表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/255

57 帰還と寂しさ。

「お帰りなさいませ」


『ただいま、お帰りなさい』


 アズールが帰って来ました。


「はい、ただいま戻りました」

『ピースが埋まるが分かりました、見えない何処かに穴が空いていたんです、静かで広くて違和感ばかりでした』


「そうだったんですね」

『はい、アズールはどうでしたか、忙しくて忘れていましたか』


「いえ、常にヒナ様の事を考えていましたよ」

『そうだったんですね』


「はい」

『あ、無理にハグしてしまいましたが、嫌だったらすみません』


「いえ、大丈夫ですよ、構いません」

『以後気を付けます、あ、今日は可哀想な王子様と言う物語を読みました。終わった筈なんですが、明日にも続くんだそうです』


「成程、そうだったんですね、詳しくは馬車でも宜しいですか」

『あ、はい、そうします』


 ネネさんに会ったみたいに興奮してしまいました、不思議です。

 ネネさんとは違って約束が有るので、急に離れる可能性は少ないのに、何故か嬉しかったです。




『そう、なら、寂しかったのかも知れないね』


『でも、アズールとは約束が有りますし、役割や役目が有って出掛けているだけです。お買い物に出たのと同じです、必ず戻ってくる筈なのに、どうして寂しいのですか』


『そう思うんだね、ならネネさんと会えない寂しさは、どんなものなんだろうか』

『約束が有りません、いつ会えるか分かりません、会ってくれるか少し分からない部分が有ります。でもアズールは違います、約束が有りますから』


『その約束とは何だろうか』

『辞める時は辞めると言う約束です、契約しました、執事と主人になるって。ですがネネさんとは何も有りません、でも不満は無いです、友達とは契約では有りませんから』


『なら、その契約が無くなるかも知れない、その事についてはどうだろうか』


『残念ですが、次はもっと長く居て貰える方を探します』

『何故かな』


『仲良くはしたいです、あまり仲良くなれない者より、ずっと仲良く居られる方が良いです』


『それは何故だろう、ヒナが嫌いでは無くても、家の事情や仕事内容に不満が有れば辞めてしまうかも知れない』


『信頼だと思います、新任は分かってくれているか少し不安になります、少しの不安でもあまり持っていたくは有りません』


『なら、つまりは面倒だからかな、慣れる手間が有る。信頼する手間も有るし、仲良くなる手間も有る、それらを省く為だけに長く勤めて欲しい』


『それと別れが少し寂しいからだと思います、それに少し悩みます、何度も続いたら私に何か問題が有るのではと悩むと思います』


『もし問題が無いのなら、長く続けて欲しい』

『はい、ずっと居て欲しいです』


『いつまで、かな』


『死ぬまで、ですが、私には多分寿命が無いです。任意です、死にたい時に死ねます、そして生まれ変わります』

『君の意志を持って』


『それは選べると思います、先代は私に殆どを分けてくれたと実感しています。私が生まれ変わった様に、誰かを取り込んで違うモノになる、そこへの意志の存在は任意です』


『なら、アズールを取り込みたい?』

『いいえ、アズールはアズールです。ですが、取り込むべきかどうか、どうして私なのかが分からないので。基準の引き継ぎが有りません、今の私は嫌ですが、答えは変わるかも知れません』


『アズールのまま、長く傍に居て欲しい』

『はい、嫌で無いなら』


『置き換えるなら、ネネさんはお父さん、アズールはお母さんかな』


『分かりません、お母さんが居ないと困ります、でも寂しいと思ったかどうか分かりません。お父さんもです、居ないのが当たり前なのは同じですが、だから困っているのか分かりませんでした』


『君は寂しいと困る、の切り分けがしっかり出来ているんだね』


『いえ、不出来でした。アズールが居ないと寂しいです、寂しいは困る事です、少し困って寂しいが大きいです。ネネさんと比べていました、ネネさんが居なくても困らないのに寂しい、でも寂しいは少し困る事です』


『ヒナの場合、冷静に判断するのが基本だけれど、人種の殆どは違うのは分かるね』

『違うと言う事だけは分かります』


『君は頭で物事を分類している、だからこそ、寂しいかどうかについて少し間違えた』


『他は、そんなに違うんですか』


『以前はどうだったのかな』


『空っぽです。流れる映像を眺めて、お腹が空いたら食べ物が有る筈の場所を探して、喉が渇いたら蛇口を捻って水を飲んで。映像が消えていたら粘土で遊んで、トイレに行きたくなったらトイレに行く。眠るのも同じです、眠くなったら寝て、置きて、そう過ごすだけです』


『今の様に考える事が無かった』

『はい、情報も何も無かったので分類も何も無いです』


『知らなかったから分からない』

『はい、でも知っても分からない事が多いです、それに間違える事もします』


『それは情報が足りないから、君の前世は有って無い様なもの、今日は少し動物園に行こうか』

『はい、行きます』


 ヒナちゃんの新しいお友達、ジュリアさんと一緒に隠れて聞いていたけれど。

 血反吐が止まらない。


《ネネさんだけが、最初、全てを受け止めていたんですね》


「ココまででは無いですが、まぁ、はい」

《ご苦労様です、本当に、心中お察し申し上げます》


 血反吐が目から出てしまっているジュリアさんのお陰で、コチラは何とか表に出さず堪えられていたけれど。

 代わりに言葉が止まる気がしない。


「アレでは、それこそ動物園の動物です」

《しかも劣悪な環境でのネグレクトです、思考を止め反復行動を繰り返すだけ、そうなって当然です》


「けれど、目の当たりにさせようとしている」

《多分、私達の代わりに受けてくれるつもりなんだと思います。私達人種の弱さを、彼は良く理解していますから》


「そこに甘えて、良いのでしょうか」


 コレはコチラの世界での問題。

 向こうの世界で起きた問題。


 それを、何も介入せず。


《正義感が強いのは、ネネさんの影響なのかも知れませんね》


「正義感、いや、あの子は元から」

《他の子は、もっと無関心なんです、そして気に入った庇護者に阿ろうとする。それか根本を真似る子、似たモノになろうとするんです。まぁ、本の知識が殆どですが、話を聞いても似た話題が多いですよ》


「私を、真似ている」

《言葉を崩さないのもそうかも知れませんし、出来るだけ冷静に判断する事も、それを良しとして継続しているんじゃないかなと》


「ちょっと、変えるべきか悩み所なんですが」

《確かに他の子とは少し違いますけど、私を見ていても崩す気配は無いですし、何よりヒナは貴族なので問題無いかと》


「良いんですかね、本当に」

《大丈夫ですよ、学園から問題提起も無いですし、実際にも問題は起きていない》


「それは、今だけ、なのでは」

《それもヒナの選択ですし、ヒナは間違いを正せる、見た目以上に大人ですから》


「大人、とは、何でしょうか。私はヒナちゃんは見た目通り、まだ子供だと思います。知識の足り無さだけでは無く、経験の少なさこそ子供の証。私は確かに成人していますが、大人、だと言い切れる自信は全く有りません」


《すみません、途中から逆の事を言ってました》


「何故」

《本音を引き出す為に、敢えて逆を言えって。すみません、少し試しました》


 凄い、申し訳無さそうな顔を。


「それは、私を知る為」

《はぃ、万が一にも、一応念の為にと。はい、すみませんでした》


「あの精霊種の彼ですか」

《はぃ》


「では、信用頂けたと言う事で宜しいでしょうか」

《はい、勿論です、何なら殆ど信用してたんですけど。出来る機会が有ったので、させて頂きました》


「そうでしたか、分かりました」

《ほら、やっぱり似てる、さっきの何故も凄く似てましたよ》


「アレは、大概は、あぁなるかと」

《そうでも無いかと、もっと驚嘆が出る人種が多いですよ、お国が違うからかも知れませんけど》


「あぁ、確かに。でも、敢えて、私に分かり易くしてくれているだけ、かと」

《全然、と言うか貴族の方こそ出さないって感じなんですよ、だからそこはヒナは適してるなとも思います》


「あの年で、出さない子が居ますかね」

《そこですよね、出さない様にするのと、出ないのは違うから》


「そこなんです」

《でも私、出さない良さも有ると思うんですよ、だって凄く気を遣うじゃないですか出まくる人って》


「まぁ、ですが」

《もしかすればアレは、ヒナの心遣いなのかも知れないなって、無意識で無自覚な》


「心遣い」

《あ、実際は全く分かりませんけど、出ない理由の1つに有るかもなって》


 表情を出さない、心遣い。


「すみません、確かに子供扱いが過ぎたかも知れません」

《かもですからね、かもで、そうだったら良いなって程度ですから》


「ですが有り得ないとも言いきれない、検討させて頂きます」


《ふふふ、ほら、やっぱり似てる》

「ど、どうしたら良いんでしょうか」


《私がこうですし、良いバランスだと思います、色々居るってヒナは分かってる筈ですから》


「でも、私が見本は、あまり歓迎出来無いんですが」

『あらあら、ココでコソコソしてるのは誰かしら?』

《あ、ラプラス、アナタが関わってるんですね》


『ふふふ、そうなの』


 ラプラス。

 ラプラスの悪魔。


「居るとは、思いませんでした」

『ふふ、良く言われるわ、宜しくね』


「あ、はい、宜しくお願いします」

『じゃあ、行きましょうか、動物園に』


「え、あ、はい」

《ですよね、見守らないは居心地が悪いですし》

『でしょうね、ふふふ』


 ラプラスの悪魔が居るなら。

 マクスウェルの悪魔も居るのでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ