Mission3-8
巨城前に到着した。アトランティス内最強兵器でもあるこの巨城。さてさて、天野翔琉博士の居場所はどこだろうか?
「翔琉の居場所は、ポセイドンの自室……つまりは、王の部屋。どうやら99階ね……」
「どこの不思議のダンジョンだよ……」
99階って……登るだけでもしんどい……。
「まあ、俺に任せな……」
そういってジンライが指パッチンをすると、俺たちはいつのまにか巨城の最上階99階へと到着していた。
「え?え?え?!」
俺は何が起こったのかとっさには分からなかったが、これは俺らで言うところのどこでもド○に近いようなことが起こったのかーーー任意で好きな場所へ移動できる魔法……ってところかな?
「空間魔法……ボル伯父さんに聞いておいて良かったぜ」
「あらあら、神魔法無しでもちゃんと使えるようになって……本当に気持ち悪い才能受け継いじゃって……」
「まあな、俺は母親似だから♪」
親子のこういう会話って、なんだか癒されるよな。ボル伯父さんってことは、ライかディルのお兄さんって事なのかな?きっといい人なんだろうな……あ、ライのお兄さんだったら、いい虎か。
「ぜぇ……ぜぇ……ようやく着いた……」
と、近くの階段からゆらりとライが現れた。汗だらけ……ってことは、この99階を歩いて登ってきたのか?すげぇな……。
「あ、お父さん」
と、ジンライはライの元へ駆け寄る。ライは苦しそうに息切れを起こしている。
「ぜぇ……ぜぇ……よぉ、息子よ……ぜぇ……ぜぇ……パパは疲れたぜ……」
「お父さん、空間魔法使えば楽なのに……」
「俺は空間魔法使えねぇよ……ぜぇ……ぜぇ……お前がこの都市に居るって知らなかったんだよ……ぜぇ……ぜぇ」
「まあ、それもそうか……お父さん……ほら、回復してあげるよ」
ジンライが手のひらからライに向かって温かい光を当てると、息切れをして苦しそうだったライは回復し、いつものように堂々とした面構えになった。
「おし!サンキュー!……ん?あれ、ディルに……ジェットと白百合も……なんだ、みんなジンライの空間魔法で一緒に来てたのか」
にこりと笑いかける虎は穏やかな雰囲気を放っていた。とても、先程襲ってきた狂暴な虎の父親とは思えないほど……。まあ、そういえばライも最初にあったときは狂暴だったっけ。親子って似るものなんだな。
「んじゃ、行くわよ……」
そういってディルが扉を開けようとすると、扉は頑なにそれを拒否した。鍵がかかっている様子ではないのに……何故だ?
「ふむ……これはこれは、また面倒な事に……」
「どうしたんだ?」と俺がディルに問うと、彼女は不敵な笑みを浮かべながらこう言った。
「どうやら、これは罠だったようだ……」
そう彼女が言ったとたんに、99階からの床が1階まですべて突き抜けた。これが何を意味するかと言えば、俺たちはまっ逆さまですごい高さから落ちていくのだったーーー。
「うあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
悲鳴が壁にこだまして、凄まじい叫び声が城の中に響き渡る。思考が麻痺してしまって、この状況を打破する方法が思い付かない。床まで残り10秒。
「ライィィィィィィィィィィィィィなんとかしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「俺にふるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ジンライ!」
「りょうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい、それ!」
パチンと、彼の弾く指の音が俺が床に叩きつけられる1秒前に鳴り響き、俺たちは外へと移動していた。もちろん空中ではなく、地面の上だ。
「はぁ……はぁ……助かった……」
「……おい」
「いったいなんなんだよ、あの城……」
「……おい!」
「ん?その声はジンライ?どこにいる?」
「下を見ろ、下を」
「下?」
と、俺が下を見るとジンライが俺の敷物になっている。ん?この表現は変か……んじゃあ、俺が馬乗りになっている!……ダメだダメだ……なんか、腐った方々喜びそうな表現になっているぞ。
どうやら、移動したところがたまたまジンライの上だったようで、俺はジンライの上に被さってしまっていたようだ。
「ん?くんくん……」
「おい、俺の匂い嗅ぐなよ……なんか、匂った?」
「ハーブとシャンプーの匂い……」
「むむ?あー、それミアにも言われたよ」
「ミア?」
「俺の猫友達」
「へぇ……気が合いそうだ……」
いや、あいつ意外と小難しいから止めといた方がいいぞ。




