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94 女王の1日。

 今日はヴァイオレットとネネさんとお茶会です。


「初めまして、スズランと呼ばれております」


 ネネさんには貴族用の名前が有ります。

 なので初対面や貴族にはこう名乗ります。


「私、ヴァイオレットと申します、以後お見知りおきを」

「はい、宜しくどうぞ」


 ネネさんはとても嬉しそうです。

 ヴァイオレットは少し恥ずかしそうです、何故でしょう。


『どうしましたかヴァイオレット』


「実は私、お招き頂いたのが、初めてでして。何か、粗相をしてしまわないか、と」

『安心して下さい、私もスズランの姫も寛大です』

「それに私は庶民上りですので、寧ろご指導頂く側かも知れません、どうぞ先ずはお楽しみになる事を優先させては如何でしょうか」


『はい、そうして下さい』


「ありがとう、ございます」


 何故、泣いているのでしょうか。




「あの」

「申し訳御座いません」

『何が有ったのでしょうか』


「虹の国を、ご存知でしょうか」


 どうやら、ヴァイオレット嬢のお祖母様が元虹の国の貴族、だそうで。

 その事を知った一部の貴族から避けられ、今まで招かれた事が無い、と。


『どの様な経緯なのか分からないと判断しかねます』


 率直でらっしゃるが、確かにそうです。


「私が聞いている所では、貴族であるにも関わらず逃げた事、最近まで仰らなかった事が。要因では無いか、と」

『民の為に逃げる事も貴族の仕事の筈です、共倒れは悪しき者の為に行われるべきです』


「私もそう思うのですが、最近まで、私も知らなかったのです。虹の国の復興がもう間もなくとなった今、この時に言う事では無いのかも知れないと。そう、思ってもおります」


 確かに、何故、この時期にと。

 しかも、子供に影響を与える事は考慮出来た筈。


『話し合いはされましたか』


「いえ」


『何故でしょう』


 コレは難しい問題です。

 家族を信頼をしているからこそ、間違った選択の結果では無いだろう、と。


「私はお祖母様を信頼しております、だからこそ」

『では何故、今なのでしょうか』


 そこです。

 何故、今なのか。


「分かりません」


『何故、尋ねないのでしょうか、そんなにも簡単に嫌われてしまうのですか』


「いえ、ですが、機嫌を損ねてしまうかも知れない。そう恐れている事は、確かですわ」

『では私が代わりに尋ねます、良いですか』


「構いませんが、何故」

『私は少数の貴族に嫌われる程度は何とも思いません、それに虹の国の事に興味が有ります、アナタはどう思いましたかヴァイオレット』


「私は、来訪者様が恐ろしい、宿星が恐ろしいと思いましたわ」


 申し訳無い。


「私も」

『私は脆弱な国は危ないと思いました、簡単に蹂躙されてしまう様な国をそのままにしていた為政者が大嫌いです。備えは万全で有るべきです、歴史が長ければ長い程、民が多ければ多い程万全を期す為に尽くすべきです。とても万全にしていたとは思えません、好き嫌いで民に不自由をさせてはいけません、思想により誰かを困らせる事は為政者のする事では有りません』

「私も、そう思うのですが。もしかすれば、そう思っていないのではと、そう思われてしまう事も恐れております」


『アナタは貴族の令嬢として相応しくあろうとしています、当然で当たり前です、私はアナタの貴族の資質を信じています』

「ありがとうございます、ヒナ様」


 遮って貰ってしまった、面目無い。




「はぁ、気を遣って頂いてしまいました」


《俺もだ》

「あ、聞きましたよ、着ぐるみ。本当に天才ですね、流石です」


 流石、人を騙す天才、か。

 いや、少なくともそうは言わなかったのに、俺は。


《すまん、褒められると皮肉が言いたくなる》

「良い年をして拗ねてるとかキモい」


《攻撃力が高い》

「はい」


《はぁ、ドМかも知れん》

「ならお伺いしますが、今、最も恐れている事は何でしょうか」


 俺が今、最も恐れている事。


《この、中途半端な状態で、戻る事だな》

「では戻りたいですか」


《ヒナの巣立ちが見れたら。記憶が無くても良い、ただ償う気持ちだけは持っていたい》


「では、そうなりたいですか」

《絶対に嫌だな、何でもするからどうにかそれだけは止めて欲しい》


「ドМって喜んで受け入れそうですけどね」


《アンタの周りにも、居るのか》

「ノーコメントで」


《はぁ、とんだ変態だな》

「いや、別にだからってワケじゃないですからね。後です後、気付いたのは最近ですから」


《で、アンタのドМは喜んで受け入れるのか》


「まぁ、償いになるなら、受け入れますね」

《騙した王子様達か》


「あ、片方は逆ですよ、多分」

《多分》


「隙あらば食べられたがるので」


《まさかのカニバでしかも逆か》

「どうやら性的共食いと呼ばれる性質らしくて、向こうでも蜘蛛等に多い傾向らしいんですが、ウチのスライムなんですよ」


《あぁ》

「いや、あぁって、何ですか」


《食うか食われるかなら、まぁ、有るかもなと》

「次の他との交尾を忌避させる為、らしいんですけど、逆にドSだと思うんですよね」


《それは日頃の行いだろ、食われたいのはドМだろ》


「んー」

《いや、服従させたいだけがSじゃないからな、サービスのSだろ》


「じゃあSですよ」

《まぁ、どっちみちだ。自分の事でいっぱいに満たされて欲しいとか、ド変態だな》


 今なら気持ちが分かるが。

 要求出来る立場じゃないしな。




「うん、止めましょう、この話」


 気まずい。


《だな。ヒナに、悪戯や意地悪をされた事は有るか》


「いえ、全く無いですが」

《妹もか》


「はい」


《兄弟姉妹からも無い、した事も無いのか》


 怖い映画を観た後、脅かされたので後日、ベッドの下に隠れて足を掴んでやった事は有りますが。


「兄に、されたので、お返しならした記憶が有りますが」


 何故、頭を抱えているんでしょうか。


《そうか、女の子の家だと無いのか》

「一体、何なんですか?」


《子供と言ったら悪戯だろ、ヒナには今まで無かった事に気付けなかったんだ、悪戯や意地悪は安全地帯が有ってこそじゃないか》

「あぁ」


 安全地帯、愛着についての試し行動は、確かに有りませんでしたが。


《まだまだ、ヒナには気を配る必要が有る、なのに俺は気を使わせて》

「それを言うなら私もです、確かに盲点でしたが」


《アンタは安心基地の基準を満たしてるが、俺に落ち着くと思ってくれてるかどうかは、正直分からないんだ》

「となると探索基地ですが、それこそ先代の悪魔に、安全と探索の基地を依存しているのでは」


《で、どの道、俺が試される側か》

「ある種の探索基地なんだと思いますよ、嫌われるから出来無い、困らせるから出来無いとは思わない。でも、気を使わせてしまってるワケですよね」


《すまん、俺が試される側だと分かっていながら、気を使わせて》

「いえ、そこは私もですが。少し違うんだと思います、定型的な存在では無いですし、寧ろ適切な時期だと思います。妹は悪戯に無関心でしたが、付き合って喜んでくれてはいましたよ。違う形で出るんだと思います、妹は絵描きとして挑戦した、アレは一種の探索行為だと思います。いきなり応募してましたから」


《普通、親が勧めたりするんじゃないのか》

「出せるとは褒めてましたけど、賞を取ろうが取るまいが美大に行く、といきなりの宣言と応募の報告でしたから」


《成程な》


『おはようございます』

《あぁ、おう》


『虹の国の話を聞きに行く事にしました』


 探索基地に報告する。

 コレもう、本当は自立しているんだよな。


 単に補おうとしてる。

 今まで無かったモノ、今無いモノが無いかの確認を、俺らに任せてる。


《おう、俺も興味深いと思った》

『凄いです、アレで国を維持出来ていた事が奇跡です、善意に甘え過ぎた結果です』


《だな》

『何故、後の代は碌でも無い者が多いのでしょうか』

「名家三代続かず、ですね、きっとその富や名声を得る事に忙しくて家庭を疎かにしてしまっていたのでしょう。有るんですよ向こうでも未だに、先代は民にとても愛されていたのに、今の王は法を変えやりたい放題」


《あぁ、飯が美味いよな》

「辛い物がお好きですか」


《まぁ、けどそこそこだからな》

「ヒナちゃん、素晴らしい料理をお教えします、材料は王帝に仰って頂ければ直ぐに届く筈ですよ」

『はい』


 内緒話。

 コレが出来るのは良いんだが。


 不穏だ。

 不穏過ぎる。


「きっと、お兄様も気に入ってくれますよ」

『はい、直ぐに用意して貰います』


 そうして、晩飯に用意されたのは、サービエとか言う内臓煮込みだったが。

 意外にも本当に、美味く感じた。


 試しにヒナにも少し食わせたら、見た事も無い凄い顔をしたんで。

 暫く夕食に食ってやろう。


 基地の一貫した行動も、大事だしな。


《苦手か》

「はい、嫌いです、不味いです」


《だろうな》

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