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190 過保護。2

「いやー、凄い発狂だったねぇ」

「あ、すみません」


「いやいや、あの悪しき見本の方だよ」

《完璧に煽ってたな》

「すみません、つい、冷静になろうとするとあぁなっちゃって」


《マジか》

「本当、煽る気は無かったんですけど、はい」

『客観的に言うと煽りになりますか、私も五月蠅いと思いましたし、同じ事を思いました』

『まぁ、つまりは素直な感想なワケだね』


『素直な感想は煽りになりますか』

《時と事情によるが、少なくとも、アレは煽りだ》

「じゃあ煽らない言葉を宜しく」

「はい、宜しくお願いします」


《いや、煽るのは必ずしも悪じゃないからな》

「果たして、本当にそうでしょうか」

「そうそう、詳しく頼むよレンズ君」

『ほれほれ、そう煽って熱を出されたら困るだろうに』

『それは困ります』


「仕方無い、今日はヒナちゃんに免じて。あ、シュークリーム食べに行こう、新作が出たんだって」

『レンズ、大丈夫ですか』


《シュークリームを食えば平気かも知れない》

『では行きましょう』


《おう、行くだろシイラも》


 正直、恥ずかしくて埋まりたい。

 直ぐにも帰りたい。


『シイラの事をもっと聞かせて欲しいです』


「だね、毒親にならない方法も、アレは本気で怖かったし」

「マリーさんは大丈夫かと、大概の毒親は綺麗事を言いますし、感情的でしたから」


『毒親とは何ですか』

《シュークリーム食ってからだ、何だよ、目立ったのがそんなに嫌か?》

「アナタとは違うんです、穴に埋まりたい、恥ずかしい」


『何故ですか、間違った事は言っていなかった筈です』

「だねぇ」

『けど、でも、だ』


「はぃ、最初は指名される前に発言したり、いきなり喧嘩腰でしたし」

「いやアレは、それこそ当事者なら許せないって」

《そうそう、過保護も虐待だ虐待》

『はい、クラスの子が過保護で逃げ出しました』

『はいはい。さ、サレオスに構われたくないなら、付いて行く方が賢いと思うけれどねぇ』


 このままなら、確実に構われる。


「では、お言葉に甘えて」

「よーし、新作へゴー」

『ゴー』


 少し気を紛らわしましょう。

 新作。


 シュークリームの新作。




「うん、美味しい」

『はい、美味しいです』


《まさかシューアイスとはな》

「はい、ですよね、何味なのかと思ってました」

「でしょー?」

『はい、ストロベリークリームはケーキです』


「だよねぇ、はい、新作のラベンダーアイス」


『臭くないです』

《ラベンダー畑に行った時、本気で固まってたもんな》


『アレは臭かったです、でも薄めると臭くない』

「匂いの不思議だよねぇ、薄いと臭くないのに、濃いと臭い」


『はい、凄く臭かったです』

「なのに味見出来たんですね、凄い」


『好奇心は旺盛な方だと思います』

《だな》


『はい、なので質問です』

《おう、何だ》


『私のお母さんに感情は無かったと思います、どちらでしょうか』


 レンズが考え込んでいます。

 毒親と判断する事は、そこまで難しい事なのでしょうか。


「んー、どうだろうねぇ。それこそ向こうだと拉致監禁とか、親が脅されたから結婚した、って言うのも有るからねぇ」

『御伽噺みたいな事が有りますか』

「ですね、逆にどうしたら良いか分からなくて、産んだ後にゴミ箱に捨てる場合も有ります」

《有ったな、空き地に半身埋めたり、コインロッカーに遺棄したり》

『まぁ、大概は知能に若干の問題が有るが、そこまで低くも無い子達だ。どれ、私のを食べてみるかい、ティラミスだよ』


 何事も試してみないと分かりません。

 ティラミスは少し苦くて苦手ですが、コレはティラミスのアイスです。


『はい』

『苦く無いだろう』


『はい、美味しいです、また食べたいと思えます。向こうはどうしてそうなりますか』

『文明が発達し数が増えたからだよ、教育が均等に行われ、先ずは基準に合わない者を新たな教育法で生かし、社会の枠組みに入れた。だが白と黒の間には、必ず灰色が存在する、そして灰色の存在が増え目立つ様になった』

《境界知能。要は二極化の負の面だ、出来るか出来無いか、学歴か芸術的才能のみが評価された結果。一種の中間層、どちらでも無い者の問題が、良く目に付くようになった。だと思うが、どうだろうか》


『まぁ、そうだね、様々な者への評価が様々な部分から沸き立ち。排除か分類か、そこで分類を始めた。人は謎には耐えられない、それらを解明しなくては、その存在に異物感を感じ排除するしか無くなってしまう。分類し、納める事で、その存在の一端を把握し容認する』


《虐めと同じだな、自分の知らない存在だから、居心地が悪いから排除しようとする》

「私は実家が村八分になりかけて、それだけしか経験が無いんだけど。まぁ、そうだろうなと思う、他と違う事を私がしちゃったから」


《アレは間違いじゃないけどな》

「それこそ、けど、でもだよ。正しかろうと間違いだろうと、大多数と違ったら、排除が基本だから」

『真っ白い羊の中、1匹の黒い子羊。目立つ事は獣に襲われ易くなる、集団が脅かされる事になる』


「オタクも、そうした歴史が有るかと」

《だな、目立ち、排除か分類かの岐路に立たされた。そして浸透し、そうした分類、集団の1つとして認められた》

『認められた、と言う事は、安全性が確認された。そう言う事だね』


『個性はいけない事ですか』

『獣の中なら、だね。人には文明文化が有る、余裕が有るなら多様性を受け入れる、それこそが生物学的に生き残りを増やす事になる』

《だが、順応には時間が掛かる。個々人の順応性、更には集団の順応性、発見され受け入れるには時間が掛かる》


「だねぇ、赤ちゃんポストだって、全地域に有るワケじゃなかったから。だから、育てるのが偉い、そうなるのも分かるんだけど。じゃあ、ある程度大きくなったら施設に預けて、後は死んだ事にすれば良いじゃないって思ったんだけど。何でだろ?」


《やっぱり、トロフィーだからだろうな、それと支配欲。大変ね、偉いわね、居ないと褒めて貰えないだろ》

「だと思います、コレだけ苦労してるんだ、って。根も葉も無い事を言われてたみたいでしたから」

『何を言われていましたか』


「料理を教えるにも大変だった、素直じゃなくて我儘で、どうにかあそこまで躾けた」

《保身だろうな、何か不出来な事が有ったら子供のせいにする為、擁護して貰う為の嘘》


「どうして嘘って言えますか」

《素直だろ》

「うん、それは間違い無いと思う。素直さって評価が難しい事だけど、曲解しないって、もう素直だよ」


「でも、凄い疑いますし、質問が多いですし」

「それも素直だから、嫌な事を学習したから疑う、間違いだと思ったから素直に尋ねるだけでしょ?」

《曲解するヤツの殆どが自己完結型だからな、〇〇だろう、そう勝手に当て嵌めて終わり。だから疑問を抱かないし、質問なんか出ない、コレはマジで断言する。ヒナは素直だろ?》


「まぁ、ヒナちゃんはそうですが」

『シイラも素直だと思います』

《ほらな》


「一旦、受け取っておきます」

《おう》

『毒親は何ですか』

「あー、そうだったそうだった。ざっと言うと、毒にしかならない親。薬にしかならない親、なんてのは流石に居ない、相性が有るからね。けど、毒にしかならない親が居る、だから毒親」


『私の親は毒親ですか』

「良く知らないけど、だと思うよ。リク君居るでしょ、それにシイラさんも、接してると少し違う」


『はい、違います』

「あ、良い意味でね。普通の、一般的な親元で育つと、大概は平凡で平均的な反応が多い。けど、それこそ端々を見てると、子供こそ良く分かる。良く怒鳴られてる子は動揺や怯えが多いし、過保護な子は出来無い事が多いから癇癪を起こす、けど過干渉な子は出来無くてもしたがる」


『過保護や過干渉は、甘やかされるとは違いますか』

「似てるけど違うねぇ。甘やかすって、練習を少し先延ばしにしちゃう事だけど、過干渉や過保護は永遠に練習すらさせない事が殆ど。だと思う」

《折角のトロフィーだからな、手放さない、代理ミュンヒハウゼンと似た様なものだろ》

「あぁ、成程、確かに」


『だね、親を満足させる為に不足を与え、取り上げる非道な行い。対する甘やかしは、少しなら許される事、それこそ親だって感情が有るからだ。家族には辛い思いをして欲しくない、だからこそ、つい先んじちまう』

「もー、そこが我慢、苦労だと思うんですけど。正直、我慢しきれて無かったんだろうなと思いますよ」


『そうさね、結局は親の都合。それを苦労なんて言われたんじゃ、本物の親としては、憤りしか無かったろうよ』

「本当、本物の親だ、とは言い切りませんが。自分の苦労は自分のモノ、なのに苦労したした言うなら、それは単に個人の未熟さ。そうやって親の苦労を子に押し付けてたら、永遠に、全員が必ず一律で不幸を背負い続ける事になるのに」

《だよな、苦労して育てたんだから、お前も苦労しろは違う》


『では、それを避けるにはどうすべきなんでしょうか』

「コレはお仕事でも何でも一緒、自分が苦労してきたから、後代に苦労させない為に改良して改善する。井戸が無いなら井戸を残す、井戸が壊れそうなら修理や補修をする、更に強化し便利を残すのが文明人だと思う」

《だな、何で向こうは飢饉が続いてると思う、その代の自分達だけの事しか考えられないからだ》

「井戸を汲むポンプを設置します、ポンプがお金になるので売ります、井戸はまた力仕事に戻ります」


『教育は大事です』

《だよな》


『何で、擁護しようと思いますか』

《言う割に、ちゃんと出来て無い。だから擁護する、まるで自分が非難されてる様に思えるから、他人のフリをして守ろうとする》

『そうだね。批判されたくないなら、笑い者にされたくないなら、賢く生き賢く躾けるべきだった。正解は無くとも、確かに答えは出る、育てた通りの答えがね』


『サイコパスでもですか』

《あぁ、研究者が自分でサイコパスだと気付いた、けど平均的で一般的な生活が送れてた》

「まぁ、大学教授が一般的だと言われると、平均が爆上がりな気もしますが。ですね、ご結婚なさって、画像診断を受けるまで分からなかったそうですから」

『まぁ、教育の賜物さね』

「よし、頑張ろう」


 まだまだ、謎がいっぱいですが。

 納得は得られました。


 そして、もうお昼寝の時間です。

 眠いです、レンズに抱っこして帰って貰います。


『抱っこを要求します』

《おう》

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