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171 運命の人。2

 ネネさんに代わって私がお話をする事になりました。

 でも、まだチクチクしてます。


『ネネさんが好きですか』


『うん、結構、意外と好きだった気持ちが再燃した感じだね』

『好きってなんですか』


『音一さんには、一緒に居たい、遊んだり家でゆっくりしたい。ずっと一緒に居たい、喜ばせたり慰めたい感じかな』


『お友達とどう違うのでしょう』


『僕が1番、親しくなりたいし、好かれたいね』

『ネネさんの何を知っていますか』


『子供の頃は見た目だけ、大人しそうで控え目で、けど芯が強そうだなって感じだったけど。実際話してみて、やっぱり、やっぱり好きだなって感じかな』


『もう手に入らないと気付いている筈です、ネネさんには既に2人の婚約者が居ます』


『2人』

『はい、しかも王子様です、ココや向こうのアナタより遥かに持っています』


『そう』




 期待も何もかもを、バッキバキに折ったな。

 しかも、事実を告げただけで、ココまで落ち込まれるとは思ってもいなかった。


《ヒナ》

『レンズ、どうしましたか』


《交代だ》


『はい、宜しくお願いします』

《おう、ネネと休憩してこい》


『はい』


 一連の流れを見守らせて貰ったが、本当にモテるなネネは。


『あの』

《ネネの叔父みたいなもんだ、それとヒナの兄》


『あぁ、どうも』

《俺はどちらかと言うと持って無い方だった、しかも失敗もした、君はどうだった》


『恥ずかしいですね、凄く恥ずかしい』

《だろうな、結構自信が垣間見えてた》


『ですよね、本当っ、恥ずかしい』


 何処かに自信が有った。

 引き戻せるんじゃないか、取り戻せるんじゃないか。


 けど王子様はな、本当に太刀打ち出来る気がしない。

 しかも2人だろ、壁が厚過ぎる。


《まぁ、向こうで頑張れ》


『僕には悪くない世界でも、ネネちゃんにはどうしようも無い世界なんですよね』


《ヒナはな、ネグレクトから餓死したかも知れないんだ》


『それは』

《だからか悪魔に食われて同化し、悪魔と人の混ざりになった、だからこそ辛うじて保ててるとも言える。魔法が有ってもココは完全じゃない、けど少なくとも向こうよりは、誠実で真面目な者程報われる世界なんだ》


『だから、僕は居られないんですかね』

《いや、居ようと思えば居られるとは思うが、向こうに未練が少しでも有るなら止めた方が良い。ネネは事実の羅列だけで収めたが、実際は、もっと悲惨だからな》


『浮気、だけじゃないんですね』

《浮気して別れた後、惜しくなったのか復縁を迫った、散々に酷い事を言った後にも拘らずだ。しかも周囲は許せだ気にし過ぎだ、ネネを散々に傷付けた、仕事も独り暮らしも投げ出す程に》


『そこまで』

《君は多分、それなりに人にも恵まれ、幸運だと思う。けれど、ネネの周囲はそうじゃなかった、そこに戻すだけの利が有るのか俺に教えてくれ。夫婦となり子が出来たら、本気で、綺麗事だけじゃ済まなくなる》


 俺も、何年も掛けて散々考えた。

 どうすれば、ネネを得て最も幸福な道筋になるか。


 けど、無理だった。

 俺は向こうじゃネネを守れない。


『何か、言えてれば、変わってたかも知れない』

《どうだろうな、コレの前にも来てるんだよ、件の初恋の男も》


『えっ』

《けど認知の歪みで、もう壊れてたんだ。自己認識の歪み、嘘や誤魔化しが、もう使い分けられない程になってた。そいつも最後は悔いてたらしい、謝れれば、言えてれば良かったって》


『言えてたら』


《だが、言えなかった。だから俺達は主人公じゃないんだよ、言えてたら、何か出来てたらこんな後悔はしなかった。言えるヤツは幼かろうが何だろうが言える、出来る、動ける。例え今言えても、またいつか同じ状況になった時、言えると思う根拠は何だ》


 あぁ、フォローするつもりだったんだがな。


『信頼が、無いんですもんね、何も出来無かった実績が有る』

《俺に責める気は無いんだが、すまん、少しキツく言い過ぎた》


『好きなんですよね、ネネちゃんの事』


《勘が良いなら、ココでもやっていけるかもな》

『いえ、多分、ネネちゃんの事だけで残る事になる。それでもし後悔したら、多分、八つ当たりをするかも知れませから』


《そこまで頭が良いなら、きっと向こうでも大丈夫だろ》

『僕の為にも、助言してくれてるんですよね。すみませんガキで、申し訳無いです』


 良いヤツなのにな。

 だからこそ、悔しい面も有るんだよな。


《君が動いてくれてたならな、そしたら違ったかも知れない》


『凄いダメージなんですけど』

《俺はかなり遅れて出会って、しかもこのまま、ココに残るんだ。八つ当たりされろよ、俺はアイツが死ぬまで見守る気だ、他にもアイツを好いてるヤツらが居る》


 王子様だけじゃない、魔獣もだ。

 俺はもう、番付表の外なんだ、君には万が一にも勝ち目は無い。


『悔しいけど、戻ります』

《おう》


『けど、何か残したいと思うのは、無理な事ですかね』


《いや、多分、対価次第だろうな》




 彼は、大志君は去りました。

 ですが、妖精と不思議な縁を残してくれました。


「僕はこの瞳で嘘をつく」

《ケイ、PCDA-00257、再生》

『僕はこの瞳で嘘をつく、再生します』


 曲名を言うと、製品番号を妖精が教え、人種の子が楽器を演奏しながら歌う。

 それは完璧に歌唱し、楽器を奏でる。


 例えピアノだろうとも、ギターだろうとも、アレンジせず完璧に歌い奏でる。


「ありがとうございました」

《いえいえ、やっとこの子の良さを分かってくれる者に会えたのだもの、コチラこそよ。ケイ、休憩、飲み物かトイレ》

『飲み物を飲みます』


《そうね、飲み物を飲みましょう》

『はい、飲みます』


 養護院で眠っていた才能。

 大志君が残してくれた恩恵、謝罪の意。

 

 多分、本当に好きでいてくれたのだとは思いますが。

 もう婚約してますし、残ってもコチラが罪悪感を背負う事になる。


 ココに残してしまったのだ、と。


《お、休憩か》

《本当に、人って音楽が好きね》


《おう、何を歌ったんだ》

《僕はこの瞳で嘘をつく》


《また、渋いのを》

「アレは真似しようとしてもそう出来無いですからね、あのうねりだとか、歌唱法は本当に凄いんですから。なのに完璧なんですよ、シャウトも完璧に歌える、本当に凄いんですからね」


《音楽オタクには最高の贈り物だな》


「あぁ、音楽オタク、なんですかね」

《アレンジする時点で、相当だと思うけどな》

《そうよ、アナタも中々よ、ケイも私も楽譜は書けないんだもの》


「でもケイ君が居るからこそ、また、やってみようかなと」

《お陰で俺が王子様に怒られそうだけどな》

《ふふふ、男って本当に、独占欲が強いわよね》


 今居る怠惰国ではルーイ達は不在な為、ちょくちょく来ている事、それと私にやりたい事が増えてしまった事で。

 はい、多分、何かしら拗ねられるかとは思いますが。


 レンズとも何も無いんですし、そこは安心して欲しいんですが。

 どうやら、難しいらしく。


「ですね、頑張って下さいレンズ」

《おう》

《ケイ、おトイレに行こうか》

『いいえ、溜まってません』


《そうか、じゃあ俺も良いか?》

《しょうがないわね、何が聞きたいのかしら》


《同じのだな、聞きたくなった》

《ケイ、PCDA-00257、再生》

『僕はこの瞳で嘘をつく、再生します』


 あやふやだった譜面が、ハッキリと分かる様になる。

 そして、コチラで出来るアレンジも、どうしても浮かんでしまう。


 ありがとう大志君、大事にします。




『記憶は、残って無さそうです』


《そうか》

『レンズも後悔してますか』


《少しな、もう少し優しく言ってやれば良かったと思ってる》

『私は、濁すべきだったか迷っています』


《いや、アレで良かったんだ、期待を長引かせる意味が無い》


『ですが、傷付いていました』

《それは事実に対してだ、ヒナのせいでも何でも無い。俺のは経験値からだ、ヒナは経験値が少ない、アレで問題無かった》


『経験を積めば、傷は浅く出来たでしょうか』


《どうだろうな、結構好きだったらしいんだ、かなり難しいかも知れないな》


 私へのお礼も有るからと、妖精と人種を贈り物にくれました。

 3分の寿命を対価にして、私に向こうの音楽をくれました。


『3分は、短くて長いと思います』

《あぁ、だな、だから大切にしよう》


『はい』


 不死は寿命を対価には出来ません。

 寿命が有るからこそ、短いからこそ、更に価値を発揮します。


 彼は、老衰を迎える事は出来ません。


《幸せを、祈っておこう》

『はい』


 ネネさんを大切に思う者をココに置く事も検討しましたが。

 ネネさんは、きっと喜びません。


 幸せは、難しい事です。


《夏休みの計画はどうなった》


『完成したら見せます』

《おう》


 普通の夏休みを計画する為、私は明日、学園へ向かいます。

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