楽しい話じゃないけれど。
「……うわぁ、めっちゃ美味そう。頂いちゃってもいいすか、先輩?」
「ふふっ、どうぞ」
「やった、では頂きます!」
その後、しばらくして。
運ばれてきた料理を前に、キラキラと目を輝かせ尋ねる戸波くん。まあ、場所が場所だけに声は抑えめにしてくれているけれど。
その後、食事をしつつ他愛もない会話を交わす私達。誘っておいて今更だけど、私といてどうなるかと懸念はあったものの……そこは、流石の戸波くん。無愛想でロクに話も出来ない私みたいな相手でも本当に楽しそうに話してくれる。……ほんと、誰からも好かれるわけね。まあ、それだけが理由でもないだろうけど。……ただ、彼には申し訳ないけど、私はまだ――
「……あの、高月先輩。その……なにか、あったんですよね?」
「…………へっ?」
すると、ふとそう問い掛ける戸波くん。いつもの柔らかな微笑……それでいて、いつもと違う真剣さがひしひしと伝わる微笑で。
「……でも、私は……」
とは言え……うん、流石に躊躇われる。別に私自身が話したくない、というわけでもなく……ただ、別に楽しくもないことを……それも、この食事の場で口にすることが――
「……もちろん、話したくないなら無理にとは言いません。ですが……俺は、貴女の話が聞きたいんです、高月先輩」
「…………戸波くん」
すると、躊躇う私に優しく告げる戸波くん。……ほんと、お人好しにもほどがある。なので――
「……別に、楽しい話じゃないけれど……それでも良いのね?」
そう、揶揄うように微笑み告げる。すると、彼も可笑しそうに微笑み頷いた。




