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     ―13―


挿絵(By みてみん)




******************************


いそいで、きゅうでんにかえってきたユタは、ピウラをさがしましたが、どこにもすがたがみえません。

あせって、きゅうでんのあちこちを、さがしまわりました。

やっとのことで、きゅうでんのおくからあるいてくるピウラをみつけました。

ピウラにかけよると、ピウラはあわてたようすもなく、たのしそうにいいました。


「いまね。オマのいえにいっていたのよ。オマのにいさんはね……」


やくそくのじかんをすぎてしまって、ユタはあわててかえってきたというのに、ピウラはまったくへいきです。

それに、ユタのいくことのできないともだちのいえで、たのしくあそんできたというのです。

ユタは、おこりだしました。


「ひどいよ、ピウラ! クワンチャイが、すぐにもどるようにといっていたから、ぼくはあわててかえってきたのに。ピウラのほうは、のんびり、ともだちのいえであそんでいるなんて!」


すると、みるみる、ピウラのかおいろが、かわりました。


「クワンチャイにあったの? ユタ。ぜったいみつからないって、やくそくしたでしょう!」


「でも、クワンチャイは、だれにもいわないよ」


「そういうことじゃないのよ! 

 もう、あんたなんか、しらないわ! はやく、ふくをかえしてちょうだい!」


ピウラは、すっかりおこって、ユタのふくをぬぎすてました。

そして、ユタから、ふくをむりやりひきはがすと、すばやくそれをかぶって、ぬけみちのほうへと、はしりさってしまいました。


ユタは、おどろいて、そのまま、うごけませんでした。

しばらくすると、ようやく、ぬぎすてられたふくをひろって、のろのろときました。

けれど、どうしようもなく、かなしくなったユタは、そのばにすわりこみ、ぼんやり、そらをながめていました。


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     ―14―


挿絵(By みてみん)




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それからピウラは、きゅうでんにやってこなくなりました。

ユタは、じぶんがわるかったのだときづき、ピウラにあやまりたかったのですが、それをすることもできません。


かなしくて、くやしくて、ともだちとあそぶきにもなれません。

ひとりになりたくて、ユタはきゅうでんのおくのおくの、これまでしらなかったばしょまで、あるいていきました。

ひとけのないばしょに、大きなへやがありました。いりぐちから、まぶしいひかりがもれています。

ユタがふしぎにおもって、なかをのぞくと、大きな金のいたにかかれたたくさんの絵が、へやいちめんに、はられていました。

ユタはへやに入って、その絵を、いちまい、いちまい、ながめていきました。


おそろしいたたかいの絵、たのしくおどる人びとの絵、山や、くもや、川や、きれいな花ばたけの絵。人やしぜんの、いろいろなようすが、えがかれています。


その中で、ふたつの絵が、ユタのこころに、のこりました。


ひとつは、つよそうなせんしが、ふしぎなかたちの花を、かたてにたかくもって、いのるようなすがたをえがいた絵です。

きっとその花は、せんしのねがいごとをかなえてくれる花なのでしょう。


もうひとつは、おおぜいの人びとが、たたかっている絵です。

ユタは、たたかいの絵はすきになれませんでしたが、その中に、人びとのせんとうにたってたたかう、ゆうかんな女の人が、えがかれていたのです。

ユタは、その女のせんしのすがたに、あこがれました。


たくさんの絵をみているうちに、しずんでいたユタのこころが、すこし、かるくなっていたのです。

そして、きっとまた、ピウラはやってくると、しんじられるようになっていました。


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