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あるとき、ユタはおにいさまによばれて、きゅうでんの大きな広間にいきました。
そこには、とおいばしょでおこなわれている戦争から、いったんかえってきた、せんしたちがいました。
おおぜいのせんしをしたがえている人は、ユタのもうひとりのおにいさまなのだと、王さまのおにいさまがおしえてくれました。
その人は、王さまのおにいさまよりずっと年をとった、こわそうな人でした。
年とったおにいさまは、ユタをみてかけよってくると、かおをなでながら、やさしいこえで、いったのです。
「なんと、大きくなったものだ。このかおは、ははおやにそっくりではないか。りっぱなせんしになるぞ」
ユタはびっくりしたかおになって、おにいさまをみました。すると、おにいさまは、とたんにあわてたようすで、はなしをかえてしまいました。
「ユタ、おとうさまにあいたいだろう。はやく、戦争をおわらせて、おとうさまを、みやこにかえしてやるからな」
ユタをそだててくれたおとうさまも、ぐんたいをしたがえて、戦争にいっているのです。おにいさまは、戦争がおわったら、おとうさまにあわせてくれると、やくそくしてくれました。
ユタはとてもうれしかったのですが、それよりも、きになることがありました。それは、このおにいさまが、ユタのほんとうのおかあさまをしっているということです。きっと、王さまのおにいさまも、しっているにちがいありません。
けれど、なぜおかあさまのことを、おしえてくれないのでしょう。
それから、ユタはそのりゆうを、かんがえるようになりました。
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みんながひみつにする、ほんとうのおかあさまのことを、かんがえているうちに、ユタはあることをおもいつきました。
おかあさまは、ユタがあいにいくことのできないばしょに、いるのではないか。それは、ピウラのすんでいるアクリャのやかたなのではないか。
アクリャのやかたには、アクリャたちにいろいろなことをおしえる先生のような、ママコーナという女の人たちがいるのです。
ピウラがよく、ママコーナにしかられたと、はなしていたことをおもいだしたのです。
あるとき、きゅうでんにやってきたピウラに、ユタはおねがいしました。
「ぼくがピウラのふくをきて、ピウラのふりをして、アクリャのやかたにしのびこむことができないかな」
そして、ほんとうのおかあさまをさがしていることを、はなしました。
かぞくのはなしをすると、ピウラはいつも、ふきげんになります。けれど、そのときピウラは、だまってユタのはなしをきいていました。そして、とつぜん、ふくをぬぎだしたのです。そして、いいました。
「さっさと、あんたのふくをぬいで、かしなさい!」
ユタのふくをきたピウラは、じょうずにかみのけをゆいあげ、ほんとうの男の子のようになりました。そしてちかくのそうこから、ぬのきれを出してきて、ピウラのふくをきたユタのあたまにかぶせました。
「ぜったいに、みつからないって、やくそくするのよ! それから、ゆうがたには、もどってくるのよ!」
ユタは、ピウラにやくそくすると、いそいでぬけみちへと、はしっていきました。
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