やれやれだぜ。
「さてと、んじゃあまずは……散策しますか」
巨城の周りをぐるりと一周してからでも、遅くはないだろう。まあ、一刻も早く天野翔琉博士を助けなければならない訳なのだけど、何度も何度も同じ手に引っ掛かると、流石に時間のロスになってしまうだろう。
天野翔琉博士を早く助けないと、ライたちに連れていかれてしまう可能性も高いからな。
「ん?なんだこれ?」
巨城の裏側に、小さな窪みを発見した。
しかも、その奥には、スイッチみたいなものが見える。
俺は、拳銃を取り出して、スイッチ目掛けて弾丸を放つ。
すると、スイッチが起動したお陰なのかーーーなんなのかは知らないけど、俺の目の前の壁は地下へと通じる秘密の通路に早変わりした。
「……行ってみるか」
目的の人物は上だけど、遠回りになるかもしれないけどーーー地下から攻めるのは、面白いかもしれない。
というか、その発想はなかった。
もしも、この城が上へ上へ行こうとする者に対する罠で張り巡らされているのだとすればーーーこれが正攻法なのかもしれない。
下へ下へと行こうとすれば、上に上に行けるのかもしれない。
薄暗い通路を、懐中電灯と拳銃を装備して、ゆっくりと確実に進んでいく。
海の臭いというか、なんだろうーーーこの生臭い臭い。
なにか飼ってるのかな?
「酷い臭いだ……」
思わず悪態を吐露してしまうほどに、この空間の臭いは最悪だった。
まあ、白百合だったら、「仕事なんだから文句言わないの」とか言いそうだな。
でもあいつもあいつで、綺麗好きだから、こんな場所は本当なら嫌がりそうだけど……。
それにしても、なんであいつ、あんなに怒ったのだろうか。
いつもいつも、俺が余計なことを言ってしまうからなのだろうけどーーー。
でも、今回はなんだろうか……。
熱があるかないか、確かめるために額を合わせたのだけどーーーそれが、まずかったのかな。
「次に会ったら、謝らねぇとな……」
さて、私情タイムはこの辺で終わらせておこう。
そろそろ仕事タイムのようだしーーー。
「さっきから、感じるぜ……複数人……微かな殺気ーーーほら、出てきな……」
と、俺が言うと、壁からヌルリと人型をしたタコが現れた。
それも、予想通り複数ーーー。
一人二人三人四人……いや、もっといるな。
「タコの擬態……なるほどなるほど……サーモグラフィーでも用意しておくんだった……」
なにせ、いつのまにかこんなにも囲まれてーーーって、多すぎ!
「合計80体……一応、聞いてあげるけど、俺に手を出さずにそのまま素通りさせてくれるタコさんはいるかな?」
……反応なし。
むしろ、ヌルヌルした触手で攻撃してきやがった。
「致し方なしーーーコードネーム:ジェット。戦闘開始します」




