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いろいろなことがおきて、ユタがわすれかけていたころ、とつぜん、きゅうでんにピウラがやってきました。
ユタは、ようやくピウラにあやまることができるとおもって、よろこびました。
きゅうでんのすみに、こしをおろして、ふたりは、はなしはじめました。
「ピウラ、ぼくのわがままで、こまらせてしまって、ごめんね」
ピウラは、にっこりわらって、いいました。
「もう、とっくに、おこってなんていないわ。
それよりきょうは、ユタにおわかれをいいにきたのよ」
ユタはびっくりして、ピウラをみつめました。
「こんど、あたしは、このまちから、でていくの。
ユタ、いままで、なかよくしてくれて、ありがとう」
「どういうこと?
もしかして、アクリャのおつとめをゆるされて、いえにかえることができるの」
ユタは、そうだったら、うれしいとおもいましたが、ピウラは、しずかにくびをふりました。
「あたしはね、神さまのお山にいくの。お山で、この国の人たちがしあわせにくらせるようにって、神さまにおねがいするのよ」
「それじゃあ、おねがいごとがすんだら、もどってくるのでしょう?」
「あたしは、これからずっと、神さまのお山でくらすの。そのためにアクリャになったのよ。いよいよ、その日がやってきたの。
はじめはいやだった。アクリャのやかたでは、ママコーナはきびしくても、きれいなふくをきて、おいしいごちそうをたべて、つらいおしごとをすることはなくて、だいじにされていたわ。けれど、つまらなかった。
でも、ユタにあって、きゅうでんで、たくさんのともだちとあそぶことができて、たのしかった。きらいだったこのまちが、ユタのおかげですきになったのよ」
それでもまだ、かなしそうなユタのかおをみて、ピウラはいいました。
「ひとりぼっちじゃないのよ。クワンチャイと、オマのにいさんも、いっしょだから。オマのにいさんは、耳がきこえないの。ふじゆうなところがあるこどもには、神さまのちからがあるのよ。
ふたりといっしょなら、だいじょうぶよ」
「でも、なんで、ピウラがいかなくちゃ、いけないの?」
「あたしじゃなかったら、ほかのだれかが、いくことになるわ。あたしがいって、おねがいすれば、たくさんの人がたすかるの。あたしはえらばれて、たいせつなおしごとをまかされたのよ」
ピウラは、ユタのみみに、かおをちかづけて、小さなこえでいいました。
「ほんとうは、あたしは、ピウラというなまえじゃないの。ピウラは生まれた村のなまえ。アクリャになったときに、ほんとうのなまえは、とりあげられてしまったの。
お山にいったら、ピウラというよびなもなくなるわ。だからユタにだけは、おぼえておいてもらいたいの。
あたしの、ほんとうのなまえはね…………」
そのなまえをきいて、おどろいたかおになったユタに、ピウラはにっこりわらって、うなずきました。
それから、たちあがって、くるりとむきをかえると、ぬけみちのほうへ、はしっていってしまいました。
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たいせつなともだちと、わかれなくてはいけないことを、ユタはとてもかなしくおもいました。
そこでユタは、おにいさまに、ピウラがお山にいくのをやめさせてもらおうとかんがえました。
しかしそのころ、おにいさまはとてもいそがしくて、おののけいこにくることもありませんでした。
ユタは、おにいさまにあいに、きゅうでんの大ひろまにいきました。
そこでは、おにいさまが、たくさんのけらいと、だいじなはなしあいをしていました。王さまのおしごとをしているおにいさまには、たとえおとうとであっても、はなしかけることはゆるされません。
けれどユタは、ピウラのために、ゆうきをふりしぼって、こえをかけました。
「おにいさま、おねがいがあります」
おにいさまは、とてもこわいかおで、ユタをにらみつけました。
まわりのへいしが、ユタに、やりをむけようとしました。
そのとき、おおきなうでが、ユタをだきかかえました。そして、大ひろまからユタをつれだしてしまったのです。
ユタをだきかかえたうでは、りっぱなへやのまえで、ユタをおろしました。大きな男の人が、ユタのかおをのぞきこんで、いいました。
「ここは、おにいさまのおへやです。大ひろまで、おにいさまに、はなしかけることはゆるされませんが、おにいさまが、おへやにもどられたら、ゆっくりおはなしするといいでしょう」
そういって、男の人は、にっこりわらいました。
あのまま、大ひろまでおにいさまによびかけていたら、ユタはたいへんなばつをうけるところでした。
男の人は、ユタをたすけてくれたのでした。
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