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めしつかいたちのはなしで、おにいさまが王さまになるときにも、大きな戦争があったことをしったユタは、金のへやにかざられた、あのたたかいの絵をおもいだしたのです。
金のへやにかざられた、たくさんの絵は、ほんとうにあったできごとを、かいたものなのです。
そして、いちばんあたらしい、たたかいの絵は、ユタがうまれたころのできごとなのでしょう。
たたかいの絵をみながら、ユタは、なくなったおにいさまのことばを、おもいだしました。
『このかおは、ははおやにそっくりではないか。りっぱなせんしになるぞ』
そのことばは、ユタのおかあさまが、せんしだったということではないでしょうか。
ユタは、せのびをして、大きな絵にえがかれた、女のせんしに、手をのばしました。ユタのあこがれた、あの女のせんしです。
ユタは、おもわず、つぶやきました。
「おかあさま」
もしかしたら、このたたかいで、女のせんしは、しんでしまったのかもしれません。
けれどユタは、この人がおかあさまだったら、いいとおもいました。
そうだとしたら、じぶんも、この女のせんしのように、つよくなれるきがしたのです。
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ユタは、金のへやのさらにおくへとすすんで、あの、花にねがいごとをするせんしの絵のまえにきました。
その絵をみていると、なぜか、大きな力がわいてくるようなきがします。
「そこで、なにをしている」
とつぜんうしろから、こえがしました。
ユタがびっくりしてふりかえると、へやのいりぐちにおにいさまがたっていました。
おにいさまは、こわいかおでいいました。
「ここは、わたしのゆるしなく、はいってはいけないばしょだ」
おにいさまは、まっすぐユタのところにあるいてきました。
ユタは、おどおどとして、すこし、うしろにさがりました。
けれどおにいさまは、そのままなにもいわずに、ユタのよこにたって、せんしの絵をみあげました。
「この絵が、きになるのか」
ユタはうなずいて、おにいさまといっしょに絵をみあげました。
おにいさまは、しずかに、はなしはじめました。
「この花のなまえは、チャスカという。
むかし、たたかいにまけた王が、たかい山に、にげのびた。
そこで、いちりんのオレンジいろの花をみつけた。
その花は、よあけがきても、ひとつだけひかっている星、チャスカのようだった。
その花にゆうきをもらった王は、山をおりて、ふたたびたたかい、てきをたおすことができたのだ」
これまでも、その絵にゆうきをもらったユタは、そのはなしをきいて、ますますこの絵が、きにいりました。
おにいさまは、ユタをみて、いいました。
「おまえがこの絵にひかれるのは、きっとおまえに、この花とおなじやくめがあるのだ。
おまえも、この花のように、ひとびとにゆうきをあたえられるようになるのだよ」
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