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銃の帰還  作者: sniper
日常編
8/22

入部届け

活報も見て・・・・・・ね?重要だから。新シリーズのタイトル投票とかあるから。


それにしてもきついぜ・・・・・・女子校とか部活とか。

どうでもいいですけど、私剣道部なんですよ。弓道やったことないんです。

「失礼します」

教えてもらった道を全力疾走してたどり着いた弓道場には、既に多くの生徒が胴着姿で弓を取っていた。数人が振り向くも、殆どの部員が弓に注力しているようで、私の存在に気づいていない。

「すいません。何か御用ですか?」

私に気づいた部員が話しかけてきた。肩口で切り揃えた髪が揺れる。

……何だろう。心なしか警戒されてるような……。

「真理さんに誘われたんです。……予定の時間より、ちょっと遅れてしまいましたが」

「あぁ、そう。真理なら部室で着替えてるよ」

そう言って奥の扉を指差す。

「いえ、待ってます」

「そう。じゃ、そこに座ってて」

予定表やカレンダー等が張り付けてある壁を指す。

「わかりました」

一礼して、指された辺りに行き、その場で正座した。

話しかけてくれた彼女を軽く目で追う。名前訊いときゃよかった。

視線を彼女から外し、道場全体を見る。射手の立つ板の間と、砂が敷かれている的場。私が今いるのは、板の間の隅っこ。間違ってもこちらに矢は飛んでこないだろう。これで飛んできたら、それこそアシタカみたいに射返してやる。

そう一人、危ない決意を固めていると、部室の扉が開いた。すくっ、と立ち上がり、歩み寄る。

「遅れてすいません」

謝意を伝えるべく、丁寧に頭を下げる。

「いやいや、そんな頭下げてまで謝ることじゃないよ。誘ったのはこっちだし」

手を顔の前で振りながら、ちょっと慌てた様子でそう言う姿は、年相応の可愛らしさがあった。

「そう仰有るのなら」

御言葉に甘えて顔を上げる。

そこには、どこか可笑しそうな笑みを浮かべた真理がいた。

「何か?」

訊くと、表情に出ていたのが不覚だったらしく、微かに口を尖らせた。

「いやぁ~……何か、ね。漫画で見るようなお嬢様みたいだなあ~っと」

歯切れの悪い台詞ながらも、意味は理解出来た。

「私が?お嬢様?」

「うん。言葉遣いとか所作が、凄く丁寧だなぁ~って」

「………………」

あぁ……成る程。私が同級生から敬遠されてる理由、わかった気がするわ。アシタカ騒動が無くても多分敬遠されてた。私の佇まいが、近寄りがたいものだったんだ。

今思い出せば、昔から仲良くない人には敬語擬きを遣ってたような気がする。近寄ろうとしていたのは自分なのに……。

よしっ、これから放課後は(ここ重要)、なるべく砕けた口調を心掛けよう。……いきなり態度が変わったら……ほら。不自然じゃん?

「うん…………これからは普通に喋るわ」

「そう?別に似合ってたから変えること無いのに」

真理はそれでいいんだろうけど……他の部員が困るだろう。特に一年生達。

「いや、これから同じ部活の仲間なんだしさ。……マネージャーだけど」

「仲間……それは嬉しいな」

そうはにかむ姿は、今まで生きてきて初めて見た表情かもしれない。いや、それはないか。

私は和んだ気持ちを微笑みに込めながら───

「いつまでも余所者じゃあいられないでしょ?」

と入部届けを差し出すのだった。


「今日から我が部のマネージャーとして活動することになった、山口麗奈さんだ」

真理が部員全員に集合をかけ、私の前に並ばせた。ひぃふぅみぃ───十二人か。その内、マネージャーは一人。

真理は私の隣に立ち、緊張する(真理から見て)私の代わりに紹介してくれた。素直にそれに続く。

「これから、よろしくお願いします」

声のトーンを若干落とし、真剣みを演出して挨拶した。全員がぱちぱちと手を叩く。───十二人ながら、中々の壮観だ。

「というわけで、練習再開!あと、麗奈さんがいるからって、周りには気をつけなさいよ!」

「「「は~いっ」」」

私がいるからって……明らかにアシタカ騒動をネタにしてるけど……自分の失敗をそんな風に扱っていいのか?私は苦笑するしかないよ。

真理がこちらを振り向き、舌をチロッと覗かせた。あら可愛い。

「御免ね?」

「いいよ。ジョークにしてくれた方が、こちらとしても楽だ」

現実に冗談だったらよかったのに……。

思い出し凹みをする私から目を外し、真理は胴着を干していた先輩マネージャーを呼びつけた。とてとてと小走りで───微かに左足を庇いながら近寄ってきた。ちょっと緊張。

「こちら、同じ二年生マネージャーの三浦早月」

きりっとした目。それをスタイリッシュな眼鏡が縁取っている。理知的ながらも優しそうな女の子だ。実際はどうか知らんが。

「よろしく。マネージャーが増えてくれて嬉しいよ」

朗らかな表情が、私に癒しを与えてくれそうだ。私は自分から歩み寄る意味も込めて、態度を軟化させた。

「頼りになれるかはわからないけど」

どれぐらいって、こんな冗談を言えるぐらい。


「マネージャーって、基本的に何をやるの?」

矢を射る部員達を眺めながら訊くと、早月は弓を差し出してきた。受け取ってみて、意外な重さに取り落としそうになった。

「重かった?」

「思いの外ね。───で、どうすんの?」

渡されただけでは何をすりゃいいのかなんてわからない。

「うちのマネージャーは主に、弓の調整や簡単な修理をやるんだよ」

「へぇ……。メイドさんみたいに、身の回りの世話するだけだと思ってた」

「あはは……」

表現がアレだったのか、微妙な反応をされた。そりゃメイド呼ばわりされたら気分良くないわ。全国のマネージャーさん……すいません。あと本職でメイドやってる方々にも……すいません。

「じゃあ、まずは整備の仕方を覚えるのが仕事か……」

「そぅいぅこっと~」

早月が早速とばかりに、調整道具箱を開いた。


活動報告を見てくれ。頼む!

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