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アクリャのやかたに、しのびこんだのはいいけれど、
どこへいこうかと、まよっていたユタのみみに、
とん、とん、たん、という、かろやかなおとが、いくつもきこえてきました。
おとのするほうへいってみると、石のかべにかこまれた、おおきなたてものがありました。そとにつまれていた小石の山にのぼって、たかいところにあるまどから、中をのぞいてみると、たくさんのアクリャたちが、はたで、うつくしいぬのをおっていました。
とつぜん、大きなこえがひびきました。
ひとりのアクリャを、おとなの女の人が、しかっているこえでした。
どうやらその女の人がママコーナのようです。
ユタは、がっかりしました。
そのママコーナが、とてもきびしく、いじわるくみえたのです。
ほかにも、アクリャのしごとをみまわっているママコーナが、たくさんいましたが、ユタには、どの人もいじわるそうにみえてしまいました。
この中におかあさまがいたとしたら、きまりをやぶったユタをきびしくしかることでしょう。
それにユタには、その中におかあさまがいるとは、とてもおもえなかったのです。
あきらめて、小石の山をおりようとしていたとき、うしろから、こえがかかりました。
「ピウラさま、こんなところで、なにをやっているんですか?」
ユタはびっくりして、小石の山から、ころがりおちてしまいました。
ぬのをふかくかぶって、かおをかくすと、ころがるように、そのばをはしりさりました。
うしろから、まだ、なにかいうこえがきこえましたが、ユタをおいかけてくるけはいはしませんでした。
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にげることにむちゅうで、ユタは、じぶんがやってきたみちがわからなくなってしまいました。
かえりみちをさがして、はしりまわっていると、また、とんとんと、はたをおるおとが、きこえてきました。
おとのきこえたへやをのぞいてみると、ひとりのうつくしいアクリャがはたをおっていました。
そのアクリャは、ユタにきづくと、おどろいたかおになって、いいました。
「あなたは、どうして、ピウラのふくをきているの?」
そのとき、だれかがやってくるけはいがしました。アクリャは大きなぬのでユタをつつむと、じぶんのせなかにかくしました。
「クワンチャイさま。ピウラさまをしりませんか。こちらにはしっていくのをみたというものが、いるのですが」
「いいえ。しりません」
そのアクリャは、ユタをかばってくれたのです。
ピウラをさがしにきた人がいなくなると、アクリャはユタにかけたぬのをとって、いいました。
「ピウラがどこにいるのか、おしえてくれないかしら。だいじょうぶ。だれにも、いわないわ」
ユタはしかたなく、じぶんのなまえと、ふくをとりかえたりゆうをはなしました。
「そう。ピウラには、ユタのようなたのしいおともだちがいて、うらやましいわ。
ねえ、ユタ。わたしとも、おともだちになってくれないかしら。わたしのなまえはクワンチャイよ。いっしょにあそべなくても、いつまでもおぼえておいてくれるだけで、いいのだけど」
ユタは、アクリャをみつめて、おもわず、いいました。
「いいよ。だって、こんなきれいな人は、ぜったい、わすれないもの」
それからクワンチャイは、あの石のおけのある広場までのみちを、おしえてくれました。
「きゅうでんにかえったら、ピウラにすぐにもどるようにいってね。
やくそくよ、ユタ。わたしのことを、ともだちとして、いつまでもおぼえていてね」
ユタはクワンチャイにおれいをいうと、ともだちになるやくそくをして、石のおけの広場にむかいました。
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