Mission3-5
化学vs魔法……なんて、そうそう実現するような世界なんてないよね。きっと、化学が栄えているなら魔法が、魔法が栄えているなら化学はきっと偏りができているものだと思う。だからこうして、魔法使い相手に現代兵器を乱用している俺なんかは、すごく貴重な経験をしているんだと思う。
「光の魔法:弾光‼」
「甘いな、鏡弾‼」
ジンライの放った光の弾丸に相対するように、鏡で出来た弾丸を俺は確実に当てていく。鏡弾……反射という作用を応用した弾丸で、相手の攻撃を等倍でぶつけて相殺させる弾丸。プラスマイナスゼロ、という言葉が似合う弾丸だ。惜しみ無く弾丸を互いに撃ち合うが、俺は拳銃をもう一丁足からジンライ目掛けて蹴り飛ばす。それは、空中で弾丸を放ち、ジンライの頬を掠める。
「ははっ……これが暗殺のプロってやつか‼」
そういってジンライは弾丸を放ちつつ、目を輝かせて楽しそうにしている。殺し合いを楽しいとかーーー考えたことなかったな。
「君いいね……流石は天野家の血統だね」
「天野家の血統は関係ない!これは俺の実力だ!努力した結果だ!」
いまだに止まぬ弾丸の雨嵐。滅び去りし都市の住人は全員既に避難している。あるものは傍観し、あるものは身を隠し、あるものはヤジを飛ばす……それが戦いにおけるルールみたいなものだと思っていたが、今回は【戦い】ではなく【殺し合い】だ。どちらかの命つきるまで、戦闘は終わらない。文字通りの【死闘】だ。
「さてさて、この虎相手に本気を出すべきか……出さないべきか……」
「へぇ……お互いに手加減して戦ってたって事なんだね♪」
「まあ、2割ぐらいかな」
「へへん、俺1割♪」
「ん?そのわりに弾丸掠めたりしてるんだ……」
「カチーン!光の魔法:聖邪光纏・剣ver!」
ジンライは突如手から光の剣を出して、俺の弾丸を真っ二つに切り分けていく。こいつ、遠距離型じゃなかったのか!?次第に距離を詰められる!?
「ほら、とどめ……」
光の剣が俺目掛けて降り下ろされる……だが、俺には当たらなかった。直前、ジンライの腕に足を引っ掻けて、上半身で勢いをつけて投げ飛ばしたのだ。
「ふう、危ない危ない……」
しかし、ここまで接近されるとは……近距離戦闘に変更せざるおえないか?
「くそ、バカにしやがって……てかさ、お前……本当に人間か?」
「人間ではないお前に言われたくない」
「逆だよ逆。人間じゃないから、聞いてるんだよ。人間って立場だと偉そうにふんぞり返ってしまうじゃん……あーあ、俺の母親は別な。母親は偉大だぜ……俺はマザコンだぜ……大抵の男の子ってのはマザコンだぜ」
「反感買いそうな台詞だな」
「なにを!俺の母親は世界最強に可愛くて優しいんだぞ!今度だっこしたりなめ回したり、抱き枕にしてもいいって言われてるし……」
「そんなこと言う母親は、母親としてどうなんだろうか……」
ディルって人そんなに変態なの?なに?なんなの?ライといいこいつといい……異世界人って変態多いの?
「さてと……ジェット君や。そろそろ、決着をつけてやる……魂をバカにしたお前に相応しい罰を与えてやろう……」
「そうか、奇遇だな。変態野郎を殺れるなんて、滅多にないから丁度いいわ」
俺は2丁の拳銃のトリガー部分についた線を抜いて、ジンライへと投げる。弧を描いてジンライ目掛けて飛ぶ拳銃は、次の瞬間光を帯びた爆弾ーーー閃光手榴弾となった。
「ぐぁぁぁぁ!!目がぁぁぁぁぁぁ‼」
ジンライは目を覆い隠し、空中でバタバタと苦しそうに身体を身震いさせている。俺は最後に、腰に装備していた簡易型ライフルでとどめをさしにかかる。
「……これで終わりだ!」
放たれた弾丸は、1匹の虎の胸を貫く……。




