23 いきなり授業中。
《さ、お昼ね》
『そうね』
『あの、ネネさん、案内しますね』
「あ、はい、宜しくどうぞ。失礼しますね」
《ふふふ、またね》
『またね』
授業を4つして、コレから食堂へ行きます。
私もお隣の方々が誘ってくれたんですが、今日はネネさんと行きます。
案内したいので。
『どうぞ、食堂です』
「大きい、広い」
『ですよね、私も驚きました』
テレビで見たみたいに、食べ物が沢山並んでいて、取り放題。
「大きい先輩方は居ないんですね」
『はい、2つ上の先輩までだそうです、その上の人は他の場所なんだそうです』
「おぉ、成程」
『さ、行きましょう』
いつもネネさんに教えて貰っているので、今日は私が色々と教える日です。
頑張ります。
「つい、こうなってしまいますね」
『分かります』
スープにサラダ。
魚のムニエルとリゾット、それとフルーツ。
厳選した筈が、そこそこ盛ってしまった。
食べ切れるだろうか、この体。
「美味しい」
『ですね』
ヒナちゃんも、私と同じメニュー。
コレはもう全然、真似してくれて寧ろ嬉しい。
「お隣さんはどうですか」
『リリーとローズでした、覚え易くて助かります』
「確かに」
お隣さんのお名前、聞きそびれたな。
『ネネさんはどうですか』
「名前を聞き忘れました」
『結構、お休み時間は意外と短い』
「ですね、飲み物を飲んでトイレに行きますし」
『何処か何か、違いますか?』
「結構、違いますね、向こうと」
『ですよね、水筒が無いですし』
「代わりに給仕係が居ましたね、驚きでした」
『牛乳、美味しかったです』
「あ、牛乳だったんですね、私はお茶にしておきました。アレは子供用で、カフェインが入って無いお茶ですから」
『カフェイン』
「大量に接種すると危ない興奮成分です、夜に飲むと眠れなくなり、最悪は死にます」
『お茶って危ない』
「大量に摂取しなければ、過敏な大人でなければドキドキしたりはしませんよ」
『ドキドキするお茶』
「時と場合には良いんですよ、大丈夫です」
『成程』
危機回避の基礎は、コチラが率先して教えても問題は無いだろう。
「どうでしたか、授業は」
『色々な授業が有ると思ったんですが、違いました』
「ですね、でも私はこのやり方が好きですよ」
午前の前半の授業は、道徳と国語のミックス。
先ずは黙読し、分からないかも知れない部分は先生が補足し、次々に指名し音読させ。
一時限目が終わる。
今回は竹取物語、異世界の異国で、かぐや姫。
二時限目は感想戦、先ずは何人かを指名し、感想を言わせる。
そして討論なり同意したい者のグループへと移動し、話し合う。
それから意見を纏め、書き、報告。
報告が終わると、先生からの解説や補足が入り。
再び感想戦となり、報告。
続いて三時限目、は歴史と道徳。
四時限目も同様に感想戦。
中々、面白かった。
『ネネさんは最初、喋ってませんでした』
「あぁ、独自の理論が有るので」
『どんな理論ですか?』
「内緒ですよ」
『はい、内緒にします』
「かぐや姫は宇宙人」
『成程、お月様から来たんですもんね』
「そう、そして珍しい物を研究用に持ち帰った」
『成程』
「でも宇宙人の話はまだ早いかもなので、今回は傾聴させて頂きました」
『そうだったんですね』
ヒナちゃんは、かぐや姫は我儘だ派で傾聴していましたが。
一体、どう思っていたんでしょうか。
《おはようございます》
『おはようございます』
かぐや姫が我儘かどうか、私には分からなかったので、試しに聞いてみたんですが。
良く分かりませんでした。
なのでお昼寝前にネネさんに話すと、かぐや姫の魅力を理解していないから、要求が大きく思えて我儘に見えたのだろうと教えてくれました。
しっくりきました。
腑に落ちるとか言うヤツでした。
なので直ぐに眠れました。
そして、午後の授業です。
さっきの教室とは違う部屋に移動し、美術、陶芸の時間です。
『では、今日はコップを作りましょう』
粘土で作ります。
初めてなので、難しかったです。
《焼き上がりが楽しみね》
『割れないか心配です』
「大丈夫、割れたモノちゃんと次の授業で使うから」
『そうなんですね』
そして次は、運動です。
コレは仲良しさんと一緒に授業を受けて良いそうなので、ネネさんと一緒に運動します。
「柔らかさ、羨ましい」
『ネネさん硬いですね、バリカタ』
先ずは着替えて柔軟です。
あ、運動着はネネさん曰く、昔の戦闘服みたい。
だそうです。
白い綿の下着に、紺色の厚手の上着と緩めの長ズボンです。
引っ掛けて転ばない様に、足元と手の周りをクルクルさせて絞ります。
「ぅう」
『柔らかいと怪我が減ります、頑張って下さい』
「ふぇい」
授業科目は軽く走った後、まさかの跳び箱でした。
跳躍板が跳ぶ跳ぶ、子供の軽い体での運動は、正直楽しい。
もしかして、このままで居れば男難から逃れられるのでは。
『はい次』
『よし、行って参ります』
「はい、行ってらっしゃいませ」
ヒナちゃんも跳ぶ跳ぶ。
もうポンポン跳ぶ。
勿体無い。
もしかすれば、国体選手になれたかもなのに。
『はい次』
「はい!」
初等部は、6時限目までです。
今はもう、帰りの馬車の中。
更に大きくなると、もっと学校に居られるんだそうです。
『もっと居たいです』
「楽しかったですか?」
『はい!ネネさんを案内出来ました、色々と教えて貰っているので、もっとお返しがしたいです』
「私は、実は明日は1学年上の教室に行こうと思います」
『もう、大人だからですか?』
「ですね、元は下見でしたから。でも大人と言っても完璧では無いので、ヒナちゃんからも色々と教えて貰う事が必ず出ます。先ずは無理せず、規則正しい生活と学園での生活を送りながら、色々と教えて下さい」
『はい!』
「あ、コレ、贈り物です」
『本ですか?』
「いえ、日記帳です、印象に残った出来事を書いておく為のモノです」
『印象』
「私に話したい事を書いたり、残しておきたい事を書いても構いません。あ、絵も描いても良いし、好きな様に使って良いですからね」
『今日は小さいネネさんと一緒に学校に行きました』
「ですね」
『我儘は評価基準の違いでした』
「指標の1つですね」
『歴史の授業は退屈でした、でも意見交換は有意義です』
「ですね、多様性予測理論は面白い成り立ちですから」
『そうなんですね、いえ、きっと授業で出るので我慢しておきます』
「それも書いておきましょうか」
『はい!書く事がいっぱいある』
「いっぱい書いて良いんですよ、足りなくなれば足せば良いんですから」
『部屋が図書館みたいになってしまうかも』
「多分、別室が作られるかと」
「ですね」
『日記部屋』
「鍵を付けて貰いましょうか」
「そうですね、部屋になったら鍵を付けさせて頂きます」
「好きな柄の日記帳を選んでも良いですしね」
『選べるんですか』
「折角ですし、日記用の道具を買いに行きましょうか」
『行きます!』




