20 七草は葉っぱ。
七草粥は葉っぱのお粥でした。
でも追加のおせちが有ったので、楽しく食べれました。
『ご馳走様でした』
「はい、ご馳走様でした」
《ご馳走様でしたー、ヒナちゃん、学園に通うんだって?》
『はい!とっても楽しみです!』
「私もご一緒しても良いでしょうか」
ネネさんと、一緒。
『ネネさんも学校に行った事が無いんですか?』
「ココの学校は行った事が無いですね、なので体験してみようかと」
《ヒナちゃんが恥ずかしかったら、別々でも大丈夫だよ?ネネちゃんが勉強の為に少し通いたいだけだから》
「はい、違うクラスでも構いませんよ」
『良いんですか?小さいと大変ですよ?』
「ですよね、はい、でも体験してみたいんです」
『心配してます?』
「少し、でも執事君も先生も居ますし、興味と心配の半々ですね」
《ネネちゃんは学校に通い慣れてるもんね?》
「まぁ、少し、ですね。でもココの学校に関しては無知なので、寧ろ習う事の方が多いかも知れません」
『大人でも、学校に通いたいですか』
《そうだねぇ、大人でも通う人は多いね、専門学校とか大学とか。向こうの違う国では、もっと多いよ、お医者さんになろうとしたり弁護士になろうとしたり、美容師さんもだね》
『私は、何になりたいか、まだ無いです』
「初等部は基礎教育です、何かになる為の基礎、何になりたいかを考える基礎を学びます」
《私ね、大人だけど何になりたいか、まだ決められて無いんだ。でもヒナちゃんには超猶予が有るから大丈夫》
『ユノさんでも決められないんですね』
「まぁ、私も、途中で挫折しましたし」
『ネネさんも』
「目標が砕かれて、ただお金の為だけに就職しようとしてる最中でした」
『ネネさんの好きな事は何ですか?』
「遊園地です、遊園地に関わろうとして失敗しました」
『ネネさんでも失敗するんですか』
「はい、なのでまぁ、1から学び直すのもアリかと」
『はい、基礎は大事です、一緒に頑張りましょう』
「はい、宜しくお願いします」
ネネさんと一緒。
お友達と一緒に、学校に通える。
『私、夢にも思いませんでした』
「ネネ様と通われる事、でしょうか」
『はい、お友達と一緒に通えるだなんて、夢みたいです』
お2人が帰られた後も。
ヒナ様は、非常に落ち着きの無い素振りを見せている。
ご入浴を終えた後も、部屋の中をウロウロと。
コレは初めてです。
「緊張してらっしゃいますか」
『コレが、緊張』
「かも知れませんね」
『灰色兎、宥めて下さい』
《はい》
灰色兎は世話が上手い。
ヒナ様を抱き上げると、背中をトントンと優しく宥める。
いつもなら、直ぐにヒナ様は眠気を催すんですが。
今日は珍しく手を振り払い、話を聞けと言わんばかりに灰色兎の顔を持つと。
『お友達と学校に通うんです』
《そうなんですね》
そして直ぐに、灰色兎の首に抱き付き。
『はい、学校に通うのも楽しみなのに、もっと楽しみが増えました』
《良かったですね》
『はい、それに多分、緊張してるみたいです』
《ですね》
そうして再び灰色兎に向き合うと。
『興奮してきました』
《確かに昂ってらっしゃいますね》
暫しの沈黙の後。
『走り回りたいんですが』
《今日もかなり、走り回ってらっしゃったかと》
『凧揚げは凄いんですよ、何処までも遠くに行っちゃうんです』
《ヒナ様の腕が良いからですね》
『かも知れませんが、次は灰色兎とも競います』
《良いですよ、手加減しましょうか?》
『ダメです、勝負は真剣勝負です』
《では明日、早速競いましょうか》
『それと将棋崩しもです』
《アレはちょっと、体毛が不利なんですが》
『そこを何とかして頑張って下さい』
《では、対策を練りたいので今日は早く寝て下さい》
『寝れる気がしません』
《ですよね》
「では読み聞かせの練習はどうでしょう」
『あ、はい、練習台になって下さい』
《はい》
今日は、茨姫にしておきましょうか。
「お疲れ様でした」
《ココまで興奮するものですかね》
「ヒナ様は少し異端でらっしゃいますから」
人種は過保護の筈が。
ヒナ様の心象風景は、まるで荒野。
真っ暗闇に、すっかり干乾び地割れが起きている地。
僅かに枯れた雑草が数える程度。
ほぼ何も無い。
辛うじて、掌の大きさのオアシスが有るだけ。
小さな、見た目が良いだけのオアシス。
眺めるだけのオアシス。
風も何も無い。
残骸も瓦礫も、枯れ木すら無い。
《もう少し、魔獣や何かを》
「得る事を選ぶのも、ヒナ様ですから」
居心地は悪いワケでは無い。
ただ、本当に何も無い、辛うじて虚無では無いだけの空間。
こんな事は、滅多に無い。
いや、有り得るべきじゃない。
《この子は何なんだ》
「先代曰く、未成熟な星、だそうです」
星の子でも無い。
星屑でも無い、何か。
《はぁ、新たな杭か》
「かも知れませんね」
ネネちゃんが子供になって通う、とか言い出すとは本当に思わなかった。
《そこさ、教師で通うとか》
「微塵も考えてませんでしたね」
《何か、ネネちゃんの方が先生っぽいよ?》
「何でそうなります?」
《だって、大多数は、ココで教師として潜入を選びそうじゃん?》
「それでは結局は教師目線では」
《ほらそこ、先ずは目線を気にするじゃん?》
「気にしない方がおかしいのでは、童の時は童の如く、それを忘れてる方がどうかしてると思うんですが」
強い。
《コレで子供に興味が有ればなぁ》
「無いんですよね、全く」
《けど遊園地は好き》
「アレを子供の為だけの場所だと決め付ける方が、差別主義者だと思いますけどね」
《あぁ、アニメなんか子供の見るモノだー》
「うるせぇ、大人すら楽しめるアニメを知らないなら黙ってろブス、と兄が言ってました」
《結構、ハードなご夫婦?》
「あ、その言葉は画面に向かってです。ですけど多分、兄はサドでマゾなんだと思います、義姉を調伏させて楽しんでましたし」
《ちょうぶく?》
「魔を払い諫める、的な、はい」
《あぁ、って言うか何で子供が苦手なの?全然、そうは見えないんだけど》
「妹の同年代、ですね」
《あぁ》
「破かれたんですよ、学校行事で金賞を取って張り出されていた絵が」
《あぁ》
感情の起伏がそこまで表に出ない子で、怒ったりだとか泣く事があまり無かった。
それこそ平坦な子なのかと思ってたんですけど、その時だけはポロポロと泣いて、意味が分かんないと呟いた。
「そこで姉が意味を、理由を知りたいか訊ね、妹は頷いた」
なので先ずは何事も無かったかの様に学校へと通う、炙り出し作戦を呑ませました。
《炙り出し》
「学校の対応にも限界が有る事は既に熟知していましたから、学校には名乗り出る様に促す程度にし、コチラで対応する事にしたんです」
毎日、誰かが迎えに行く事も学校に呑ませました。
もし万が一にも、虐めが有って気付けず放置しては困るからと。
そして親は同級生の保護者に連絡し。
事情説明と再発防止の為にもと保護者会を要請し、外側からも炙った。
《ぉお》
「大人の本気って、意外と子供にも伝わるんだと学びましたね」
迎えに行く時は、妹に接する時だけ笑顔で、それ以降は無表情で居ろとの命令だったので。
この中に妹を虐めたヤツが居る、そう思いながら迎えに行っていたんですが。
出ました。
泣きながら謝って来た子が居たんですよ。
姉が名前とクラスを聞き出し、後で親に言う様にと告げたそうですが。
保護者会の直前になっても何もしなかったらしく。
同席していた妹が、その映像を流した。
《わぉ》
同席した親は、敢えて子供には触れず。
その親に疑問を投げかけた。
子が名乗り出れない程のご家庭なのでしょうか、と。
なまじ良い家の子供が通う場所です、親は至らなさを謝罪、学校側はなぁなぁにしようとした。
差し当たっては保護者は、秒で転校し終わらせ様としているのだろう、と。
ですが、それらは既にコチラは予測済み。
そこで親は言ったそうです、コレは、再発防止の為の会でも有る。
何故、どうしてこの様な事をしたのかを子供が正直に話す、そこで手打ちにすべきだろうと賛同を求めた。
多少なりとも良い家の者は、教育には熱心ですし、反面教師にしたがる。
そして嫉妬や妬みを正しく恐れる、それは内部告発に関しても。
要は、記事にしないでやるからこの場で連絡し自白させろ、そう迫ったんです。
「そして、保護者は連絡し、妹は真実を知りました」
私の方が上手いのに、金賞を取ったのが許せない。
それが張り出されていて不愉快だった、お母さんみたいに嫌いな人の紙を破っただけだ、と。
《あぁ、電話越しだから》
「面と向かって話せなくても、こうした時は話せる場合が有る事も、計算していたのだと思います」
子は親の背を見て育つ。
周囲の行動以外の見本は無いのに、どうしてか、子供が大人になった瞬間から親の責任が無いと言う方も居ますが。
言えませんよね。
ましてやココで、しかも保護者会では、ただの責任逃れになりますから。
《写真とかポスターを破いてたのかな?》
「その時はそうなのだろう、で、転校で手打ちとなったそうなんですが」
後に分かった事ですが、どうやら保護者の方は、選挙の貼り紙等もやってたらしいです。
《犯罪じゃん》
「ですね」
そして妹は謝罪を要求せず、代わりに自身の絵が張られていた場所に、その加害者の絵を張ってくれる様にと優しさを見せ。
その子が転校しようとも、1年間、心を癒す為にとその絵を張らせた。
《んー、お兄ちゃん?》
「ですね、ドSですから」
絶対に保身に走る学校に、期待なんかするから後手に回ってしまう。
今回、家族は上手く事をいなし、妹を回復させた。
そうした事を知っているのに、私は。
《ネネちゃん?》
「良い見本が居たのに、失敗しました」
《恋愛は別です》
「ふぇぃ」




