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41 お茶会と家族。

《初めまして、エルと申しますわ》

『初めまして、ヒナです』


《素敵な髪色と瞳ですわね、さ、お座りになって》

『はい、ありがとうございます』


 まさに、お人形とお人形が動いて話している。

 可愛いしか無い。


《急な招待を受けて下さってありがとう》

『いえ、初めて頂きました、ありがとうございます』


 ヒナちゃん、何だか少し元気が無い?

 緊張?


 あのヒナちゃんが?


「ヒナ様?」

『彼女はネネさんのお友達ですか?』


「お友達、と言うか」

《ネネ様は私の未来のお姉様ですわ、ね?》


「あー」

《エル、ネネを困らせて良いのは僕とレオンハルトだけだよ。すまないね、エルは僕の妹で》

『ネネさんを好きな方ですか』


《そうだよ、ネネから何か聞いているのかな》

『いえ全く』


 何だか、拗ねている様な。


《ふふふ、君もネネが大好きなんだね》

『はい、大好きです』


 もしかして。


《もしかして僕らを紹介されて、嫉妬しているのかな》

『はい、特にエルに嫉妬しています、私もネネさんがお姉さんが良かったです。でも家族は居ませんし、どう足掻いても家族にはなれません、とても羨ましいです』


 子供の嫉妬心を舐めていました。

 と言うか、まさか、こう嫉妬されるとは。


《そう、どんな事情が有るんだろうか》

『私は宿星で悪魔貴族です、この姿なので指輪も貰ってあります』


 ヒナちゃんが懐中時計と指輪を見せると、うん、流石エル様。

 少し驚いただけで、相変わらずの笑顔でらっしゃる。


《そうでしたのね》

「失礼致しました、ご説明が遅れました。ヒナ様もエル様も次代女王となられるお方、そしてお年も近いので、ご紹介させて頂こうかと思った次第です」

《成程、彼女の為なんだね》


「はい」


 伝わってくれるでしょうか、本当にヒナちゃんの為にと、思ってした事なのだと。




『私の為、ですか』

「はい、エル様も素晴らしい才能をお持ちですので、お話も合うかと」

《遊園地は分かるかな》


『はい、行った事は無いですが知っています』

《そうですのね!では私の為にもなりますわ、ありがとうお姉様》

《エル、今日はネネと呼びなさい》


『いえ、いつも通りで構いません、初めて嫉妬したので慣れるまで時間が掛かっているだけですから』

《そう、ご家族が居ないのはネネとも同じだね、どんなご両親だったのだろうか》


『2人共私に無関心でした、若しくは嫌いだったのかも知れません、こんな風に構われた事が有りません。学校へは行っていません、それに遊園地も、ずっと家に居たので外の事は良く知りません』


《成程、それでネネは悩んでいたんだね》

『悩んでいたんですか』

「あー、少し」

《私も、この国だけしか知りませんの、婚約者が決まれば一緒に諸国へ赴く事も出来るそうなのですけれど。私、好いた方が居てお断りさせて頂いてましたの》


『もう好きな方が居るんですか』

《あの方ですわ》


 ネネが悩むのも無理は無い。

 幼さと大人らしい部分が同居し、僕の幼い頃より厄介そうなのだから。


『何処が良かったのですか』

《阿らず子供扱いせず、優しくて紳士的で、強いんですの》


『強いは大事ですからね、成程』

《ヒナ様はいらっしゃらないの?》


『はい、好きがまだ良く分からないので。不便は無いのですが、知識の継承が全ては行われていないのです』

《でしたら、何でも楽しい事間違い無いですわね》


『はい、とても楽しいです』

《分かりますわ、私も初めての公式を知った時……》


 ネネは途中から少し緊張していたけれど、やっと肩の力が抜けたらしい。


《エル、いっそ見せてあげたらどうだい、設計図を》

《はい!コチラですわ、いらして》

『あ、はい』


 エルが彼女の手を引いて、急いで私室に駆けて行った。

 あまり他人に興味を示さない妹だけれど、相性は良いらしい。


《良い選択だったね、ネネ》

「お陰様で、ありがとうございました」


《厄介そうだね、僕の幼い頃より》

「厄介と言うより、私が困惑しているんです、どう接するべきか」


《向こうの常識とコチラの常識は違うし、しかも虐待を受けていた、だからこそ家族について悩んでいたんだね》


「性善説が過ぎるのかも知れませんが、殆どは虐待する為に産むわけでは無いかと」

《そうだね、結果として虐待してしまった、そうした言い訳はコチラでは多いよ》


「向こうも、そうかと」

《幸いにも違和感には気付いているのだし、大丈夫、ネネが思うよりは心配要らないと思うよ。最も難しい場合は、違和感に気付けず、離れ難く思っている場合なのだから》


「それよりは、まだ、マシだとは思いますが」

《賢い子供同士、徐々に分かり合える筈、エルには初めての同性の友人となるだろうね》


「エル様、友達が少な過ぎでは」

《何せアレだからね、本当に他人に興味が無くて、家族と一緒に居るか数字や図面ばかり見ていた子なんだよ。そうなると当然、茶会では何処かに行ってしまうか黙って茶菓子を食べるだけ、一時は人付き合いは無理だろうと思われていたんだ》


「凄い個性の持ち主は、どうしてもそうなるかと」

《けれど大人としては、子供同士で得られるモノを得て欲しい、ネネもそれを願っていたんじゃないかな》


「はい」

《因みに言うと、僕は途中までは社交的だったよ、家族を安心させる為にね》


「あぁ、分かる気がします。でも婚約者候補か何かに、クッカーニャさせたそうで」


《あぁ、それはまぁ、幼い頃の》

「発想が中々に鬼畜ですが、そこまで憤りを覚えましたか」


《正直、凄く愚かに見えてね、つい一掃してしまいたくなったんだ》

「まぁ、エル様が褒めるほどの出来栄えだったそうですが、こんな庶民に惹かれてしまって可哀想に」


《そうかな、エルに友人候補を連れて来てくれたんだし、寧ろ相変わらず成果を挙げている方だと思うけれどね?》

「話題を逸らしますが、随分と慣れてらっしゃいましたね」


《あぁ、僕ら王族は他と違って、家族に捨てられる様な脅しはされないんだ。けれど代わりに言い聞かされる事が有る、虐げられると言う事は暴言や暴力ばかりでは無い、無関心や無視と言うモノが有る。そうした事をされては、幼い獣ですら死んでしまう、だからこそ良い子で居なさい。とね、そして孤児院や施設に見学に行き、実感させられる。彼女と似た様な子は、どうしてもココでも出てしまうからね》


「はぁ、最初から相談していれば」

《いや、元は向こうの子なのだし、ネネが見極める時間も必要だったと思う。それに、僕らは慣れてはいても完璧な対処法までは知らないんだ、コレが妥当で最善だと思うよ》


「だと良いんですが」

《カイルも同一の教育を受けているし、補佐は増えたよ、大丈夫》




 良い雰囲気になり、キスされそうになりましたが、王族と違いコチラは使用人の目を気にするんです。

 無理、侍女に見られながらキスされるとか、マジで無理です。


「そうですね、どうもありがとうございます」

《ご褒美は?》


「人目が有るので無理です、生憎と王侯貴族の生き方をしていませんので」

《恥ずかしがり屋だね》


「若干、論点がズレている気が」

《目が無ければ良いんだよね?》


「そうコレからイチャコラするんだな、そう思われながら部屋に向かうのも無理です」

《皆は気にしないし、寧ろ安心すると思うけどね?》


「だとしても却下です、忘れた頃にお渡ししますので控えでも出しておいて下さい」

《分かった、直ぐに書くよ》


 そこそこ深刻な話題だったと言うのに、飄々と。


「ココでは、そんなに深刻では無い事なのでしょうか」


《まぁ、そうだね。と言っても、殆どの者が彼女の親に大して、どうかしていると思っている筈だよ》


 周囲を見回すと、其々に頷いている。

 特にウチの侍女(母)は、激しく頷いている。


「みたい、ですが」

《嫌なら関わるな、それは身内に対しても許される行為であるけれど。親が子との相性が悪いと思ったなら、誰かに預けるか施設に預けるのが当たり前。けれど彼女は敢えて親が手元に置いていた、でも構わなかった、それは酷く異常なんだよ。良い大人なら、互いの為に行動するのが当たり前だからね》


「敢えて反論しますが、預けるにしても不安が有ったりだとか」

《預けたら殺される状況なら分かる、それこそ誰かが害される場合も同じだけれど。向こうでは、そうなのかな》


「いえ、私が伝聞により見聞きした限りでは、そうした例は殆ど無かったかと」

《なら、大半はどんな理由だったんだろうか》


「どうしたら良いか、分からなかった、と」

《本当に、調べる手段も何も、無かったと思うかい》


 スマホが無い者は、少なくとも自分が知るニュースの中には、居なかった。


「いえ」

《じゃあ、何故だろうか》


「思考の放棄、若しくは、思考が難しかったらしいです」


 中には、知的障害手前の方も居た。

 でも、子供に罪は無い。


 産んでくれと頼んだワケでも無いのに、勝手に作って、勝手に困られたって。


《ならネネは心配無いね、調べる事も出来るし、コレだけ補佐が居るんだし》


 すっかり仲良くなった侍女ズも居る。

 玉響(たまゆら)ちゃんも来る。


 ヒナちゃんもエル様も、エリザベート陛下だって居る。


「ですが、もしコレで間違えたなら」

《私達が何も言わないと思うか》

『そうしろって言うならそうするけれど』

《ニャー》


 両親には、祖父母が居た。

 兄弟姉妹が居た、親戚も居た、友人だって居る。


 足りなければ家政婦だって雇ったし、学校に任せる時間も有った。


 こうして頭では分かっているのに、どうしても不安が残る。

 見落としは無いか、抜け洩れが無いか、どうしても不安になる。


「すみません」

《馴染んだり慣れるには時間が掛かって当然なんだから、大丈夫、幾らでも話し合おう》


「はい、ありがとうございます」


 急いだり焦る必要は無い。

 両親だって、この年ではまだ結婚していなかったのだし。

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