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 六二五年霜月七日


 淑妃権花恭が何者かに暗殺されたという事件は、朝廷中に波紋を呼んだ。

 現王の寵姫を狙った事件である。しかも、彼女は混乱を極める朝廷側をまとめる要でもあった。現王が正気を失いつつある今の状態で、その要を喪えば、容易に石は転ぶだろう。悪化の坂をただひたすらに。

 その不吉な音をいち早く察知していた包拯(ほうじょう)は、深い溜息を漏らした。

 読みもせずに丸めた陳述書を、屑籠に放り投げる。だが、屑籠にはすでに同じ内容の陳述書が山のように積まれていたため、新たに捨てられようとしていたそれは入り切らずに辺りに散らばった。その様を厳しい瞳で見つめていると、扉を叩く音と共に若い監察御史が入室してくる。

「また届いたのですか、それ。中々諦めませんね」

 包拯の目の前で屑籠をひょいと取り上げると、手に持っていた大きめの袋の中に勢いよく突っ込んだ。辺りに落ちていたものもまとめて袋の中に入れると、袋は紙しか入っておらぬ癖にずっしりと重くなった。

「策よ、お前ならそれをどう見る?」

「……兆候が見えます。それも戦の」

 涼やかな目許をきりりと吊上げて、策はいっそ吐き捨てるかのように言った。

 下級貴族出身である策は、戦で邸も父親も亡くしていた。策も十五歳で若くして科挙に受かり、御史台で働いておらねば、諸共戦禍に巻き込まれていただろう。まだ幼さの残る顔立ちながら、誰よりも必死に働き、成果を上げてきたその執念は戦への嫌悪によるものが大きい。

「宋鴻様を擁護する者と愚かな王に阿る者。これでは今の戦が終わっても、次の戦が待っているだけ。ですが、最大の要因はあの羅刹。長官はなぜ羅刹を放置しているのです? 言いがかりでもなんでも適当にふっかけて、引っ張ればよろしいでしょう。事実、完全な白ではないのは明白です」

 策は袋を適当に部屋の隅に追いやると、非難がましく包拯に問うた。策だけではなく、他の御史らも似たようなことを言ってきたのを思い出して、渋面な顔つきになる。

「……逆に、お前はなぜあの者を最大の要因と見る?」

 策は思ってもみぬことを聞かれたかのように、わずかに瞳を揺らした。

「権力争いは、人の世の常。羅刹はきっかけを生んだかもしれぬが、根本を生んだのは我々朝廷の人間だ」

 去年、御史台に配属されてからというもの、包拯は策を特に目をかけていた。神童と謳われる才と人を見抜く力、まだ若さゆえに詰めの甘いところもあるが、だからこそ年降れた者には気づかぬ着眼点で物事を見通せる目も、包拯が策を買っている点であった。今もまた自分の些細な言葉に、目まぐるしく思考を回転させている。

「ですが……此度の騒動は、羅刹が必要以上に事を大きくしているとも思えます。未だ掴まらない殺人鬼とて、羅刹が犯人なのでしょうから」

「お前が言ったことは、すべて憶測だ。証拠を挙げることもせず、民の流言を信じるとは何事か」

「確かにそうですが……! 羅刹が宋鴻様を裏切り、王に寝返ったのは事実です!」

 一昨日の離宮を思い出す。初めて目にした白は、確かにその言葉を口にした。


 *


 六二五年霜月五日


「……王、今なんと仰られましたか」

 近頃どうやらまともではないと囁かれていた王が、急に大官らを招集した以上の動揺が広がっている。今己が聞いた言葉を反芻させていた。朝議の間が、かつてないほどのざわめきに揺れているのは、王が発したその言葉ゆえ。

「昨夜の事件、皆も聞いているだろう。その大逆人に他ならぬ宋鴻を罰せよ、と申した」

「お、お待ちくださいませ! 宋鴻様がよもやそんなことをなされるはずがありますまい」

「何を以って、宋鴻様を罪人となされるのか、訳をお聞きしたく存じます! そうでなければ、私共とて王のご意志に従うことはできませぬ!」

 いきり立った大官の何人かが、椅子を蹴立てて立ち上がった。

「淑妃の居室に、宋鴻の佩玉が残されておったのだ! それこそが、宋鴻がやったという揺るぎない証拠だ」

 大広間がさらなる衝撃に揺れる。

 誰もが口々に、「宋鴻様の佩玉が落ちていた……?」、「まさか本当に宋鴻様が?」とあることないことを囁き、立ち上がった大官の数人が気まずそうに座り直した。それでも、諦めずに主張し続ける者らもいた。

「……しかし、それだけでは宋鴻様を犯人だと決めつけるには早計にございましょう!」

「そうでございます! 別の本当の犯人が宋鴻様に罪を擦りつけるために、残していった可能性も捨て切れませぬ!」

 包拯は目を閉じて、くすりと笑った。着眼点はいい。大官らとてすべてが腐っているわけではないらしい。

「近頃、都で暗躍している殺人鬼の仕業も考えられます。ご寵姫様を襲われ、ご心痛はいかばかりか……、臣下の私が察するにはあまりがございますが、どうか賢明なご判断を」

「「賢明なご判断を!」」

「黙れ!!」

 神宗の叫び声にも似た大喝が大広間に響く。

「黙れ、黙れ、黙れ!! 王である余の命令を聞かぬのか! 宋鴻を庇い立てするのなら、お前たちも宋鴻の共犯とみなし、処刑してやるぞ!」

「王よ! どうか御心を静められ、私共の意見をお聞きください!!」

 荒ぶる神宗を抑えようと羽林兵が動くが、それすらも神宗は受け入れぬ。その瞳にすでに理性というものはない。今もまだ玉座にしがみつくかの王と似た狂態に、誰もが少なからずの恐怖を覚えたとき、大広間に連なる小部屋の扉が音もなく開く。王の叫び声にも似た大喝が大広間に響く。

「黙れ、黙れ、黙れ!! 王である余の命令を聞かぬのか! 宋鴻を庇い立てするのなら、お前たちも宋鴻の共犯とみなし、処刑してやるぞ!」

「王よ! どうか御心を静められ、私共の意見をお聞きください!!」

 荒ぶる王を抑えようと羽林兵が動くが、それすらも王は受け入れぬ。その瞳にすでに理性というものはない。朝廷を追い出されたかの王と似た狂態に、誰もが少なからずの恐怖を覚えたとき、朝議の間に連なる小部屋の扉が音もなく開く。

 そこから出てきたのは、美しき白。射干玉の髪をなびかせ、芙蓉の(かんばせ)を惜しげもなく嘲笑に歪ませた一人の女。ざわめいていた大広間が一瞬にして静まり、突然姿を現したその女を誰もが食い入るように凝視する。すべての視線が怪しげに蠢く中で、誰かがぽつりと『羅刹』と呟くのを聞いた。

「この羅刹こそが、宋鴻が真の大逆人であるという証拠を見つけてきたのだ」

 紫苑の姿を認めた王は、なぜかそれまでと打って変わって落ち着きを取り戻した。声に震えはあるが、瞳に冷静さが戻りつつある。玉座まで進み出た紫苑は、「御意」と軽く膝を折ると、手に持っていた黒塗りの盆を、議長を務める包拯の前に差し出した。そこに乗せられていた佩玉に、包拯は目を剥く。紛うことなき大司馬の紋章が彫られている。

 それは包拯の両隣に座っていた大官らにも衝撃を与えた。その事実が口伝えに広がってゆく間に、紫苑はようやく小さな紅唇を開く。

「これが、その証になれば。もっとも王が処断なされるとご決断されたのならば、我ら臣下はそのお言葉に従うのみではないか。そなたらは、王を愚弄するおつもりか」

 紫苑が佩玉を持ってきただけでも信じられぬ事態であるというに、その言葉は宋鴻を罰せよという王の命令を肯定したも同じことではないか。さすがの包拯でも、紫苑の言動は予想外であった。それは他の大官らとなれば、なおのこと。

「愚弄するなどとんでもない! 我々は、今はまだ宋鴻様の咎を確定するには、証拠が足らぬと申して上げているだけのこと」

「それよりも、おぬしは宋鴻様を主としていたはずでは……? なぜ裏切るような真似を」

 誰かがその核心に触れる。包拯すらも危うく口にしかけたその問いを、紫苑はまるで待っていたかのように嘲笑した。

「……笑止。それは今この時に、一体なんの関係があろうか。くだらぬ問いは、そこらにでも丸めて捨て置け。今ここで詮議すべきは宋鴻様の罪状であって、わたくしの忠がどこにあるかではない。斯様なこともわからぬほど、この国の政を担うそなたらは耄碌したのか」

 細波のように伝染してゆく不審を前にして、紫苑は微笑みすら浮かべてそう言い切った。彼女がここにいる誰よりもこの現状を理解しているのだと、包拯は理解した。

 額を突き合わせ、紫苑こそが大罪人の如く詮議する様は、まるで紫苑に対して以前から溜まっていた不満を晴らすかのようであった。――確かにそれは、今ここですべきことではない。たとえそれが真実であろうとなかろうとも。

「――我ら御史台も、王のご意見には納得しかねる」

 紫苑の眉宇がぴくりと跳ね上がる。次いでこちらを見た紫苑の瞳に浮かんでいたのは、明らかなる興味。ようやくまともなことを言う奴が現れたとでもいうような。

「これだけの証拠で宋鴻様だと決めつけるには、時期尚早に他ならぬ。別の犯人説も捨て切れぬ今、宋鴻様の首を徒に落とせば、真の犯人を特定することも難しくなろう」

 捜査を担当する御史台が、他の大官らの意見を支持するような発言をしたのには、少なからずも紫苑を快く思わぬ者たちの援護となった。だが、包拯は彼らを援護するために発言したわけでない。

「御史大夫も他の者らが申すように、宋鴻様以外に犯人がいると考えておるのか」

 張りついた微笑みを浮かべ、紫苑は包拯に問いかけた。その挑戦を真っ向から受けて立つように、紫苑に向き直り威儀を正す。

 そして、かねてから考えていた、もう一つの可能性を答えた。

「是だ。我ら御史台は、羅刹殿も視野に入れて捜査を進めている」

 一斉にざわついた大広間の中で、紫苑は一人冷静であった。動揺を見せることもなく、細い指先が長い羽織を掻き寄せる。

「……このわたくしが、犯人であると?」

 絶対零度の吹雪が吹き荒れるような中で、お互いの視線が交錯する。だが、紫苑も包拯もちらとも表情を変えることはない。

「此度、巷で暗躍している謎の殺人鬼の正体も含め、私自ら捜査の指揮を執ることにした。それについても、ぜひ羅刹殿にはご意見を伺いたい」

 ――ついに、御史大夫包拯が立ち上がる。

 並み居る大官らは武者震いのようなものを感じざるを得なかった。

 若き頃は監察御史として敏腕を振るい続け、汚職に染まった大官を次々に弾劾し、腐った朝廷を一新させた伝説の官吏、包拯。彼に捜査された事件で、罪を逃れた咎人は居ぬ。

 数々の功績が鑑みられ、数年前に御史大夫に抜擢されてからというもの、御史台の改革に努め、根本的な御史の在り方を変えた。不正を糺す者として、自らは不正を決して犯すべからず――それは御史台の鉄の掟となり、戦が始まってからもその中立性が揺らぐことはなかった。その包拯が、白妙の羅刹と恐れられる紫苑に真っ向から勝負を挑んだのだ。

「……ふ、面白い。お手並み拝見といこうではないか」

 誰もが息を呑む中、優雅に腕を組んだ紫苑は禍々しくも美しい微笑を浮かべた。だが、包拯はそれを美しいと思うより、なぜか哀れに感じた。笑うことの意味を忘れた者の微笑みは、これほどまでに鬼神の如き美しさを湛えるのかと。――まさに羅刹。

 包拯はふと思った。紫苑(らせつ)の本当の名はなんであったかと。

 今、朝廷にいる者は誰もが羅刹と呼ぶが、それは元々の名ではあるまい。だが、それを思い出そうとしても、羅刹の鬼をも魅了する微笑が強烈に脳裏に焼きついて、記憶は泡沫の彼方に消えたままであった。


 *


「それに証拠が挙がらないからこそ、羅刹の仕業なのではないでしょうか。普通、人が人を殺めれば証拠を残します。これほど長く犯行を続ければ、なおさらどんな玄人でも証拠を残さざるを得ない。しかし、人外の力を持つ羅刹にそういった常識は通じない……。どんな手を使っているのか、正直言って私たちには見当もつかないのです」

 早口で捲し立てるように、策は一気に続ける。

「はっきり申し上げると……この件、羅刹が本当に係わっているとしたら……、私たちのみで解決できるとは思えません。仙洞省に、協力を要請することを検討したほうがいいと思います」

「――策よ。お前なら、もっと考えられるはずだろう」

 頬を上気させた策を冷静に見つめる。普段、誰よりも落ち着いている策が、これほどに感情を剥き出しにしている理由はわかっている。

「お前が、誰よりも戦を憎む気持ちは知っている。だからこそ、それを再び始めようとしている王と羅刹が許せぬことも」

「別に……私自身のことは、関係ありま「関係ないというのなら、己の感情は切り捨てろ。それができぬなら、お前をこの件の担当御史から外す。お前が申すように、羅刹は大なり小なりこの件に噛んでいる。生半可な覚悟ではこちらが狩る前に、お前諸共御史台までもが食い尽くされかねぬ。あの女は、そういった類の魔性だ」

 驚きで言葉を失ったのは、わずかな間だけであった。すぐに唇を噛みしめて、挑戦的な瞳になった策を見て満足げに微笑む。策はこうでなくては。

「……――やります。やらせてください」

 元より、策を外すつもりなどなかったが、もし包拯の言葉も聞かず、己の自己満足に突っ走るようであれば、本当に外していた。此度の一件は、そんな生半可な覚悟で乗り切れるような代物ではない。

「いい顔になったな。……ならば、これを読め」

 包拯は抽斗から一通の文を取り出し、策に手渡した。それを手に取ると、策はまず署名を見る。

「『翁』……? 誰ですか?」

「さあな。今朝、私がここへきた時には、すでに置いてあった。だが、お前も聞いたことぐらいあるだろう。宋鴻様の許には、王家の子飼いの兇手を束ねる、専家の古狸がいるとな」

「ええ、以前にちらっとそんな話を……、その古狸がこれを?」

 中を検めるとそこに並んでいたのは、紫苑の現在に至るまでの事細やかな足取りであった。随分詳しく調べられていて、自分たちの捜査力を遥かに上回る情報量である。一体、どれだけの年月をかけてこれを調べ上げたのかはわからぬが、さすがとしか言いようがない。

「その調書、興味深いのは……羅刹が現れたとされる四年弱前のそれ以前が、まったくの白紙であるという点だ」

 包拯の指が、とんとんと軽く机を叩く。

 確かに、その日以降に関しては、策も知らぬようなことまで書かれているにもかかわらず、以前の出来事はすっかり抜け落ちている。

「あえて書かなかったのか。それとも、これほどの情報収集能力を以ってしても、何一つ見つからなかったということなのか。……お前はどう考える?」

「私ならば……、後者かと」

 そう言い切った策に、面白そうに片眉を上げる。

「私も同感だが、理由を聞こう」

「もしこれを送りつけてきたのが、本当にその古狸であるとしたら……、情報をわざわざ与えてくれているのに、それを出し惜しみする理由がない。今の宋鴻様に、そんなことをしている余裕などありませんから」

 今はまだ宋鴻に味方する者も多くあり、神宗の暴走を止めていられるが、それも犯人が捕まらねば、いつまで持つかはわかったものではない。このまま事態が膠着すれば、日和見を決め込んでいる者らが、一気に神宗側に雪崩れ込みかねぬ。

「おそらく私たちにこの空白を埋めて欲しいのだと思います。この空白こそが、羅刹を真の意で知る手がかりになるはずだと」

「ならば……、とりあえずは戸籍か」

 策は頷く。すでに文を畳み、爪先は扉を向こうとしている。

「策、お前はすぐさま戸部へ向かえ。何人の御史履行を使ってもいい。羅刹の過去を洗い出せ」

 それだけ言えば、策はすべてを釣り上げてくる。策は黙ったまま退出の礼を取り、足早に執務室から出てゆこうとした。包拯も文机に向き直り、策から戻された文に再び目を通そうとしたとき、一つのことを思い出す。

「策、お前は羅刹の真名を知っているか」

 今にも出てゆきそうであった策は、少しだけ考える素振りをした。

「その文には名を紫苑と書かれておりますが、……そんなこと考えたこともありませんでした」

「そうか……ならば、よい。……下がれ」

 今度こそ部屋から出ていった策が閉じた扉を、束の間包拯は見つめていた。思考の先の先から何かを掴み取ろうとするが、結局それは形にはならなかった。何か重要なことが隠されているような気がするが、まだ札が足りぬ。溜息をついて、包拯は手元の文に再び視線を落とした。

 扉の向こうから、バタバタとやけに焦った足音が聞こえてきた。

 まっすぐこちらに向かってくる。何事かと腰を浮かせかけたとき、出ていったばかりの策が部屋に転がり込んできた。策にしては、珍しく動揺している。何かあったのは間違いない。それも、おそらくは――

 策が息を整えるために吐き出した一つの深呼吸が、やけに長く感じられた。

「……謀反が起きました。それも、……宋鴻様を支持する若い武官らが、です」

 なぜこうも時は一気に廻り始めてしまうのか。止められぬ何かが、さらに速さを増して動き始める。そんな、気がした。


 *


 包拯が策を伴い現場に急行すると、すでに羽林軍の手によって、若い武官ら十人ほどが捕縛されていた。右羽林軍大将軍は包拯を確認すると、簡易に礼を済ませ、捕縛者の名が連なった紙を差し出した。

「これが、王の玉命を狙わんとした大逆人の詳細です。のちほど獄舎に引っ捕らえますが、……王は至極ご立腹で……その……」

 がっしりとした体躯の大将軍が身体に似合わず、もじもじと言いにくそうに言葉を濁す。

「どうしたのだ?」

 包拯の鋭い眼光に観念したのか、ついに口を開いた大将軍から出てきた単語は包拯のみならず、策や野次馬すらも驚かせるものであった。

「今、なんと……? 凌遅刑、……だと?」

 その言葉を吐き出した包拯は、嫌悪に鳥肌が立った。

 ――凌遅刑。それは包拯すら実際に目にしたこともない、史上最も残虐で惨い刑罰である。

 受刑者の肉を何回にも分けて削ぎ落とし、長く苦しめてから死に至らしめる、反逆者に与えられるものでは最も重い刑罰だ。歴史上何度か施行されたが、そのあまりの残忍さに批難が殺到し、ついに何十年か前に完全に廃止されたはずであった。隣で聞いていた策も顔が青褪めている。

「しかし、あれは先々代の王が禁じられたはずだ。我々も刑部も了承することはまかりならぬ」

「ですが……、羅刹殿が」

 大将軍が発した名に、包拯が眉をひそめる。

「大将軍、それは「包拯殿は、またも王のご意志に背くおつもりか」

 鈴を転がすような声が、その場に不釣り合いに響く。

 包拯がはっと視線を上げると、つい先ほどまで人垣ができていたところが左右に割れ、悠然と白をまとった紫苑が佇んでいた。「……また羅刹か」と、ぼそりと呟いた策の声音がどす黒い。

 紫苑はそんな策の殺気など気にした様子もなく、細い指で羽織を掻き寄せながら、包拯の目の前まで歩を進めた。その一歩一歩すら妙なる雅やかさを湛えて。

「羅刹殿、貴殿は何を……。凌遅刑など容易に了承できるものではないぞ」

「たとえそうだとしても、それが王のご意志なればわたくしは従うのみ。それは臣下であるすべての者たちにいえるのではないか」

 紫苑はくだらぬことを聞いたとでもいわんばかりに、小首を傾げ鼻で嗤った。その態度に策は今にも飛びかかりそうであったが、包拯が視線だけでそれを押し留める。

「無論、否だ。我々臣下は唯々諾々と王に仕えるに非ず。王だとて法を犯すに非ず。然るべき裁きの上で、相応の処罰を下すのが当然のことではあるまいか。この者らは、我々が取り調べる。否やは受けつけぬ」

 包拯が断固とした口調で言い切る。是と聞くまでは、決してここを離れぬとでもいうような剣幕に、策が思わず息を呑む。

「……なれば、ご自由に。王にはわたくしから取り成しておきましょう」

 意外にも紫苑はあっさりと引いた。その淡白さに、包拯も策も耳を疑うほどに。

 紫苑が出てきたからには、何がなんでも押し通すつもりなのかと思ったが、どうやら違うらしい。閉じたままの蝙蝠で面白そうに手を叩きながら伏せられた瞳が、どこか柔らかく感じたのは、包拯の気のせいであったのか。

 人を見抜くことには長けていると自負する包拯を以ってしても、紫苑を知るのは難しい。それは同時に、紫苑の誠を知る人間が存在せぬということなのではないかと、包拯は不意に思った。

「それにむざむざ罪人を殺してしまうより、その背後に潜む黒幕を炙り出すほうが、一興というもの」

「羅刹殿、王の玉命が狙われたのですぞ。それを一興とは口が過ぎま、す……ぞ……」

 大将軍が思わず口を挟んだが、直後に見てしまった紫苑の顔でそのことを死ぬほど後悔した。瞳だけで殺されるかと思うほどの冷厳な殺気をまとう瞳であった。

「では、包拯殿。失礼」

 紫苑は大将軍には目もくれず、わずかに会釈をして包拯のすぐ傍を行き交った。その刹那。小さな唇が動く。

「されど、そなたは何もわからぬであろうよ」

 まるですべてを知っていて、それでいて包拯にはわからぬと嘲笑うかのように。包拯は紫苑を睨みつけたが堪えた様子もなく、そのまま衣擦れの音だけを残して過ぎ去った。

 その瞬間――、捕えられていた男らが一斉に俄かに苦しみ出し、そのまま地に伏した。何事かと大将軍がその内の一人に近づくが、男は白目を剥いて事切れていた。羽林兵らが他の者らの生死も確かめるが、すでに全員息絶えた後であった。

 糸が切れた人形の如きそれらを、わずかな間誰もが呆然と見つめていた。正直何が起こったのか、理解できなかったといったほうが正しい。だが、苦悩のうちに死んでいった男らの口から流れ出した血の色は一人の悲鳴を生み、その鬼気迫った声に皆我に返った。途端に野次馬は、波が引くように一気に逃げ惑った。

「……利用するだけ利用して、果てには口封じか」

 酷く狡猾なやり方だ。己の手は一切汚さず、姿も見せず、あたかもすべて宋鴻が仕組んだことだと周知させるように今この時を選んで。だが、これではっきりしたことがある。この謀反は、宋鴻とはなんの関係もない。むしろ一連の事件すべてが。

 我先にと逃げる人々の中心で、包拯は一つの視線に気づく。その先に目を向けると、紫苑が紅唇を引き結び、自分と同じように骸を凝視していた。まるでその骸がそこにあることを信じたくないかのように。

 包拯は唐突に知った。今、世に蔓延る闇が一つとは限らぬと。


 *


 六二五年霜月七日


「嗚呼、紫苑ここにいたのか!」

 陽も傾いた頃、紫苑を探しに出た宋鴻が真っ先に向かったのは、邸の庭園の隅に作られた小さな東屋だった。

 喧騒を嫌う紫苑が急にいなくなったときは、大抵ここにいる。何をするわけでもなく池を眺めるのが紫苑のここ最近の習慣だった。それを知っていた宋鴻は、案の定池の傍に佇む紫苑を見つけて、安堵の溜息をつく。

「我が君……」

 こちらを向いた紫苑の顔が一瞬翳ったような気がした。すぐにそれを隠すかのように頭を下げる。

「何かあったのか?」

 いいえ、と首を横に振った紫苑の顔はいつもどおりだった。自分や紅玉にしか見せぬ穏やかな笑みを浮かべた、優しい美しさを湛えた紫苑がそこにいる。

 それでも何か不安になったのは、根拠のない勘でしかない。

「それよりも、我が君こそ何かあったのでは?」

「あ、嗚呼……そうだったな、……紫苑も聞いていると思うが、淑妃のことだ……」

「後宮に何者かが忍び込み、権淑妃の命を狙ったとか」

「そうだ。……まったく、厄介なことになったのものよ」

 しかも、配下が都周辺の調査に赴いた日の夜に限って事が起きるとは。宋鴻に罪を擦りつけたいということなのだろうが、あまりにも手段を選ばぬ手だ。

「犯人は未だ捕まっておらぬ。厳戒な警備を敷いていたであろう後宮から逃げおおせるとは、よほどの使い手か、それとも……」

「内部犯か」

 宋鴻もそれを考えていた。

 夜の後宮に外部から忍び込むより、元から後宮にいた者が犯行を行うほうが容易い。だがそうなると、内部に手引きした者と実行犯、もしくはその両方を兼ねた人物がいるということになる。

「昨夜、後宮にいた人物を洗い出させてはいるが、これといった手がかりは掴めておらぬ。……そもそも我らは疑われている手前、これ以上情報を集められるかどうか」

 行き詰まった捜査にもやもやとして、足元にあった小石を蹴る。ぽちゃんと情けない音を立てて、それは池の中に落ちた。

「犯人が捕まらぬとなれば、一気に我が君のお立場が悪うなりましょう。犯人に追及されるべき責が、疑わしいというだけで我が君にすべて向くことになる」

「別に外野がなんと言おうと、そこに真実はない。だがな、罰を与えるにしろ、闇に葬るでは、これまでと同じだ。法がある意味がない」

 犯人の意図がなんであれ、此度の暗殺を許容することはできぬ。戦が終わったのち、関わった者たちの罪を白日の下に晒し、臣民がその罪を裁いてこそ、ようやく次代が始まると考えていた。それにもかかわらず、事はむしろ宋鴻の理想とは正反対に進んでいくようだった。

 鬱々とした話題を吹き飛ばそうと、努めて陽気に紫苑から逸らしていた視線を戻す。

「そういえば、紫苑にこうして会うのは久方ぶりのような気がするな。最近は軍議にも出ぬが、身体の調子でも悪いのか?」

「いいえ……そうでは、ありませぬが……」

「たまには顔を出してくれ。口喧嘩する相手がいなくて、呉陽が寂しそうだからな」

「口喧嘩をするために、行くものではありませんが」

 眉間に皺を寄せて、嫌な顔をする紫苑を笑った。おそらく逆のことを呉陽にいえば、呉陽も同じ顔をするに違いない。

「誠に最近は、二人共仲良くなったな。以前も仲良かったが、近頃はもっとこう「それはおそらく我が君の勘違いだと思われますので、訂正し直してください。わたくしと呉陽殿は、昔から変わらず犬猿の仲です」

 宋鴻は思わず噴き出した。本当に同じことを言っている。

「それ……呉陽も、同じことを言っていた……気が合いまくっているな……」

「違います! もう、笑うのをやめてくださいませ……」

 いつもはツンツンして、気取った顔ばかりしている紫苑をからかうのは本当に楽しい。絶対本人には言えぬが。

「そ、そなたのおかげで気分が晴れたような気がするぞ……」

 このネタはまだまだ引っ張れるなと思いながら、一度空を見上げた。

 久しぶりに腹の底から笑ったら、本当に心が軽くなったように思える。まだ問題が解決したわけではないが、先ほどまでの鬱々とした感情はどこかに飛んでいっていた。

「……我が君は、聞かぬのですか」

 唐突に、静寂に満ちた声が響く。突き放すような、どこまでも感情を伴わぬ声が。

 先ほどまでくだらぬことを言い合っていた紫苑の声とは似ても似つかない。紫苑は自分を見ることもなく、ただ池の向こう側を見つめていた。

「先読みで、此度の件を事前に回避することはできなんだと、責めはせぬのですか」

 紫苑のその問いだけがそこに落ちて、まるで紫苑はここに居ぬかのような喪失感を感じる。

 紫苑から言われて初めてそのことに思い至ったが、つまりは自分の中で紫苑を責める気など毛頭なかったということに他ならぬのに、なぜか紫苑はその答えを望んではおらぬように思えた。

 むしろ、責められることを望んでいるかのように。

「なぜ、そのようなことを言うのだ。私がそなたを叱責して、罵倒するとでも思ったのか」

 紫苑はずっと視線を合わせなかった。それが、紫苑の世界から締め出されたかのような寂しさを与えても、紫苑はこちらを向くことはない。

「……紫苑は、ずっと私の傍にいるのだ」

 不意に感じたのは、恐れ。

 どうして、その言葉が零れ落ちたのかすらわからない。こちらを決して見ようとはせぬ紫苑の横顔がやたらと遠く見えて、引き留めるために吐き出したのかもしれぬ。

 いつものようにただ、笑い飛ばして欲しかった。「わたくしが我が君のお傍を離れるわけがないでしょう」と、さも当然のことのように言って欲しかった。そうして、唐突に訪れた寂寞の念を粉々に壊して欲しかった。

 だが、ついにこちらを向いた紫苑の微笑みは宋鴻の願いを裏切るものだった。

「我が君は、お優しゅうございますね……」

 ――ひたすらに、透明。痛みを知って、失う覚悟を決めた者の最後の、微笑み。

 突如、舞い込んだ風が二人の間を通り過ぎてゆく。紫苑の黒髪を巻き込んで、微笑をその奥へと隠してしまおうとするかのように。

 宋鴻は声を上げたかった。叫んで手を伸ばして、紫苑に触れたかった。それなのに何かにがんじがらめに絡め取られてしまったかのように一声も出ず、身体を動かすことすらできなかった。

「宋鴻様! どうなされたのですか!」

 腕を掴まれ、勢いよく身体を引かれた。ばしゃっと足元で池の水が跳ねた音を困惑しながら聞く。

「……失礼いたしました。宋鴻様が池に入られようとしているように見えましたので」

 近衛兵が慌てた様子で、掴んだ腕から手を離した。

「そこに……」

 呆然としたまま宋鴻が紫苑を指差すと、近衛兵は申し訳なさそうに俯いた。

「いえ……そこには、誰もおりませんが……」

「そのようなはずは……!」

 だが、近衛兵が言うようにそこにはもう紫苑の姿はなかった。

 心の底から震え上がるような恐怖を感じて、焦りを隠すこともなくふらふらと探し始めるが、紫苑はどこにも居ぬ。まるで、その存在すらこの世界から消え失せてしまったかのように。

「紫苑が……! 紫苑がついさっきまで、ここにいたのだ! どこへ……」

「紫苑……? あの、裏切り者がですか」

「裏切り者、だと……? そなた、紫苑を愚弄するつもりか……?!」

 感情のままに近衛兵の襟元に掴みかかる。

 紫苑が自分を裏切る? そんなことはあるはずがない。あり得るわけがない。紫苑は自分に生涯変わらぬ忠誠を誓ったのだ。自分を守り、その傍で見たい世界を見るために共に戦うのだと。

 そう誓ったのだ。あの嵐の夜、宋鴻の手に忠誠の口づけを落として。

「落ち着いてください! 信じられないお気持ちは承知しておりますが……、先ほど伝令がようやく邸に着いて、……申し上げにくいのですが、宋鴻様こそが権淑妃殿下殺しの真犯人だと、かの羅刹がそう公言した、と」

 宋鴻の身体が、膝から崩れ落ちる予感がした。


 *


 呉陽がそれを聞いたのは、唐突だった。

 しばらく遍照城に詰めたきりだった呉陽は、一度宋鴻の邸に戻ろうと厩に向かう途中であった。近道をするべく、いつもは通らぬ廊下を突っ切ろうとしたとき、何やらやたらと、兵たちがひそひそとざわめいているのを聞いた。

 今は戦闘がないとはいえ、規律がたるんでいると溜息をつく。だが、この程度のことで自分が怒鳴り込むのも如何と思い、仕方なく素知らぬ顔でその場を通り過ぎようとした。

「あれは、誠なのか」

「嗚呼、どうやらそうらしい。まったく、あんな得体の知れぬ恐ろしい女など臣下に迎えるから、宋鴻様がこんな目に……」

 恐ろしい女とは、紫苑のことか。それ以外おるまい。

 呉陽は引き返して、むんずと兵たちの首根っこを掴んだ。ひっと声を上げた兵二人は、呉陽の顔を見ると紙のように白くなった。

「その面白そうな話の続きを聞かせてもらおうか」

「いえ……! 私たちは何も!」

「そうです、噂というか、伝令兵に聞いたというか……」

「伝令兵? 先刻下の階で何やら騒いでおったような」

 視線をあちこちに動かしながら、口籠もる兵たちを呉陽はぎろりと睨みつけた。兵たちはその鬼のような形相に、話さねば命はないと悟ったのか、蚊の鳴くような声でぼそりと呟いた。

「……宋鴻様が、……たと」

「聞こえぬ、もっとはっきりと話せ」

「宋鴻様が、謹慎を言い渡されたと。大司馬の任も……解任されるやもしれないと」

「それと、あの羅刹が恩知らずにも、主である宋鴻様を売ったと、……聞いております」

 思わず呉陽は、掴んでいた手を放してしまった。途端に兵たちは尻餅をつき、ついでその餅に火がついたかのように一目散に逃げていった。だが、兵たちが目の前から消えてもざわめきがやむことはなかった。瞳を巡らせば、あちらこちらで将兵たちが一様に額をつき合わせて、深刻な表情で、嘲るような口ぶりで、宋鴻と紫苑を弄んでいた。

 わずかに、瞑目する。呉陽は知らずに血管が浮き出るほど、拳を強く握りしめていた。

 恐れていたことが、ついに起きてしまったことを知るのは容易い。そして、こうなった以上紫苑が元に戻ることはないということも。


『わたくしが創るのは、道筋。そなたらはその先で我が君に心からお仕えし、桜が降るように美しい我が君の治世を支えてくれ。……わたくしがそなたらに望むのは、それだけよ』


 呉陽は来た道を引き返した。

 紫苑が自分に願った、ただ一つのことを守るために。


 *


「お前さん聞いたかい」

 後宮近くの城下街で、民たちの間に不穏な噂が流れ出していた。

「嗚呼、聞いたよ。こないだの事件の責めを負って、宋鴻様に謹慎処分が下されたのだろう」

「そうらしいな。まったく、世も末だよ。これまで戦を最前線で指揮してきたのはどなただと思っているんだか」

 年老いた男たちの会話に、血気盛んそうな若者たちも加わっていく。

「淑妃暗殺未遂容疑だって、眉唾じゃないか」

「そうだ、宋鴻様よりも怪しい奴なんて、他にもいるじゃないか! それこそ、あの蛇のような鄭氏の女がやったに違いねえのに、宋鴻様がなんで……」

 見物客たちは、口々に宋鴻の謹慎処分を嘆き、ある者は憤り、ある者は大声で叫ぶゆえにその場は混乱を極めていった。それを煽るように、若者たちが声高に己の主張を喚き立て、人々の熱気はさらに過熱した。

 その中で、一人の老人が震える手で杖を地面に突き立て、声を振り絞った。

「――白妙の羅刹が、やったのじゃ……そうじゃ、悪いのはすべて、羅刹じゃ……!」

 老人の発した声が細波のように、人々に伝染してゆく。ただの主観的な意見に他ならぬのに、その声が見物客の末端にまで届く頃には、誰もが確信していた。

 ――それが、真実であることを。

「羅刹が宋鴻様を売ったんだ!」

「そうだ、そうだ! それしかねえ!」

 狂乱ともいえる熱気を孕み出した人々をよそに、高蓮は啜っていた汁麺を食べ終え、箸を静かに置いた。

「物騒な世の中になって参りましたねえ」

「ええ、誠に」

 相席で食べていた年若い女が高蓮に話しかける。

 実は、店に入る前から一目で惚れていた高蓮にどうにかして話しかけようとあえて相席したのだが、それがやっと叶った。女は、高蓮に微笑みかけられて、天にも昇る思いだった。

「お嬢さんも、羅刹が悪いと思いますか?」

「えっ?!」

 話しかけただけですでに満足だったのに、まさか会話が続くとは思っていなかった女は素っ頓狂な声を上げてしまった。それでも、にこにこと微笑み続ける高蓮の色気に当てられて、女は思考力皆無のまま話し出していた。

「皆がああ言っているので、そうなんじゃないでしょうか」

「そうですか……、お嬢さんは幸せな人ですね」

「そ、そ、そんなことないです!」

 顔を真っ赤にさせて否定する。もしかして、脈ありなのだろうかと期待に胸が逸った。

「人の良心がどれほど醜いのかを知らぬのですから」

「え……?」

「では、失礼」

 高蓮の言葉の意味がわからず動揺した女を放って、高蓮は店を出た。

 人だかりができているところを避け、途次に着こうとするが、如何せん人が多過ぎた。孕んでいく不穏な熱気の行く末を知って、一つ溜息をつく。

「終わりの時が、近づいてきたようですね」

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