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カパコチャのおまつりから、しばらくたって、おにいさまがユタを、金の絵のへやによびました。
おにいさまは、あのせんしと花の絵のまえで、ユタにききました。
「もんだいのこたえは、みつかったか? ユタ」
ユタは、もう、こたえをみつけていました。
だから、まよわず、こたえました。
「はい。
お山にいくピウラを、ぼくはとめることはできませんでした。
カパコチャのおまつりで、ほんとうにたくさんの人が、ピウラたちに、たすけてほしいとさけんでいたのを、みたからです。
お山にいかないでとぼくがたのんでも、ピウラは、その人たちをすくうために、ぜったいにいくといったでしょう。
それならピウラは、どうしたらうれしいのだろうとかんがえました。
それはきっと、ピウラのいのりがとどいて、たくさんの人がしあわせになることなんだとおもいました。
お山にいるピウラのいのりで、かなしんでいる人や、つらいめにあっている人がへったら、こんどは、まちにいるぼくたちが力をかして、もっとたくさんの人がしあわせになるようにすることが、ピウラのよろこぶことなんだとおもいます。
ぼくはこれから、たくさんけいこをして、つよくなります。
たくさんべんきょうして、いろいろなことをしろうとおもいます。
そして、ピウラのいのりに、すこしでも力をかせるような、おとなになりたいとおもいます。
ほんの小さな力かもしれないけれど、そうすることが、ピウラもすくって、それから、くるしんでいる人をたすけるほうほうなんだとおもいます」
それをきくと、おにいさまは、ユタのかたに手をおいて、いいました。
「いっしょけんめい、こたえをさがしたのだな。
そのこたえがただしいかどうか、それは、おまえがおとなになるまで、わからないだろう。
そのこたえが、ただしかったといえるような、おとなになるのだ、ユタ。そのこたえを、けっしてわすれるでないぞ」
ユタは、おおきくうなずきました。
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それからまもなく、おにいさまと、たくさんのへいしが、戦争にいきました。
おおぜいのへいしをみおくる人びとは、カントゥータの花をにぎりしめて、みんな、ぶじにかえってきますようにと、いのっていました。
ユタはこのときも、ピウラたちのやくめのたいせつさを、しったのです。
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やがて、ユタの国がかって、戦争はおわりました。
おにいさまも、けがをしていたおとうさまも、たくさんのへいしたちも、ぶじにもどってきました。
北の、火をふいた山も、だんだんとおさまり、つぶれてしまった村のあとに、またあたらしい村がつくられました。
まちには、まえよりもたくさんの人がすむようになりましたが、けんかをする人も、どろぼうもいなくなり、にぎやかで、あかるいまちになりました。
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7さいになると、ユタはがっこうにはいりました。
チャスカやおにいさまにちかったことをまもろうと、ユタは、おののけいこにも、べんきょうにも、いっしょけんめいです。
10さいになるころには、おののうでまえも、べんきょうも、ユタがいちばんになっていました。
それでも、たくさんの人をたすけられるように、もっとつよくならなくてはいけないと、ユタはひっしです。
そんなユタに、先生は、おのの勝負をしようといいました。
がっこうの先生は、むかし、きゅうでんの大ひろまから、ユタをたすけだしてくれたあの男の人です。
もちろん、ユタは先生にかないません。
先生はユタにいいました。
「あせって力をつけても、それはほんとうの力にはならないんだよ。あせらなくても、きみはいずれ、大きな力をつけることができるだろう。あきらめずに、れんしゅうをつづけるのだよ」
ユタは、おもいました。
「ぼくがおとなになるまで、お山の上のチャスカは、みまもっていてくれるかな」
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