43話 最終話
桃の節句も終わる頃。
ふらふらとしていた本家の義之は結婚が決まり、祝言を上げた。
千鶴はことのほか喜んで、夫とともに本家をでて家を構えた。
義之が結婚したからといって本家との確執がなくなったわけではない。
だが、やがて義之が当主におさまれば、随分と状況も変わるはずだ。
霧生家に嫁いで、二度目の桜の季節が巡って来た。
小夜は再び桜色の着物姿で、惟明と御堀端にお出かけした。
桜は満開でちょうど見ごろだ。
小夜は桜吹雪をみて、子供のようにはしゃいで歓声を上げる。
「旦那様! すごいです。花びらがつかめそうです」
小夜が、花びらを捕まえようと両の手のひらを広げると惟明が言った。
「小夜。俺はお前と本当の夫婦になりたい」
「私たちは本当の夫婦ではなかったのですか?」
小夜はびっくりして隣にいる惟明をみあげた。
「そういう意味ではない。俺は小夜との子が欲しい」
惟明の直接的な言葉に、小夜は真っ赤になる。
確かに惟明と小夜の間に夫婦の営みはない。
それでは本当の夫婦とは言えないだろう。
小夜は杉本の家でもそうだったので、きっとこのまま何事もなく年を取っていくのだと思っていた。
でも惟明が小夜との間に子供を望んでくれていることはことのほか嬉しくて――。
「はい、小夜も子が欲しいです」
どきどきしながら頷いた。
その晩、小夜は二つ並べられた布団を前にして畳の上にぽつんと正座していた。
浴衣の前を何度も合わせ、そわそわとする。
なぜなら惟明との初夜だからだ。
緊張と不安でどきどきがおさまらない。
こういう時、どうやって夫を迎えたらいいのか、わからない。
小夜がそわそわしていると、ふすまの向こうから足音が聞こえてきた。
惟明だ。
小夜はその時ふとこの家に来たばかりの頃の初夜を思い出す。
あの時、惟明は隊服姿でこれから仕事だと言っていた。
そう、春は天気が不安定で雨が降りやすい。よって妖魔も湧きやすい時期だ。
小夜は別の意味でどきどきしだした。
(旦那様は、隊服姿かしら、それとも……)
襖がすっとひらく。
そこには浴衣姿の惟明が立っていた。
惟明は無言で部屋に入ると小夜の向かい側に座る。
小夜は緊張してどきどきした。
惟明は小夜に真剣な目で問いかける。
「小夜。俺が恐くないか?」
「はい、小夜は旦那様が大好きです」
小夜の言葉に惟明が口元を綻ばせる。
「俺も小夜が大好きだ」
ぎゅっと抱きしめられて、小夜の胸はこれまでないほど高鳴った。
終わり
読了ありがとうございました。
誤字修正感謝いたします!
ほしください!(っ’-‘)╮ =☆




