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     ―23―


挿絵(By みてみん)




******************************


ユタは、カントゥータの花に、なにをねがっていいのか、わかりませんでした。やがて、花はすべて、えだからおちてしまいました。


ユタがなにもできないでいるうちに、とうとう、カパコチャのおまつりの日がやってきました。


その日、ユタもあたらしいふくをきせてもらって、カパコチャをみおくるために、まちのひろばにいきました。


ひろばにつくられた、大きなぶたいの上に、やがて、ピウラとクワンチャイとオマのにいさんが、すがたをあらわしました。

三人とも、りっぱなふくをきて、たくさんのかざりをみにつけています。

ならんだ三人のまえに、王さまがすすみでると、ふかくふかく、あたまをさげました。

この国でいちばんえらいはずの王さまが、あたまをさげるのをみて、ユタは、ピウラたちが、神さまになってしまったのだと、おもいました。


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挿絵(By みてみん)




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あいさつをおえて、三人は、花でかざられたこしに、それぞれのりこみました。

たくさんの男の人にかつがれたこしが、人びとのあいだをすすんでいきます。

クワンチャイは、みおくるユタのすがたにきづいて、にっこりわらって、手をふりました。ユタも、せのびをして、大きく手をふりかえしました。

たくさんの人のこえにけされて、クワンチャイのこえはきこえませんが、その口は、ユタにこうよびかけていました。


『ずっと、わすれないでね』


ユタは、クワンチャイに、大きくなんどもうなずきました。


そのあと、オマのにいさんのこしと、ピウラのこしが、とおりすぎていきました。

ユタは、ピウラのこしに、いっしょけんめい手をふっていましたが、ピウラはとうとう、いちどもふりかえらずに、とおりすぎていってしまったのです。


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     ―24―


挿絵(By みてみん)






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ユタはいそいで、ピウラのこしをおいかけました。

けれど、人ごみがじゃまをして、まえにすすめません。

そこで、人だかりのそとがわをまわって、こしのすすんでいくほうへと、はしりました。


ようやく、こしがみえたときには、こしは、まちのそとへでていくところでした。

ユタは木によじのぼり、まちをかこむ、たかいかべの上にたちました。

そして、さけびました。


「ピウラー。ピウラー」


けれど、こしのすがたは、どんどん小さくなっていきます。

ユタは、こんどは、ピウラのほんとうのなまえをよんで、さけびました。


「チャスカー。チャスカー」


ピウラのほんとうのなまえは、あの金の絵にかかれていた花とおなじなまえなのです。


「チャスカー。

ぼくは、たくさんけいこをして、たくさんべんきょうして、つよくてかしこい、おとなになる。チャスカがお山の上で、みんなのしあわせをいのってくれるなら、ぼくは、この手で、みんなをたすけられるような、おとなになる。

だから、お山の上で、ずっと、みまもっていてよー」


すると、さいごのこしにのっているかげが、まっすぐに手をあげるのがみえました。

チャスカが、ユタにへんじをするように、手をあげたのです。


「ありがとう、チャスカー。

ずっと、ともだちだよー。

ぜったい、わすれないよー」


チャスカのかげが、こんどは、りょうてをあげて、大きくふりました。


そして、おかのむこうへと、きえていってしまいました。


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