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67 兄の苦悩。

《良く、アンタは耐えられたな》


「あぁ、まぁ、心は血反吐まみれで時には溺れかけましたけどね」

《だよな》


「友人が居たんです、ココで知り合った友人が。その子が教えてくれたんです、押し付けず聞く、大袈裟に反応しないって。でもまぁ、無理ですよね、一瞬フリーズしてしまう」

《涙を堪えて、か》


「それもですし、やっぱり何と言えば良いか、どう言えば傷付かないか」

《アンタ向こうの人間の割に柔軟だな、いや、悪い。屑と同列はすまなかった》


「あぁ、凄い謗り合いでしたね」

《絶対、アンタは秒で出れるだろうな》


「まぁ、設計者と言えば設計者ですし」


《アンタだったのか》

「ビンタでもしますか」


《いや、もっとサイコパスか何かかと》

「何でそうなりますかね、大真面目に考えた結果ですが」


《アレか、学校にテロリストが来たら》

「それは兄の得意技ですが」


《どれだ》

「1番上です」


 こんな女が好みだと、しかも死んでからなんて。

 本当に、俺は自分の事を何も考えて無かった。


《本当、狙い目だったな》


「カモを見る目で見るならヒナちゃんにチクりますよ」

《いや、アンタと出会ってたら、もう少しマシだったかもとマジで思ってる》


「うげぇ」

《それ地味に傷付くな》


「キモっ」

《それもだ》


「はぁ、こんなに分かり易い人だったら、騙されなかったでしょうね」

《マジなんだが》


「凄い、全く嬉しくない」

《そんなか》


「顔が好みじゃないので」

《成程、前は我慢して失敗した口か》


「よっ、天才詐欺師」

《本当に男兄弟が居たんだな》


「メンタリストになれば良かったのに」

《俺もそう思う》


「動画で荒稼ぎして本出して、講演会やって、弟さんと握手」

《はぁ》


 無言の圧力より、こうして言われる方が遥かにマシだ。


「ギブアップですか」

《いや、責められる方が楽だなと思ってな。アイツ、マジで全く何も言って来ないんだよ》


「そりゃ優秀な執事君ですから」

《シルキーの生態を知ったが、何でアイツはあぁなんだ》


「お聞きになれば宜しいかと」


《マジで俺の更正の為にも、少しは協力してくれよ》

「してる筈ですが」


《どうにか、出会って道を曲がらなかった場合の事だ》


「ホスト、遊びに行った事も有りますよ、姉に連れられて」

《で俺が目を付ける》


「年上は本当、無いんですよ、兄が居るので」

《成程、今の相手は年下か》


「はい」


《で》

「分かりました、アナタが紳士的な態度だったなら、面白いお友達程度にはなったかも知れません」


《そんで俺はムキになって、どうにか見合おうとして、家族の事を知って軽く絶望する》


「そこまで離れてますかね、政治家の娘でも無いのに」

《いや、金だけ持ってるのは来るが、しっかりしたのは本当にただの付き合い程度でしか来ない》


「で、先ずは姉に取り入る」

《コンプレックス山盛りだな》


「はい」

《悪かった、それだけ嫌な思いをして、どうして兄妹を嫌にならなかったんだ》


「悪いのは相手ですから」

《絶大な信頼だな》


「はい、正直、欠点が無いと思ってます」

《家族にも、姉にも》


「はい、寧ろ私が家族の欠点だろう、そう思う事が有りました」

《ココで無双しといて良く言う、血筋としては十分だろ、ココでだって俺にしたら遠い存在だ》


「カウンセラーとか最高だったかと、それならお金を払ってましたよ」


《それで、どう出会う》


「学校にカウンセラーが来た、目指す事にした、金の匂いを嗅ぎ付けた」


《あぁ、もう少しマシなのが来てたら、有ったかもな》

「お母さんを許してあげて、許す事も必要よ」


《全く、同じ事を言われた》

「許すって何だと思いますか」


《前は、責めない、だったな》

「ですが今はどうでしょう」


《存在を許すかどうか、何処まで許すか》

「はい結構です、お駄賃を上げましょうね」


 そう言って菓子を分ける良い女。


《マジで惚れたい》

「おじさんキモいウザい」


《殺しに掛からないでくれよ、褒めてるんだマジで》


「流石、元ホスト」

《悪かった、良い対応だった》


「で、良いカウンセラーに当たってアナタはカウンセラーを目指した」

《でもホストはしてるだろうな、で傍らで動画配信もして、本も出す》


「でボロボロの私に出会うんですかね」

《そうなる前に、かっさらいたいけどな》


「かっさらわれるのは御免ですが、止めて貰えているだけでも違ったと思います」


《惚れてはくれないか》

「医師と患者は禁忌では」


《あぁ、親父さん医者だったな》

「はい、ですのでカウンセラーとして接触していたなら、絶対に無いですね」


《やっぱりホストか》

「そこで選んではいけない男の特徴を教えて貰い、回避出来たお礼に再び来る」


《今のアンタでコレだろ、絶対に口説かれないだろ》

「違う意味で自信が有りますね、ホストからして私はお金にしか見えていない、そう教わってますから」


《俺が貢いでもか》

「それこそ詐欺師の手口じゃないですか、得をさせてからお金を引き出す」


《そこか、ホスト辞めてカウンセラーで食ってく、そこで改めて口説く》


「口説くより告白の方が効くと思いますよ」


《あぁ、真面目だからな》

「普通かと」


《基準が高い、家族のせいだろ》

「確かにそうですが、高いですかね」


《いや、アンタになら当然の基準だな》

「どうも、でも残念、既に私は良い男を見付けていました」


《今もな》


 以前には無かった筈の指輪が付いている。

 しかも相手は2人、らしい。


 徒党を組まれている時点で勝ち目は全く無い。


「どうですか、少しは気が紛れましたか」

《あぁ、もっと優しい世界だったら、誰も傷付かなかっただろうな》


「ですね」


 真剣に結婚を考えていれば、こんな女に出会えてたんだろうか。

 物静かで真面目で、見栄を気にせず理知的な女に。


《溜まった血反吐はどうしてたんだ》

「そらもう、誰かにお裾分けですよ、明らかに消化出来ない量でしたらかね」


《平和だったんだな》

「はい、情報が遮断されていたのかも知れませんが、周りには居ませんでした」


《で、遊園地が好きで、広告代理店をギリギリで不採用になって大手小売り店に就職》

「寸前に破局だったので、辞退しましたけどね」


《なのに対応出来てる、凄いよ、良くやってる》

「アナタも、お客では居ても身近には居なかったかと」


《正直、常に悩んでる》

「分かります」


《けど、そこも言ってる、それも必要だと思ってな》


「判断、しかねますね」

《けど今の所は問題無いだろ》


「まぁ、言う時は言ってくれますし、そう思えますが」

《匙加減が分からないんだ、悲しんでも仕方無い、けれど言いたいが嫌われたく無い。アンタの名前が1番出て来る、1番好きで、1番に気を遣ってる》


「泣きそうなんですが」

《本当に、良く耐えてたな》


「優先すべきは、ヒナちゃんですから」


 本当に泣くんだな。

 本当に辛かったのに、逃げ出さなかった。


《アンタみたいな大人が居たら、もっと曲がらないで生きられたんじゃないかって思う。親なら余計に、アンタが親だったら良かった、俺やヒナの親だったら良かった》


「アナタの家でも、きっと大丈夫だったと思いますよ」


 あぁ、ヒナはそう考えたんだろうか。


 いや、無いな。

 まだ、そこまで行って無い。


 いや勘、か。




《ネネ、泣いた?》

「少し、感極まって」


《そう、よしよし》


 同郷に認められるのは、また他と少し違う。

 ユノちゃんが居なくなってから、暫く忘れていた。


 問題が有る人間だったとしても、アレは多分、本当だった。


「褒められました、ヒナちゃんの事」

《そうだね、専門家でも病む者が多いらしい、なのにネネは本当に良く頑張ってるよ》


「でも、遠慮させてしまってます」

《それは友人だから、どう?新しい家族には言えていた?》


「はい、それはもう、既に私が吐血したのと同量を呑み込んでいるかと」

《流石女王だね、見る目が有る》


「ココの倫理観、凄い」

《だって、彼は犯罪者未満。国が違えば、有能な者は犯罪者扱いされる事だって有ったんじゃないかな?》


「まぁ、はい、ですけど口説かれた」


《女王には悪いけど皮を剥ごう》

「冗談です、彼は接客の専門家、そう気晴らしをしないとダメみたいでした」


《嫉妬して欲しかったの?》

「かも知れませんね」


《妬けた、ネネを食べて記憶を消し去ってやりたい》

「脳細胞を食べるのは勘弁して下さい、大事な事も忘れたくないので」


《そうだね、僕らに指輪を送った事は忘れて欲しくないしね》


「すみませんが、もう暫く待ってて下さい」

《うん、明日は紫禁城だしね、早く寝ようか》


「はい、別々で、おやすみなさい」


《意地悪だね》

「はい」


《おやすみ》

「はい、おやすみなさい」

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