ちょっとだけ気にしてたり。
「……やっぱり、早すぎたかな」
ともあれ、退社から数十分後。
そう、ポツリと呟く。そんな私がいるのは、住宅街に佇む鉄筋の二階建てアパートの前。一応、遅れないよう早めに来たのだけど……うん、1時間前は流石に早いよね。これなら、彼に任せずとも自分で……いや、それだと万が一にも長引いて遅れる可能性も……うん、やっぱり今日はこれで良かった。彼には今度、何らかの形で埋め合わせをしよう。
そう、改めて謝意を抱きつつ歩みを進める。向かう先は、2階のちょうど真ん中の部屋――中学から3年以上付き合っている、現在大学1年生の彼氏の部屋で。
なので、普段は気にも留めないスタッフ達の陰口だけども……まあ、今回に限ってはちょっとだけ気にしてたり。パワハラだの何だの、色々勝手なことを言ってたけど……でも、部下に仕事を任せて自分はデートのため早退しちゃってるのは事実だし。……まあ、それでも戸波くん以外に謝る筋合いはないんだけど。
ともあれ、ゆっくり板金の階段を上がり2階へ。その歩みとは対照的に、心臓は猛スピードで早鐘を打つ。もう3年以上になるのに、未だ慣れない辺りほんとこの手のことに関しては――
「………………え」