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へやにもどってきたおにいさまは、ユタをしかりました。
ユタはまけずに、ピウラのことをおねがいしました。
ユタがアクリャのやかたにいって、アクリャにあったことをしって、おにいさまはもっときびしくしかりました。
それでも、ピウラをたすけてほしいとたのみつづけるユタに、おにいさまはいいました。
「おまえのばつをゆるすかわりに、もんだいをだそう。くるしんでいるおおぜいの人も、そのアクリャも、どちらもすくうには、どうすればいいのか、かんがえてみるのだ」
そしてユタに、まちのようすをみてくるように、いいました。
ユタははじめて、きゅうでんのそとにでました。
まちは、おおぜいの人がいったりきたりしていて、とてもにぎやかです。
けれど、まずしいみなりをした人や、けわしいかおをした人もいます。
どこからか、けんかのこえがきこえてきて、ユタはこわくなりました。
とおりのすみで、花をうっているおばあさんがいました。
「ねがいごとをかなえてくれる、カントゥータの花はいかが」
すると、男の人がその花をかいにきました。
「むすめのびょうきがよくなるように、カントゥータをおくれ」
「このあいだも、花をかっていったね。まだよくならないのかい?」
「ああ、かわりないよ」
「そうかい。もうすぐ、カパコチャさまがお山にいかれるから、そうしたらきっと、むすめさんもよくなるよ」
男の人は、花をうけとると、おばあさんにおれいをいって、かえっていきました。
そのはなしをきいていたユタは、花うりのおばあさんのところにいってみました。
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おばあさんがうっている花は、ユタがピウラにであったとき、アクリャのやかたのにわにさいていた、あの花でした。
「おばあさん、その花はカントゥータというの?」
「そうじゃよ。ぼうやもなにか、ねがいごとはあるかい? この花をそばにかざっておけば、それをかなえてくれるよ」
「ねがいごとはないけれど。どうしてその花は、ねがいごとをかなえてくれるの?」
「この花は、カパコチャさまのいのちだからさ」
「カパコチャさまって、なに?」
「カパコチャさまとは、たかいお山にすむ神さまにつかえるかたなんだよ。カパコチャさまにえらばれるのは、この国で、いちばんうつくしいむすめと、いちばんかしこい子どもたちなのさ。
いま国では、たいへんなことがたくさんおきて、くるしむ人たちがどんどんふえている。それをおさめるために、こんど、あたらしいカパコチャさまが、お山にいかれることになったんだよ」
そのときようやく、ユタは、『カパコチャ』というのが、ピウラのやくめなのだとしったのです。
そして、ピウラをとめることは、とてもできないようにおもえました。
たくさんの人たちのねがいをたくされたピウラは、ユタがひきとめても、お山にいくことをやめることはないでしょう。
しばらくかんがえて、ユタはおばあさんにききました。
「ねえ、おばあさん。カパコチャさまがみんなのためにお山にいくのなら、ぼくたちはカパコチャさまのために、なにをしたらいいの?」
「おもしろいことをきくんだね。そうさな。カパコチャさまが、こうしてみんなにいのちをわけあたえて、しあわせをねがってくださるのなら、この国のみんながしあわせにいきることが、いちばんのおん がえしなんだろうね」
それをきいて、ユタはまた、かんがえこみました。
すると、おばあさんがいいました。
「ぼうや、ねがいごとはないといったが、どうやらたいへんななやみごとをかかえているようじゃの。さあ、このお花をもっておいき。そのなやみがなくなるように、よくおねがいするといいよ」
おばあさんに、赤いカントゥータの花をもらうと、ユタはおれいをいって、きゅうでんにかえっていきました。
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