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銃の帰還  作者: sniper
入学編
2/22

銃との再会

誤字脱字の指摘募集中

───翌朝。

いつものように、窓から射す朝日を受けて目が覚めた。時計を確認すると、六時半過ぎ。

あちらでは、起きたらすぐに仕事場へ向かわねばならなかったが───ここでは違う。

あと二日もすれば、私は高校生だ。身だしなみのことも考えると、朝は慌ただしくなるかもしれない。

「でも、今は退屈だな……」

私は何かやることが無いかと、居間と台所の間をうろうろ、うろうろ。

「あっ、そういえば白髪染め……」

もっといいやつ買わないと……。

私はコンビニに向かうべく、畳んであったジーパンに手を伸ばした。


アパートを出て、昨日同様に携帯電話のナビ機能を使って歩を進める。最寄りのコンビニまでは少し歩くようだ。

顔を上げれば、ジョギング中の人や、自転車を走らせる学生が目に入る。

───見慣れない光景。

そう思ってしまう私の常識はもう、この国のものではないのかもしれない。

ちょっとした異物感を自らに感じつつ、信号待ちをしていると───ふと、懐かしい雰囲気を感じた。

(これは───)

あの国で幾度と無く見せつけられた、道を外れた人間。

その風を目で追ってみると、ちょうど目的のコンビニに、一人の男が入っていくところだった。私は信号を無視して、そのコンビニに急いだ。

「強盗だ!金を出せ!!」

私が自動ドアをくぐった瞬間、男のどすの効いた声が店内に響いた。

その男はマスクを着けただけで、特に大した素性隠蔽は施していない。

武器は───なんと銃である。

それも、日本の警察が使っているようなリボルバー式でなく、オートマチック式だ。拳銃に分類されるんだろうか。そんなものが日本に輸入出来てしまっていいのだろうか。モデルガンかもしれないが。拳銃は、私はあまり使ったことがないのでわからない。

男は店員だけでなく、客にも銃を向けている。

「お前らも金出せ」

どうやらコンビニからだけでなく、客からもむしり取る気のようだ。

客は手を上げて床に座り込んだ。私もそれに続く。

男が背を向けてるのを隙と捉えた店長が、防犯ベルに手を伸ばす───が。

ダァンッ!

という銃声が店内に響き、その直後に、伸ばしていた店長の手に風穴を開いた。

悲鳴が上がる店内。

(銃の扱いに慣れてるな)

男と店長までは三メートルも離れてない。が、その距離でさえ、素人だったらあんな精密な射撃は出来ない。

さて。

今の寸劇で、この店内の人間は、私以外全員、この男に恐怖からくる呪縛をかけられてしまった。

男が金を出せと近付くと、素直にバッグや財布を差し出していく。

───そしてやがて、私の元にも男が来た。

「金を出せ」

銃を私の額に向け、射殺すような目つきでこちらを睨む男に、私は無感動な視線を返しつつ、男の要求には答えず口を開いた。

「オートマですか。何処で手に入れたんです?」

男がピクッと反応する。───その些細な動きが、命取りになるとも知らず。

私は右手の指をトリガーの穴に突き込み、手前に引きながら身体を前に押し出し、射線から自分の身体を外しつつ、その体勢変化の勢いを利用して、鳩尾に肘打ちを叩き込んだ。

悶絶して床に転がる男を遠くに蹴り飛ばし、指に引っ掛かった銃を掌に収める。

イメージ通りに身体が動いたのを密かに嬉しく思いながら、手元に収まった銃をくるくると弄ぶ。

「ごほっ、ごほっ」

男は咳き込みながら、こちらを驚愕の表情で見上げている。

「へぇ~……拳銃はあんまり使ったこと無いんだけど、持った感じは軽くて使いやすそう」

試しに撃ってみた。

男の足に当たり、ぐぁっ、とかいう悲鳴が上がる。もう片方の足も撃つ。またもや悲鳴。

よし、これで易々と逃げられまい。

「警察に電話して下さい」

誰にともなく言うと、店長を介抱していた店員が携帯電話を操作し始める。

私は銃のセーフティをかけて、商品棚を物色した。

目的の白髪染めを手に、レジに近付く。と、レジの少年は怯えた表情を浮かべた。

「これ、貰える?」

銃でもう片方の手に持ち上げた箱を指し示す。

「あ、は、はい。お金は要りません」

「そう。ありがと」

私はお金の代わりに、その少年の手に銃を握らせた。

「へっ?」

「あと、よろしく」

私は颯爽とその場を立ち去った。


帰宅すると、腕を組んだリンさんが、なんとも怖い顔で仁王立ちしていた。

「帰国早々、やってくれたわね」

その口調と目つきは「さっきの顛末は全て知ってるのよ」と責めてくる。

「すいません……」

私は何も言うことが出来ず、素直に頭を下げたのだった。


約束通り、私はリンさんから説明を受けた。要約すると、こんな感じだろうか。

あのアパートは元々、公務員用の賃貸だったこと。入居者が(将来的にも)いなくなり、取り壊そうとしていたところで、リンさんが格安で買い取ったという。それ以来、あのアパートは訳ありで自宅から通えない千流校生のための寮となったとのことらしい。

つまり、私は寮生になったとのことだ。

エレベーターが使えないのは、管理費節約で電気を通してないかららしい。

―――と、まぁこんな感じだろうか。

私は明日に迫った始業式を想いながら、頭の整理を終了させた。


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