初めての高校
少しずつ書いてますので、文量的に不満があるかもしれませんが・・・・・・頑張ってます!
手続きの諸々、教科書や制服も揃い、二年遅れの高校二年生への準備が完了した。
───今日は始業式。
入学式に参加できなかったのは、ちょっと損した気分だけど・・・・・・まぁ贅沢は言ってられない。
配属されたクラスを、体育館の端っこから眺める。
・・・・・・確か、二年四組だったはずだ。彼女達の、椅子に座って壇上に立つ先生達を見つめる様子は、随分と大人びて見えた。私よりも年下なのに・・・・・・ね。
始業式が終わり、教室にぞろぞろと向かう集団に混じって、私は教えられた教室の、指定された席に座った。
いつの間にか紛れ込んでいた私は、周囲からは大して目立たず、うまくとけ込むことが出来た。
戦場でも、こうしてスパイまがいのことをやったことが幾度とあった。
周囲を包んでいるのは、喧騒とまではいかない、囁き合い。新しい学年、クラス、同級生に、皆がそわそわと気を散らしている。
───微笑ましい。
自分も同じ立場であるはずなのに、つい傍観者視点で見てしまう。いや、上から目線、て言った方が的を射てるかな?
そんな自嘲を頭の中で繰り広げていると、外側から教室のドアが開けられた。柔らかな物腰の中年女性───このクラスの担任だ。
「皆さん、おはようございます」
『おはようございます』
全員が挨拶を返す。急なことで、私は出遅れてしまった。
「今日から一年間。この教壇から貴女達を見守らせていただく、担任のウスイカオリ、と申します」
黒板に「雨水薫」と書かれた。珍しい苗字だ。
「皆さん。これからよろしくお願いしますね」
なんとも上品な挨拶にこれまた全員が
『よろしくお願いします』
と返した。
「さて。それじゃあ新しいクラスということもありますし、軽く自己紹介でもしてもらいましょうかね」
―――来た。
私は反射的に感じた緊張に、人知れず拳を握り締めた。
名簿番号順に生徒が起立していく。自分の番は十二番目。ちょうど真ん中あたりだ。
どうしよう。こういうことはあちらでは無かったし、六年前のことなんて忘れてるし。
あぁ~・・・・・・どうしましょうねぇ~。
と、ぐずぐず考えてる間に、私の順番が回ってきた。
とりあえず起立する。
えぇ~っと。とりあえず名前と出身中学か。
「山口麗奈です。出身中学は朝日中学。特技は・・・・・・武道を少し嗜んでました。よろしくお願いします」
途中、特技を遠距離射撃と言いそうになって、慌てて中学時代剣道をやっていたことを思い出した。
とにかくこれで事なきを得たわけだ。周囲からの視線も、あまり興味を惹かれたような感じはしなかったし。思惑通り地味に過ごせそうだ。
特に引っ掛かりを覚えることもなく、自己紹介は終わり、その後、プリントやなんやらが怒濤の勢いで配られた。
ふぅ・・・・・・。
プリントに目を通す。どれも私には懐かしい内容のものばかりだ。第一、こんな紙媒体の情報はあの戦場にはほとんど無かった。何故なら、全部燃えてしまったから。
そんな異常な感慨に囚われている間に、私は放課後を迎えた。