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……うん、やっぱり違う。
「――本日もありがとうございます、岩崎さん! また来てくださいね!」
「はい、もちろんです!」
それから、数日経た夕さり頃。
扉の前で、ニコッと人懐っこい笑顔でお客さんを見送る戸波くん。そして、そんな彼に果たしてお客さんも嬉しそうに……うん、やっぱり流石。
ただ、それはともあれ……うん、やっぱり違う。とは言え、傍目には気づくような差異ではないけれど……それでも、私には分かる。そして、その理由はきっとあの日の――
「――あの、失礼。こちらの店主さんですよね?」
「…………へっ? あっ、申し訳ありません! ご用件をお伺いします!」
そんな思考の最中、不意に届いた柔らかな声に慌てて答える私。見ると、そこには上質であろう黒のスーツを纏う端正な顔立ちの男性。……しまった、つい意識が。怒っていなければ良いのだけ――
「……その、もし良ければこちらを……」
「…………へっ?」




