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     ―27―


挿絵(By みてみん)






*******************************


あるとき、ばあやのつかいが、ユタをよびにきました。

ユタが小さいころ、いつもおせわをしてくれたばあやは、いまでは、ベッドによこになっていることがおおいのです。


ユタが、ばあやのへやにいくと、ばあやはベッドの上におきあがり、


「よく、いらしてくださいましたね」


とうれしそうにいいました。

そして、ユタに、ほそながいつつみをわたしました。


「それは、ぼっちゃまのおかあさまから、あずかっていたものです」


ユタがおどろいてつつみをひらくと、女の人が、かたかけをとめるためにつかうピンがでてきました。


「それは、ふたつひとくみでつかうものです。もうひとつは、おかあさまがもっていらっしゃいます。

 ぼっちゃまが、おかあさまをこいしくおもううちは、それをわたすことができませんでした。けれど、もう、わたすことができます。

 どうして、あえないのか。

 それはぼっちゃまが、おとなになったら、わかるでしょう。

 けれど、おかあさまが、いつもぼっちゃまのことをおもっていらっしゃるということは、わすれないでください」


ユタはしばらく、ピンをみつめていました。

やがて、かおをあげて、ばあやにいいました。


「ぼくには、ぼくのことをおもってくれるばあやや、おにいさまや、がっこうの先生や、ともだちがいる。

 そのうえ、おかあさまが、どこかでぼくのことをおもってくれているなら、こんなにしあわせなことはないよね」


それをきいて、ばあやはうれしそうにいいました。


「ぼっちゃまは、ほんとうに、大きくなられましたね」



* * * * *



ユタのへやのそとには、カントゥータの木がしげっています。


むかし、はなうりのおばあさんにもらったひとえだを、へやのそとのじめんにさしていたのですが、それがねをはやし、どんどんのびていったのです。


ユタがへやにもどろうとすると、赤い花をたくさんつけたえだのかげから、赤いふくをきた女の子が、こちらをみているのにきづきました。


ユタは、女の子にはなしかけました。


「やあ。お山の上のくらしは、どう? チャスカ」


すると女の子は、いたずらっぽい目をして、こたえました。


「まあまあってとこね」


やがて、わらいごえをのこして、女の子のまぼろしは、青い空のなかにきえていってしまいました。



                     (おわり)


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