Mission3-6
「そこまでよ……」
と女性の声がした瞬間に、ジンライに向かっていった弾丸は当たる寸前に、弾丸は勢いを失い、そして空中でピタリと止まったーーーというか、全てが停止した。そう、時が止まっている、俺たち以外……。
「全く……あんたはなにしてんの、ジンライ!」
そういって目を疑うような美しい女性が、天より舞い降りてきた。
白い羽のようなものをぶら下げた巫女のような服ーーー胸元には懐中時計を身につけ、振り袖の部分には黒い時の紋章を刻んである独特の服を着こなし、舞い降りた女性は、指をならし白百合の拘束を解いた。
「ふぅ……っと、始めまして、天野ツバサ君。私の名前はディルーーー時と空間を操る魔導士にして、そこのアホな虎の保護者よ」
「あなたが噂の……始めまして……天野ツバサって言いますが、コードネーム【ジェット】と呼んでください……ってあれ?ライがあなたを探しに行っていたのですが、会いませんでした?」
「あー、彼ならさっき私を見つけたからってことで、翔琉を探しにいくって巨城へと向かっていったわよ?ーーーって、そんなことより……おい、そこの逃げようとしてる虎野郎」
ビクッと、ジンライは反応してガタガタと震えながら振り向いた。
「おいおい、ジンライ君……なにやってんの?この世界の人間に危害を加えるなって出発前に言ったはずなんだけどなー、なー、なー?!」
「うう……」
「守れないなら、約束は破棄するからね」
「そ、そんなぁ……それだけは勘弁してください!お願いします!あの約束破られると命に関わるんで……」
「ほら、じゃあ傷つけた女の子を治して、事情説明して、謝って……ジェット君にもね……あなた仮にも【神魔法の後継者】って立場なんだから、自重してよね!」
「はい、ごめんなさい」
そういいながらジンライはせっせと、白百合の介抱へと向かった。
「さてとジェット君……私になにか聞きたいことがあるみたいな顔してるけど……私は何を教えればいいのかしら?」
「ーーーじゃあ、この都市について……教えていただけますか?」
「この都市……アトランティスのことね。御察しの通り、この都市の住人は既に死んでいる……今居るのは成仏しきれなかった魂が私の魔法に呼応して一時的に身体を持っているだけなんだけどね……まあ、なんでこの都市が元の時代へとーーー栄えた時代へと戻っているのかと言えば、天野翔琉の居るとされる巨城のフロアにたどり着くためなんだよね」
「???どう言うことだ?」
「天野翔琉が居るとされるフロアは、未来には無くて、過去には存在したの。昔は王様がいる場所だったらしいんだけど、神様によって都市より先に王様は殺された……天井に押し潰されてね……くしくも、天野翔琉はそんな瓦礫の底に眠っているってわけ……かつて王様が死んだとされる場所で……」
「でも、あんたたちなら魔法で瓦礫なんかどうにでもなるんじゃないか?」
「確かに……それは出来ないことはないけど、ひとつ忘れてはならないのは、天野翔琉の近くには怨念を持った王様がいるってこと……下手すると、身体を乗っ取られてしまうから……王様には過去に戻って肉体を一時的に与えることにしたの。そうすることによって、天野翔琉の肉体に取り憑くことは出来なくなるってわけ」
「なるほど……そんな思惑が……」
だからこそ彼女はこの都市全体に魔法をかけた。おとぎ話でもなんでもいい……王様のせいで滅ぼされたこの都市を、過去の時代へと針を戻してやり、生の尊さ……それを思い起こさせ、彼らを完全に成仏させる。そして、天野翔琉を救出すれば一石二鳥というものだろう。
「いやぁ……それにしても、ここがかの有名な都市だとは思えないけどね……もう少し禍々しいところだと思っていたよ」
と、ディルはふふっと笑いながら言う。まあ、確かに……滅びさった都市なんてものは、不気味であるっていうのが普通だが……ん?あれ?でも、今ってディルの魔法で栄えた時代へ戻ってるんだったよな?
「あの、ディルさん?」
「ディルでいいわよ……なにかしら、ジェット君」
「ここって時空決壊が展開しているんですよね?」
「ええ、そうよ。私の力だもの」
「時空決壊って、空間の流れを極端なものにするんですよね?ってことは、別段時間を巻き戻すって訳ではないんですよね?」
「ええ、そうだけど?」
「じゃあ、あなたは時間を巻き戻した上で、さらにその上から重ねがけしたってことですよね?」
「ええ、そうだけど……それがどうしたの?」
「……だとしたら、まずい」
とんでもないことになるだろう。ディルの魔法は時間を巻き戻す魔法……そして、時間を固定する魔法。つまりは、アトランティスが滅ぶ原因となった【あの兵器】も復活している可能性がある。急いで仕事を終えなければーーー。




