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     ―19―


挿絵(By みてみん)






******************************


いろいろなことがおきて、ユタがわすれかけていたころ、とつぜん、きゅうでんにピウラがやってきました。

ユタは、ようやくピウラにあやまることができるとおもって、よろこびました。

きゅうでんのすみに、こしをおろして、ふたりは、はなしはじめました。


「ピウラ、ぼくのわがままで、こまらせてしまって、ごめんね」


ピウラは、にっこりわらって、いいました。


「もう、とっくに、おこってなんていないわ。

 それよりきょうは、ユタにおわかれをいいにきたのよ」


ユタはびっくりして、ピウラをみつめました。


「こんど、あたしは、このまちから、でていくの。

 ユタ、いままで、なかよくしてくれて、ありがとう」


「どういうこと?

 もしかして、アクリャのおつとめをゆるされて、いえにかえることができるの」


 ユタは、そうだったら、うれしいとおもいましたが、ピウラは、しずかにくびをふりました。


「あたしはね、神さまのお山にいくの。お山で、この国の人たちがしあわせにくらせるようにって、神さまにおねがいするのよ」


「それじゃあ、おねがいごとがすんだら、もどってくるのでしょう?」


「あたしは、これからずっと、神さまのお山でくらすの。そのためにアクリャになったのよ。いよいよ、その日がやってきたの。

 はじめはいやだった。アクリャのやかたでは、ママコーナはきびしくても、きれいなふくをきて、おいしいごちそうをたべて、つらいおしごとをすることはなくて、だいじにされていたわ。けれど、つまらなかった。 

 でも、ユタにあって、きゅうでんで、たくさんのともだちとあそぶことができて、たのしかった。きらいだったこのまちが、ユタのおかげですきになったのよ」


それでもまだ、かなしそうなユタのかおをみて、ピウラはいいました。


「ひとりぼっちじゃないのよ。クワンチャイと、オマのにいさんも、いっしょだから。オマのにいさんは、耳がきこえないの。ふじゆうなところがあるこどもには、神さまのちからがあるのよ。

 ふたりといっしょなら、だいじょうぶよ」


「でも、なんで、ピウラがいかなくちゃ、いけないの?」


「あたしじゃなかったら、ほかのだれかが、いくことになるわ。あたしがいって、おねがいすれば、たくさんの人がたすかるの。あたしはえらばれて、たいせつなおしごとをまかされたのよ」


ピウラは、ユタのみみに、かおをちかづけて、小さなこえでいいました。


「ほんとうは、あたしは、ピウラというなまえじゃないの。ピウラは生まれた村のなまえ。アクリャになったときに、ほんとうのなまえは、とりあげられてしまったの。

 お山にいったら、ピウラというよびなもなくなるわ。だからユタにだけは、おぼえておいてもらいたいの。

 あたしの、ほんとうのなまえはね…………」


そのなまえをきいて、おどろいたかおになったユタに、ピウラはにっこりわらって、うなずきました。

それから、たちあがって、くるりとむきをかえると、ぬけみちのほうへ、はしっていってしまいました。


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     ―20―


挿絵(By みてみん)






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たいせつなともだちと、わかれなくてはいけないことを、ユタはとてもかなしくおもいました。

そこでユタは、おにいさまに、ピウラがお山にいくのをやめさせてもらおうとかんがえました。


しかしそのころ、おにいさまはとてもいそがしくて、おののけいこにくることもありませんでした。

ユタは、おにいさまにあいに、きゅうでんの大ひろまにいきました。

そこでは、おにいさまが、たくさんのけらいと、だいじなはなしあいをしていました。王さまのおしごとをしているおにいさまには、たとえおとうとであっても、はなしかけることはゆるされません。

けれどユタは、ピウラのために、ゆうきをふりしぼって、こえをかけました。


「おにいさま、おねがいがあります」


おにいさまは、とてもこわいかおで、ユタをにらみつけました。

まわりのへいしが、ユタに、やりをむけようとしました。


そのとき、おおきなうでが、ユタをだきかかえました。そして、大ひろまからユタをつれだしてしまったのです。


ユタをだきかかえたうでは、りっぱなへやのまえで、ユタをおろしました。大きな男の人が、ユタのかおをのぞきこんで、いいました。


「ここは、おにいさまのおへやです。大ひろまで、おにいさまに、はなしかけることはゆるされませんが、おにいさまが、おへやにもどられたら、ゆっくりおはなしするといいでしょう」


そういって、男の人は、にっこりわらいました。

あのまま、大ひろまでおにいさまによびかけていたら、ユタはたいへんなばつをうけるところでした。

男の人は、ユタをたすけてくれたのでした。


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