朝元後輩
銃の生誕が書きにくいのでこっちを先にアップしました。
入部から一週間が経った。
私は二日かけて弓の調整スキルを会得し、その翌日の昼休みに、早月から一年生部員達の弓の調整と面倒を頼まれた。
一年生達は五人人のうち三人が初心者らしく、弓の調整も当然、自分ではやることが出来ない。経験者の娘も、中学時代は顧問の先生がやってくれたようで、独力では出来ないらしい。よってどうしても補助が要る。
一方、二年生部員は全員出来るようだが。だったらマネージャーに任せないで自分でやれよと思ったが───それには理由があると、早月がちゃんと教えてくれた。
弓の調整には意外と腕力が要る。つまり疲れる。練習以外で筋肉を痛めつけるのは勿体無い。しかも、高校生の技量だと、調整道具で怪我をするおそれがある。というわけで、調整は選手ではないマネージャーが務める───ということらしい。合理的な理由で、内心ほっとした。
そんなわけで、私は一年生達と♪きゃっきゃうふふ♪することになった。
私の初担当は、小柄な体躯、くりっとした目、さらさらのボブカットが、年相応の幼さを感じさせる娘だった。
「よろしくお願いします」
そう言って弓を差し出してくる。初心者はもう二週間程しないと弓を取らせてもらえないから───この娘は経験者だ。
「はい、こちらこそ。名前は訊いてもいい?」
「朝元です」
朝元から弓を受け取り、軽く弦を引っ張ってみる。確かに弛んでいる。
「強めに張った方がいい?」
見た感じ腕が短いから、引き絞る量が少なくても威力が出るようにした方がいいだろうと思ったのだ。
「はい。お願いします」
私は要望通りに、時折ぴんっ、と弾いて音で確認しながら、通常よりも強めに弦を張った。
「これでどう?」
弓を受け取った朝元は、矢をつがえずにそのまま弦を引き絞った。そして微かに目を見開いた。
「わぁ……ばっちりですっ」
彼女は驚いた様子で弦を離した。私の耳に和音が響く。
「そう。それは良かったわ」
まさか一発で合格がもらえるとは、私も驚きだ。
「私達、中々相性が良いかもしれないわね」
「あははっ、そうですね」
微笑む様が何とも可愛らしい。
私は早速矢を射ちに行った朝元の背中を、穏やかな気持ちで見送った。
今年受験生ですよ?私・・・・・・