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     ―15―


挿絵(By みてみん)




******************************


それからしばらくしても、ピウラはやってきませんでした。

しんじて、まちつづけるユタに、かなしいできごとが、おこりました。


あるあさ、いつものようにやってきたおにいさまが、いいました。


「きょうはユタに、だいじな、はなしがある。おののけいこは、おやすみだ。こちらへ、きなさい」


おにいさまは、そういうと、石のベッドにすわりました。

ユタも、そのとなりに、こしかけました。


「ユタ、おとうさまに、あわせてやることが、できなくなった」


おにいさまのことばで、ユタは、きゅうにかなしげなかおになって、おそるおそるききました。


「……おとうさまが、しんでしまったの?」


すると、おにいさまは、すこしほほえんで、くびをふりました。


「しんでしまったわけではないよ。ただ、けがをして、すぐにかえってくることができない」


ユタはすこしだけほっとしました。けれど、こんどは、おにいさまが、ひどくかなしげなかおになって、いいました。


「しかし、おまえにおとうさまをあわせるとやくそくしたおにいさまが、なくなったのだ」


それをきいたとたん、ユタはわっとこえをあげて、なきだしました。


「なくなったおにいさまのやくそくは、わたしがかわって、かなえてやりたいが、そのうち、わたしも、戦争にいくことになる。だから、おとうさまにあうことは、あきらめてほしいのだ」


ユタは、なきながら、いいました。


「ちがいます。おとうさまにあえないことが、かなしいんじゃありません。

 ぼくは、しんでしまったおにいさまと、あえたことを、どうしてもっと、よろこばなかったんだろう。どうして、ちゃんとおはなししなかったんだろう。

 ふたりのおにいさまや、ばあやや、ともだちもいて、しあわせだったのに、おとうさまとおかあさまがほしいとばかりおもっていたなんて。

 おにいさまは、しなないでください。もう、かぞくがいなくなるのは、いやです」


そういいながら、なきつづけるユタをだきかかえて、おにいさまは、やさしくいいました。


「だいじょうぶだよ。わたしは、けっして、しんだりしないからな」


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     ―16―


挿絵(By みてみん)




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おにいさまのしのしらせをきいてから、きゅうでんや、まちが、きゅうにさわがしくなったように、ユタにはおもえました。


おとなたちは、かおをあわせると、うわさばなしをはじめます。

こどもたちさえ、いま、くにでなにがおこっているのか、だいたいのことを、しっています。


「北の火山が火をふいて、むらをつぶしてしまったんだよ。むらの人たちはみんな、みやこにひなんしてきたんだよ」


「南の戦争は、なかなかおわらなくて、たくさんの人がしんだらしいよ」


おにいさまをなくしたユタは、それらのうわさをきくのはつらいのですが、それでも、なにがおこっているのか、しりたいとおもっていました。


あるとき、めしつかいたちがあつまって、なにやら、はなしていました。ちかくにいたユタは、おもわず、そのはなしに、ききみみをたてました。


「南の戦争は、どんどんはげしくなっているそうよ」


「北や南からひなんしてきた人たちで、みやこはあふれているわ。たべものがふそくして、けんかや、どろぼうもふえているそうよ」


「そういえば、ようやくカパコチャのおまつりがおこなわれるそうね」


「こんな、たいへんなことになるまえに、どうしておまつりがおこなわれなかったのかしら」


「おまつりには、ながいあいだ、じゅんびがひつようなのよ。

 いまの王さまは、あのたいへんな戦争のさなかに、王さまになったんですもの。カパコチャのじゅんびなどできるはずはないでしょう」


「カパコチャのおまつりで、へいわがもどってくるといいわね」


ユタは、ききなれないことばに、くびをかしげました。

けれど、そのはなしのなかで、ひとつ、だいじなことにきづいたのです。


ユタは、いそいで、あの金のへやへと、はしっていきました。


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