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188 今の学園。

『私のクラスには、敢えて耳が聞こえないままにしている子が居ます。治すと音がいっぱいになり、頭が痛くなるからです。なので初日に手で合図をしてくれました、こうとか、こうです』


 俺が初日の話を聞く前に知恵熱を出したせいで、長い間、我慢させたんだよな。


《そうか、けど俺の身の回りには居なかったんだよな。前の学校と比べて、どんな違いが有るんだ》

『声掛けに反応しない場合は肩を叩きます、後ろからだとビックリするので、出来るなら正面に近い状態を選びます』


《成程、色々と皆で工夫してるんだな》

『はい、耳栓をして音楽を体で聴きました、聞こえなくても分かると体験しました』


《そうか、俺も少し体験してみたいが、どんな風にしたんだ?》

『コップを持ったり、大きな魚の浮き袋も使いました、それと最後に音楽の先生がグラスを声で割りました。音楽の先生は(ヒト)種で、セイレーンやハーピーの血は入っていません、クラスの子が嗅いで確認しました』


《おぉ、けど、そう言うのは入学初日にやるもんじゃないのか?》

『私とその子の為に皆が教えてくれました、それから初日から増えた約束事も教えてくれました、なのでレンズの耳が遠くなっても大丈夫』


《そっか、ありがとう》

『ですが、問題も有ります』


 この切り替えの仕方。

 何処で覚えて来たんだ本当。


《そうか、どんな問題だ》


『本当に大丈夫ですか』

《大丈夫だ、だがもしダメなら、途中で止める》


『分かりました、自分から養護施設に行きました』

《あぁ、親と合わないかったか》


『だそうです、とても過保護で嫌なんだそうです』


《成程、俺達には良く分からない事だな》

『はい、ですが良くない事は分かります。本来は親の方が早く死にます、なので出来るだけ自分で何でも出来る様にさせる、アンバーのご両親も歯医者のマリーもそう言っていました』


《だな、けど過保護に育てる謎、か》

『はい、とても気になります』


 以前とは違い、問題の外周から模索し始めた。

 正直、俺も過保護にしたいはしたいが。


《よし、マリー達に尋ねに行くか》

『はい』




 ヒナの勘的には今日は医院だろう、と向かったんだが。


『退いて!』

「無理です」


《大丈夫か先生》

「あー」

『ちょっと!部外者は引っ込んでて頂戴!!』

「まぁまぁ、奥さん、少しだけ落ち着きましょう」


『嫌よ!あの子に合わせて頂戴!!』


 正直、知り合いの手助けが出来るのは有り難いし、良いタイミングだとは思うが。


《はぁ、タイミングが良過ぎだろ》

『何よアンタ!!』


《俺は》

『もしかてアナタは、リト君のお母さんですか』


『アナタ、あの子の何なのよ!!』


 あぁ、コレはヤバい系か。


「奥さん、このままだと、ね?」

『何よ!味方になってくれるって言ったじゃない!!』


「私は味方よ」

『なら邪魔しないでよ!!』


「邪魔はしてないわ、アナタが子供に会える様に手助けをしてるの。このままじゃ、アナタ、本当に全く会えなくなるわよ?」


『けど』

「無事かどうか、一目見たいのよね」


『お願い、あの子に会わせて』

「この方はね、国の言う事を聞く他に無いの。アナタに会わせたら、この方が困る事になる、そしてアナタは更に会う事が難しくなってしまうの」


『でも、私、あの子を傷付けて無いのに』

「分かるわ、愛してるのよね、けれど国が決めた事。だからアナタの事を認めて貰う為に、今日は我慢して、帰りましょう」


『でも』

「大丈夫。アナタが認めて貰えたら、幾らでも、好きなだけ会えるわ。誤解は解いて貰う、それさえすれば終わる事なのだから」


「はい。お会いさせる事は無理ですが、歯茎が少し腫れている程度で、何も問題は有りませんから大丈夫ですよ」


『あの子』

「薬湯を飲ませる程でも無いですが、ご心配でしたら、お母さんのオススメの薬湯を薬師に掛け合いますよ」

「良いわね、そうしましょう。認めて貰う為にも、ね?」


『はい』


 コレが立ち合い人か。


「はぁ~」

《お疲れ様、先生》


「本当、あのパターンは初めてだから、どうしたら良いか分からなかったんだよね」

《あぁ、アレは多分、子を異性と思ってるタイプだろうな》

『居ますか』


《おう、夫に構われないか、寧ろ酷い扱いだから逃げ場にする。言い訳にも使えるからな、あの子が~、ってな》

「で、過保護かぁ」

『血の繋がった、しかも弱い立場の者です、どうすれば異性として見れますか』


《小さな恋人、って呼んで。まぁ、代替行為だろうな、夫への不満や父親に満たされなかった欲求不満の捌け口》


『レンズはレンズですが』

《だよなぁ》

「あ~、自他境界がボヤけてるのかもね、だから自己愛も含みそう」


《だな、子は分身、それこそ自分のコピーだと思い込む場合が有る》


『何故ですか、違う生き物ですよ』

「向こうは人種しか居ないから」


『でもレンズはガンケナーの血が少し入ってます』

「あぁ、混ざり合った最終形態派ね~、分かるー」

《有るのか、それ》


「あるある、向こうを研究する学者も当然居るからね。混ざり合って、因子が淘汰されて、結果としてほぼ違う存在が出来上がったって派だね」

『そんなに違いますか』


「まだ、匂いの判別だとか、それこそ血の味の違いだけだけど。全然、違うらしいよ」

《なのに、同じ姿形なんだよな》


「そこは分岐世界派、なんだけど、入ろうか」

《すまん、仕事中だったよな》


「いえいえ、もう終わって、とっくに帰ってるから」

『早退してました、奥歯の奥が痛いって言ってました』


「そうそう、親知らずがね。だから久し振りに切開して、骨を割って引っこ抜いたよ」


『凄く痛そうですが』

《まぁ、アレには言えないしな》

「ね、さ、おいでおいで」


『はい、お邪魔します』


 で、茶を出して貰ったんだが。

 もう、ソファーに崩れて。


 そりゃ疲れるよな、しかも慣れてない相手なら、余計にだ。


「あぁ、本当にビックリした」

『何も知らされてませんでしたか』


「ううん、付き添いの方に事情を説明して貰ったし、書類にも書いては有ったんだけど。過保護による保護、だけで、イマイチ想像出来て無かったんだよねぇ」


『珍しいですか』

「だねぇ、ココは基本的には自立させてナンボ、だからねぇ」


 だよな。

 なのにアレは。


『もしかして星屑でしょうか』

「あの感じだとそれっぽいけど、庶民は、それこそ私とかは確認が出来無いから」


『シトリー、アレは星屑ですか』

《はい、そうですよ》


 もう、古い世代が言うパソコンのイルカみたいだな。


『何故放置していましたか』

《正解には星屑となった、確かに願望は抱えていましたが、問題は起こさなかった》

《あぁ、妄想だけ、なら自由だからな》


《はい、ですが行き過ぎてしまった》

《良く、アレと結婚したのが居たな》


《いいえ、それに彼女はサキュバス、ですから》

《あぁ》

『何故、過保護になりますか、まだ良く分かりません』


《であれば、オリアスが最適かと》

「おぉ、育児本の最終監督様ですか」

『そうだねぇ』


「わぁ、ありがとうございます、本当に助かりました」

『いやいや、ただ監督しただけさね』


「ですが綺麗事が無くて助かりました」

『もっと言うとだ、もうココには来ない魂の代理だよ』


「あぁ、じゃあその方にお供え物しないと」

『やっぱり、おはぎだね』


「成程、その世代の方でしたか」

『そうだねぇ』

《慣れてるなおい》


「いや、シトリー騎士爵の時点で驚きでしたけど、感謝が強いですから」

『ふふふ、で、聞きたい事が有るんだろう』

『はい、何故過保護にしますか』


『答えを教える事は簡単だ、けれどね、実感が伴わなきゃ話半分で終わっちまう』

《出来るなら、アレは衝撃が強過ぎると思うんだが》


『そうだねぇ、少し別のにしようかね』

『計画しましたか』


『いや、けれど種は、常に保管してあるよ』

『免疫の為に』


『あぁ、じゃあ行こうか』

「あ、私も良いですか」


『どうだい』

『はい、どうぞ』

「ありがとうございます」

《マジか》


「人生、何事も勉強ですよ、勉強」

ガンケナー、って他にも何処かに記載した筈が、見当たらないので。

表記を揃えたいのですが、間違いでは無いです。

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