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【第11話】隙

 noiseを大幅に上回るSPDを持つセイレイのダッシュは、もはや誰にもとらえることは出来ない。

 ブラー(残像)のみを残し、彼は一直線にまだこちらに気付かないゴブリンの群れに突っ込む。


 ゴブリン強×5


 戦闘開始の合図を告げるように、そうシステムメッセージが画面の右上に表示された。

「っらああああああっ!!」

 セイレイは自らを奮い立たせるように叫びながら、迅雷の如く一番手前にいたゴブリンに斬りかかる。

 低い姿勢から袈裟斬りを行い、ゴブリンの胸元を抉った。

「ギッ……!」

 だが浅い。ゴブリンの筋肉の鎧に阻まれ、大きなダメージを与えることは出来なかった。

「っ、まずい」

 セイレイはすぐにバックステップし、距離を取ろうとしたがゴブリンの追撃はそれよりも早かった。ほとんど反射的に飛び出したかと思うと、あっという間に肉薄する。

 すぐさま両手を交差させ、防御の構えを取るセイレイ。だが、ゴブリンはそのガード越しに素手で勢いよく殴り掛かった。

「がっ……!」

「セイレイッ!!」

 HP56/59

 防御態勢を取ったことにより、大ダメージを負わずに済んだようだ。

 だが、この世界では3ダメージと言えども油断ならない。セイレイは骨神経を介して受けた痺れに苦悶の表情を浮かべていた。

 noiseの隣に並ぶようにバックステップし、両腕の感覚を確かめるように手を動かす。

「……つぅ、なんて力だよ……いてぇっ」

「大丈夫か?」

「俺はモロに喰らえないですね」

 受けた攻撃から冷静に評価し、セイレイは短剣を握り直す。

 ゴブリン共は体勢を立て直したセイレイとnoiseを警戒するように、じっと睨んでいた。

 

 刹那の膠着状態。

 その拮抗を破ったのは、ゴブリンだった。

「……ギィィッ!!」

 ゴブリンの内の一体が切り込み隊長として、勢いよく大理石のタイルを踏みしめ、二人の元へと駆け抜ける。

 風の如く、彼等のどちらかをナイフで貫こうとしているようだ。腕を引き、ナイフを強く握っていた。

 noiseはセイレイを庇うように素早く前に出る。

「せんぱっ……」

 セイレイは慌てて彼に声を掛けるが、既にnoiseは防御態勢を取っていた。

 さながら杭の如く。大剣を勢いよく、地面に突き立てる。

「ギィィィィアッ!」

「っ、ぐ……!」

 だがそれでも構わないとばかりに、ゴブリンは大剣ごと強くnoiseへと突きを放つ。

 完全に防御しきったはずだった。だが、それでもインパクトまでは防ぎきることは出来ず、noiseにその衝撃が伝わる。

 大剣を地面から引き抜き、衝撃波から逃れるようにnoiseは後退する。

「先輩、大丈夫ですか!?」

「大丈夫だ、大したダメージじゃない」

 HP92/94

 noiseは身体に付着した土埃を払いながら体勢を立て直す。確かにHP比率を見る限り、noiseにとってはかすり傷なのだろう。

 しかしこれだけのやり取りだけでも、一筋縄ではいかない対象だと理解するには十分だった。

「ギィッ」

「ギッ」

 ゴブリン共は、私達と刃を交えた後互いに身を寄せ合って会議をしているようだ。

 何やら嫌な予感を感じ取る。


 そして、その予感は最悪の方向で的中。

 ゴブリン達は横に並び、それぞれ低く身構えた。

「——総攻撃——!?」

「ギィィィィィィッ!!!!」

 リーダー格と思しき中央に立つゴブリンがそう叫んだ刹那、やつらは寸分たがわぬ動きで一斉に駆け出した。

 大地を蹴り上げ、一瞬で私達の命を屠らんと襲い掛かる。


「俺の番だな」

「先輩……!?」

 しかしその状況下においても、noiseは冷静だった。

 大剣を構え直す彼は、ゾーンに入っているようだ。何故か、彼を取り巻く環境だけがスローモーションに映っているようにも見えた。

「俺だって皆を守りたい。大切な皆を守ること……それが俺が積み重ねてきた理由だ!!」


 [information]

 noiseが”SCB”:skill「青」の解放条件を満たしました。初回のみ無料でスキルを発動できます。


「……スパチャブースト”青”」

 再びセイレイの前に立ったnoise。彼は防御の構えを取ったかと思えば、静かにそう宣言した。


 [information]

 noise:大防御


 次の瞬間、noiseの輪郭をなぞるように青色の光が纏った。強固な鎧となった波打つ光は、ゴブリン共の猛攻を受け止める巨大な盾となる。

 金属の擦れる音が鳴り響く。稲妻が迸るような音が、巨大な盾を中心として轟く。

 まるでそれは巨大な壁だった。

 青色の光に阻まれ、行動を阻害されたゴブリン。その隙だらけとなったゴブリン目掛けて、noiseは大剣を振るう。

「セイレイが俺を守りたいように……俺だって、お前らを守りたい」

 そう呟きながら薙いだ一撃は、いとも容易く一匹のゴブリンを左右に引き裂いた。


 拮抗が、崩れる。

「……ギッ……!」

 noiseが放った”大防御”が解除されるや否や、咄嗟に距離を取ろうとしたゴブリン。だが、セイレイの追撃がそれを許さない。

「スパチャブースト”青”っ!」

 

 [information]

 セイレイ:五秒間跳躍力倍加

 

 セイレイがそう宣言すると同時に、彼の両脚にまとわりつくように青白い光が存在を放つ。速度を存分に生かし、戦線から離脱しようとしたゴブリン目掛けて勢いのままに肉薄。まるで弾丸となった彼は、一直線に突きを繰り出した。

「ぜああああああっ!!」

「カヒュ……」

 ゴブリンの喉元に深々と突き刺さるナイフから、真紅の血液が噴出する。空中で体勢を立て直したセイレイは、そのままゴブリンの身体を踏みつける。まるでゴブリンをサーフボード扱いするように滑って着地した彼は、亡骸と化したゴブリンからひょいと飛び降りる。

 一気に2体の同胞の命を奪われたゴブリンは、直ぐに状況を飲み込むことが出来なかったのだろう。「グァ?」と呆けた面を向けていた。

 戦闘において、一瞬の油断は危険である。

 フレーム単位で戦ってきたゲーマーであるセイレイと、常に冷静沈着なnoiseはそのことを十分に理解していた。

「っ、らあっ!」

「油断するからこうなる、来世の教訓にでもするんだな」

 もはや、残党処理に近しい状況だった。

 セイレイとnoiseは、ステータスに身を任せて残ったゴブリンをいとも容易く屠って見せた。


 [information]

 セイレイ がレベル5に上がりました。

 HPが全快しました。

 

 noise がレベル7に上がりました。

 HPが全快しました。


 To Be Continued……

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