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196 待合室。

 中年の女と同郷らしきのは、来ないな。


 と言うか、だ。

 まさか、とは思うが。


《お前、シイラだろ》


 本当にシイラなら、誤魔化せない筈。


「何故、バレましたか」

《ヒナに似過ぎだ、喋り方が特に》


「トレースし過ぎでバレるとは」

《しかも外見も、何でヒナと玉響なんだよ》


「ダンダリオンやウチのに、大丈夫だと言われたので、はい」

《で、何でココに居るんだ》


「ヒナちゃんが、心配していたので、はい」


 俺の。

 俺の精神を心配してか。


《あぁ、すまん》

「いえ、コチラこそすみません」


《いや、だからその容姿を許可したんだろうな、敢えてバレる様に》

《ですね》


《シトリーか、ダンダリオンはどうしたんだ》

《あぁ、アレらを送りに行きました。はい、今回の試験は合格です、次の実技も頑張って下さいね》

「あの、当初の問題を解決出来ていないのでは」


《いや、あの場合は裁判になるだろうし、アレも含めての試験だったんだろ》

《はい》


「なんてややこしい試験」

《固定概念で被害者が傷付いては、元も子もないですから》

《だな》


「はぁ、大丈夫そうですし、次も頑張って下さい」

《おや、アナタ様も次の試験をお受け頂きますよ、ヒナ様からもご要望を頂いておりますから》

《だってお》


「言葉選びが、本当に最高ですね」

《だろ、言葉は商売道具だったからな》


「はぁ、そうですね」

《ではまた後日、失礼致しますね》

《あぁ》


「あぁって」

《大丈夫だ、ちゃんと話し合う》


「はぁ、怒られたくない」

《分かるぞ、俺もだ》


「レンズさんは怒られないでしょうよ」

《まぁな》


「ぅう」


《心配すんな、巻き込んだ責任は取る》


「本当に、お願いしますね」




 何か話す時点で、絶対に誤魔化せるだろう、とは思ってはいませんでしたが。

 バレるまでが計画だったとは、本当に、全く分かりませんでした。


『お帰りシイラ、さ、変身を解こうね』

「本当に、計画通りだったんですね」

『私は知りませんでした』

《だろうな。けどありがとう、心配してくれたんだよな》


『ですがお節介の領域だと思ったので、内密にお願いしました』

『けれど僕らはお節介だとは思わなかった、それに、良い機会だったからね』

「何の良い機会なんでしょうか」


『変身、姿を変える事』

『そのままでも構いません、良い配合だ、とネネさんも喜ぶと思います』

《そりゃ間違い無いな》

「いえ、容姿も個性は個性ですから、もう少し考えさせて下さい」


『うん、いつでも構わないよ』


 甘い雰囲気を出されましても。

 あんな試験の後に、肥溜めを見た後なので、凄く萎えたままなんですが。


《で、俺はどうだったんだ》

「あ、はい、何の問題も無いかと。ただ、私が短気を起こし、バレる切っ掛けを作ってしまいまして」


《いやアレで黙るのはシイラじゃないだろ》

「アレが私ですか」


《一部だがシイラらしさに溢れた展開だった》

『らしさについては未だ分かりませんが、私も疑問に思った事を言ってくれていました』

「見てたんですか」

『勿論』


「恥ずかしい」

『大丈夫、試験会場の中だけだよ』


「それ無関係に恥ずかしいんですが」

『何が恥ずかしいですか』


「イキがって、強がって、少し強めに言い負かす感じだったので。もし見られていると知っていたら、もう少し穏やかに、穏便に」

《いや無理だろ》

『だね』


「アナタまで」

『正義感が強い事を恥じているんだよ、それこそ出しゃばりだ、お前の方が間違いだと酷い目に遭ってきたからね』


『なのに、言えますか』

『言わないと収まらないのが正義感、言わないでも良い、そう流せる者は永遠に主人公にはなれないんだよ』

「別に主人公になりたくないんですが」

《いや、それ、俺の事だな》


『そうだね、とても面白いやり取りだったから、悪魔達にも大人気だよ』


《恥ずかしい》

『何が有りましたか、見られていると恥ずかしいですか』


《クソしてる時は密室だろ、その大前提でイキってたからな》

「ですね」


 何ですか、この恥ずかしい仲間は。

 いえ、仲間は流石に烏滸がましいのでは。


 でも、どう言えば。


『シイラ、何を考えているのかな』

『レンズ、何が有りましたか』


《譲る》


「恥ずかしい仲間だな、と思ったんですけど。仲間は流石に、烏滸がましいかな、と」

《いや正解で良いだろ》


「けど、友達って何処から、知人や知り合いの境って何ですかって思いませんか」

《互いに心を許し合い、対等に関わる、共に遊び話す親しい間柄。知人や知り合いも似た様なもんだが、気が合う度合い次第だと思ってる》


「流石」

《いや、俺には、俺的には友人は殆ど居ないと思ってた》


「孤高か」

《まぁ、らしい。仕事仲間だとか、同級生だとか、そう関わりに線引きをしてたんだ》


「友人が居ない仲間」

《別に、いや、年齢差が厳しいか》


「あぁ、オジサンでしたしね」

《そうなると年甲斐も無く、とかなるんだよな》


「この外見で老年の悩み、慣れて無いと舐められそうですよね」

《そこは敢えて活かすつもりだ》


「結構、攻撃的」

《カウンターは防御の範囲だろ》


「蜜の匂いを漂わせてぶん殴るとか、食虫植物も驚きの挙動かと」

《害虫用だ、仕方無い》


「まぁ、ですね」


『レンズ、良いですか、質問が有ります』

《あぁ、おう》


『私とアンバーやヴァイオレットは、対等が難しい気がします』

《あぁ、それは寧ろ相手の問題だろうな。敬いながらも、敢えて対等を選ぶ、コレは結構高等な技術だ》

「ですね、何処までなら失礼にはならないか、その見極めや加減は私でも未だ難しいです」


『レンズには出来ていると思います』

《だな》


「それは、その、強めに殴っても大丈夫だと確認が取れたのと。レンズさんは誤解しない、そうした安心感や、嫌われても構わない精神。ですかね」

《感想は上手いのに、説明が下手って言うか、苦手意識が有るんだよな》


「出た、マンスプレイニング」

《ウーマンスプレイニング》


「理不尽が理不尽を生む世界」

《本当、それな》




 シイラとネネさんは似ています。

 ネネさんとレンズとは違います、でも似ています。


『仲が良いです、気が合うのは確かです』

《らしい、けどシイラは、納得が難しいか》


「多分、理想のお兄ちゃんなので、コレは甘えに近いのだと思います」

《自信が無い、自分に厳しい、自己評価は低いが正当だと思ってる》


「合いの手ですか」

《相槌相槌》


「2回言うとか信用ならない」

《はいはい》


 言葉のやり取りの仕方が、少し違います。

 レンズが嬉しそうに笑っています、楽しんでいる気がします。


『仲が良いです、気が合ってます、私もこうなりたいです』

『コレは見て聞いて、経験し、蓄えとシミュレーションが必要だよ』


『もっとやって下さいシイラ』

《おま、呼び捨てか》


『レンズも言ってます』

「構いませんよ、気軽は身近、かと」


《まぁ、良いなら良いが、出来るなら年上は敬って欲しいんだが》


「そこから、ですかね、ヒナちゃんが対等を学ぶ良い機会かと」

《出た、それ、どちらかと言えば自己犠牲寄りだからな》


「あー、価値が低いですからね」

《爆上げしろ爆上げ》


「人生エンハラ」

《エンジョイハラスメントな》

『エンジョイハラスメントって何ですか』


《仕事、楽しいだろ、楽しいよな?って言うハラスメント、嫌がらせの事だな》

「相手が嫌だと思ったら、どんなに善意だろうと全てハラスメントとなります」


《妊娠が分かったら直ぐに言ってくれ、直ぐに対処するから》

「はいマタニティハラスメント、マタハラです」


『何でですか』

《嫌だったから》


 向こうには、そこまで妖精種は居ない筈です。

 察するのが難しいなら、どう、するのでしょうか。


『関わりが、持てないのでは』

《おう、けど好感度が高い相手からなら、同じ事されても不快じゃないからハラスメントじゃない》

「しかも、好感度が高いかどうか、実際は分からない」


『理不尽が理不尽を生む、ですか』

《だな》

「ですね」


『シイラが遠慮している理由が、少し分かった気がします』


 だから、お母さんも関わらないのが当たり前になったんでしょうか。


《まぁ、明らかに過度だ、明らかに嫌がらせにしか思えない。第三者からそう判定される領域で、且つ明らかに不利益を強要された場合、だからな》

「ヌーハラ」


《あぁ、ヌードルハラスメント、啜る音が不快だからハラスメントだ》

「全世界規模では啜るの者は少数ですが、正直、文化だと思います」


《だよな、落語にも有るんだし、明らかに文化侵略だよな》

「ですよね、近世まで手掴みで食事をしていたので、粗野で野蛮だったからマナー本が出たクセに。既に箸で食べていた我々の、他人の文化の否定ですからね」


《アレな、マナーらしいマナーが遥かに遅れてた分際でな》

「あぁ、お爺ちゃんぽい」

『ネネさんと似てるけど違います、何ですかコレは』


《コレ、ツッコミに近いのかもな》

「あー、はい、かもですね」

『ツッコミ、漫才ですか』


《おう、けど偶に、ボケがいきなり逆転する。しかも、その匙加減はシイラ次第だ》

「なん、私、ボケた事は無い筈ですが」


《天然》


 シイラはヴェールをしているので、口元しか分かりませんが。

 何を言おうか迷っているみたいに、口を窄めたり、手をワキワキ動かしています。


「私、何か、バカな事を」

《ヒナ、コレが真の天然だ、良く覚えておくように》

『はい分かりました』


 天然とは、独特の考えや発想を持っている者を示す言葉。

 シイラは天然なので、もしかしてネネさんと似ているけど違う、なのかも知れません。


「ウ〇コ」

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