**7**
―13―
******************************
いそいで、きゅうでんにかえってきたユタは、ピウラをさがしましたが、どこにもすがたがみえません。
あせって、きゅうでんのあちこちを、さがしまわりました。
やっとのことで、きゅうでんのおくからあるいてくるピウラをみつけました。
ピウラにかけよると、ピウラはあわてたようすもなく、たのしそうにいいました。
「いまね。オマのいえにいっていたのよ。オマのにいさんはね……」
やくそくのじかんをすぎてしまって、ユタはあわててかえってきたというのに、ピウラはまったくへいきです。
それに、ユタのいくことのできないともだちのいえで、たのしくあそんできたというのです。
ユタは、おこりだしました。
「ひどいよ、ピウラ! クワンチャイが、すぐにもどるようにといっていたから、ぼくはあわててかえってきたのに。ピウラのほうは、のんびり、ともだちのいえであそんでいるなんて!」
すると、みるみる、ピウラのかおいろが、かわりました。
「クワンチャイにあったの? ユタ。ぜったいみつからないって、やくそくしたでしょう!」
「でも、クワンチャイは、だれにもいわないよ」
「そういうことじゃないのよ!
もう、あんたなんか、しらないわ! はやく、ふくをかえしてちょうだい!」
ピウラは、すっかりおこって、ユタのふくをぬぎすてました。
そして、ユタから、ふくをむりやりひきはがすと、すばやくそれをかぶって、ぬけみちのほうへと、はしりさってしまいました。
ユタは、おどろいて、そのまま、うごけませんでした。
しばらくすると、ようやく、ぬぎすてられたふくをひろって、のろのろときました。
けれど、どうしようもなく、かなしくなったユタは、そのばにすわりこみ、ぼんやり、そらをながめていました。
******************************
―14―
******************************
それからピウラは、きゅうでんにやってこなくなりました。
ユタは、じぶんがわるかったのだときづき、ピウラにあやまりたかったのですが、それをすることもできません。
かなしくて、くやしくて、ともだちとあそぶきにもなれません。
ひとりになりたくて、ユタはきゅうでんのおくのおくの、これまでしらなかったばしょまで、あるいていきました。
ひとけのないばしょに、大きなへやがありました。いりぐちから、まぶしいひかりがもれています。
ユタがふしぎにおもって、なかをのぞくと、大きな金のいたにかかれたたくさんの絵が、へやいちめんに、はられていました。
ユタはへやに入って、その絵を、いちまい、いちまい、ながめていきました。
おそろしいたたかいの絵、たのしくおどる人びとの絵、山や、くもや、川や、きれいな花ばたけの絵。人やしぜんの、いろいろなようすが、えがかれています。
その中で、ふたつの絵が、ユタのこころに、のこりました。
ひとつは、つよそうなせんしが、ふしぎなかたちの花を、かたてにたかくもって、いのるようなすがたをえがいた絵です。
きっとその花は、せんしのねがいごとをかなえてくれる花なのでしょう。
もうひとつは、おおぜいの人びとが、たたかっている絵です。
ユタは、たたかいの絵はすきになれませんでしたが、その中に、人びとのせんとうにたってたたかう、ゆうかんな女の人が、えがかれていたのです。
ユタは、その女のせんしのすがたに、あこがれました。
たくさんの絵をみているうちに、しずんでいたユタのこころが、すこし、かるくなっていたのです。
そして、きっとまた、ピウラはやってくると、しんじられるようになっていました。
******************************