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167 姫サーの姫。1

 本日はジュリアさん、クラムさんに妙さん。

 そしてレンズと5人で、初めてお茶をしました。


 名目は、レンズの魔道具のお披露目、なんですが。


《何でチョーカーなの》

「ですよね」

「そう?お洒落じゃない?」

『ちょっと、逆に古い気がしますけどね?』

《古いか》


「そこで落ち込みますか」

「大丈夫よレンズさん、ほら、若い子は見慣れないだけで」

『あ、いや、見慣れないだけかもですはい』

《首輪付きに舐められる様にと、良い案だと思ったんだがな》


「あぁ」

《ならまぁ、アリかな》

「ほら」

『そんなに年を気にします?』

《まぁ、中身はもう高齢者だったからな》


「まぁ、見えない」

「もう、ネネさん、ふふふ」

《気にし過ぎ、色んな意味でそう見えないし》

『それはそう』


 見慣れないけれど、似合う事が逆に違和感なのだろう、そう思っていた時。

 それは突然訪れました。


《“あの~、同じ国の方、ですよね?”》


 誰の運が引き寄せたのか、凄い強烈な方が突然乱入して来ました。


 最初、私達女性陣は白を切るつもりでしたが。

 如何せん、私の顔を見て言って来たので、仕方無しに返事をする事に。


「“はい、多分”」

《“良かったぁ~、卒業したばかりなんですけど、皆さんもう既に働いてらっしゃるんですかね~?”》


 全員から、彼女の様な人物が苦手だ、との雰囲気を出していたのですが。

 レンズ、助けてくれないとヒナちゃんに言い付けますよ。


《“すまないが、今日は少し大事な用事で集まっ”》

《“え~、良いじゃないですか~、仲間なんですし~”》


 誰が仲間だ。

 単なる同郷でしょうに。


 あぁ、レンズですら苦手なんですね。


「あ、確か用事が、有りましたよね?」

「あの、はい、すみません。どうぞ、もう私達は帰る時間なので」

『“わはこのままで大丈夫だはんで、気にしなが”』


《“えっ?”》


 少なくとも、東方の方では無いんですね。


「“おい達の事ば気にすな、おけらし”」


 しかも、九州の方でも無い。

 成程。


「あの、では、失礼しますね」

《じゃあ私も、またね》

「はい」


 はい、レンズと妙さんと3人で抑え込みます。

 どうかご無事で。


《“あの~、お3人って、何処で働いてらっしゃるんですかぁ~?”》


 無断着席、割り込み、追い払った謝罪無し。

 図々しい。


 はい、絶対に関わりたく無い存在ですね。




「全員、特定の職業には就いてませんね」

『んだんだ』

《あ~、そうなんですね~》


 ネネが無職だと言ったら、この態度。

 俺も本気で関わりたく無いんだが。


 苦手なんだ、本当に。

 こうした人種は、養殖だろうと天然だろうと、マジで人の話を聞かない。


 だが、このまま関わらないとネネとヒナに殺される気がする。


《俺も無職なんだ》

《え~、そうなんですね~、でも凄~い。だってこのお洋服や靴って~、凄く高そうですよねぇ~》


 やっぱり、標的は俺か。


 すまない皆。

 俺のせいで大事な話し合いの場を。


『“レンズ、迎えに来ました”』


 ヒナ、助かった。


《“あぁ、もうそんな時間か、ありがとう”》

『“いえ”』

《わぁ~、可愛い~》


 凄いな、あのヒナが綺麗に避けた。


《すまないが、仕事の事なら他を》

《全然~、そんな事より、お友達になってくれませんか~?私、全然、友達が出来無くてぇ~》


 だろうな。


《いや、すまないが無職でも忙しいんだ、他を》

《あ~、ご挨拶が遅れちゃってごめんなさ~い、私マリアって言います~。アナタのお名前は何かなぁ~?》


『ヒナですが、何か』

《わぁ~、凄い、やっぱり通じるんだぁ~。お友達になって貰えませんか~?》


『アナタの言う友達とはどの様なモノですか』


《ん~、困った時には助け合ったり~》

『ではアナタに何が出来るのですか』


《ん~と~、こう見えてお料理が得意なんだぁ~》

『そうですか、ではお手並みを拝見させて下さい、ウチにご案内致します』


 良いのかヒナ、こんなの関わるだけ寧ろ損だぞ。


《えぇ~、良いんですかぁ~?》


《まぁ、家主はヒナだ》

『どうぞ、コチラです』

《ありがとうございま~す》




 ネネさんとレンズから危険信号が出ていたので迎えに行ったのですが、私には何が危ないのか分からないので、学習させて貰う事にしました。


『どうぞ』

《わぁ~、凄~い》


『何が作れますか』


《ん~、言って貰えたら、何でも作れるよ~》


『ではバーニャカウダーと茶碗蒸しを願いします』


《あー、ごめんね~、慣れない台所だと少し難しいから。もう少しだけ、簡単なので良いかな、例えばオムライスとか~》


『ではそれで構いません、食材を教えて下さい、私が出します』

《え~っとねぇ》


 言われた通りに食材を出しましたが、私でも作れます。

 なら、得意と言っても良いのでしょうか。


『オムライスが作れたら料理が得意だと言っても良いのでしょうか』


《んー、ごめんね~、得意だけど料理に集中したいんだ~》

『分かりました』


 手際はレンズより悪いと思います。

 コレで得意だと言えるんでしょうか、不思議です。




《どうぞ~》


 見るからに、半熟卵なんだが。

 いや、この家の食材なら、大丈夫は大丈夫なんだが。


『頂きます』


 食べるのかヒナ。


《どう~?美味しいかな~?》


『普通です、レンズの方が美味しいですし、手際も良いです』


《そっか~、でもレンズさんは慣れて》

『いいえ、初めて作って貰ったのはオムライスです、もっと早く綺麗に美味しく作ってくれました』


 ヒナ。


《そっか~》

『この程度で得意と言っても良いのですか』


 お、僅かに唇を噛んだな。


《ん~、ごめんね~、周りの中ではコレでも得意な方だったんだぁ~》


 良い言い逃れの仕方だ、相当に手慣れてるな。


『働き口に困っているなら紹介も出来ますが、コチラの言葉は話せますか』


《そこなんだよねぇ~、お願い出来無いかなぁ~?》


『対価は何ですか』


《ん~、家族になってあげるのは、どうかな?》

『結構です、レンズで間に合っています』


《じゃあ、後払い、とかは》

『では一時的に貸し出すのはどうですか』


《ありがとう~、お願いするね~》

『では』


 俺と言うより、コレが狙いだったのか。

 直ぐにも退散してくれたが。


《ヒナ》

『バターが少なくて美味しくないと思います』


 あぁ、確かにな。


《健康志向派なんだろ》

『どうして危険信号が出てましたか』


《出てたのか》

『はい、ネネさんからも出ていました、何故ですか』


《まぁ、確認してみると、良いかも知れないな》


『気乗りしませんか』

《そもそも、俺らは関わりたく無い、以前に似た奴で不快感を経験してるからな。だがもしかすれば、悪い奴じゃないかも知れない、ヒナの好きにしてみろ》


『はい、経験してみます』


《はぁ、不完全燃焼だ》

『また集まりますか』


《だな、手紙を頼めるか》

『はい喜んで』




 後日、我々は其々に対策を講じ、集まる事に。

 そして追加メンバーには、シイラさんも。


「ヴェール女子会、何だか良いですね」


 シイラさんは勿論、ノリノリ。

 そしてクラムさんも。


「コレ、落ち着きますね」

『うん、顔見知りに怯えてたんだって分かりますね』

「妙さん、もう、流行らせましょう」

「はい、是非お願いします」


 件の襲撃のせいか、ヴェールはとても落ち着く。

 と言うか、ココは中庭席なので、以降はテラス席を選ばなければ良いだけだとは思うんですが。


 落ち着きますね、ヴェール。


《俺の対策が、全く無いんだが》


「レンズさんは、まぁ、いざという時の弾除け。ですかね」


 シイラさん、流石です。


「はい」

「はい、宜しくお願いしますね」


 そしてダメ押しのクラムさん、完璧な布陣ですね。


《はぁ》

「と言うか、そもそもアナタが上手く動かしてくれなかったからですよ」


《いや俺は万能じゃないからな、アレは本当に苦手なんだ》

「元ホストなのに」

『意外と来ないんですか?』


《だな、金は貰うもんだ、払うもんじゃない》


『「「「おぉ~」」」』

《いや俺の意見じゃないからな、アレ系の女の意見だ》


「天然と養殖と有ると思うんですが、どう、違うんでしょうか」

《俺の知る限りだと、年季が入ってれば入ってる程、見分けが付かない》


「そうなんですね」

《ただ、一応は天然の定義が有る》

「教えて下さい、念の為」


《先ずは……》


 天然と言われて怒る。

 喋り方がおっとりか、または少し遅い。


 常に笑顔。

 笑いのツボや考えが少しズレている。


 褒めれど悪口や愚痴は言わない。

 マイペースながらも全力。


 ポジティブ。

 苦手な相手が殆ど居ない。


 同性の友人の方が多い。

 独り言が多め。


 恋愛関係に本気で疎い。

 疑う事を殆どしない。


 天真爛漫。

 人の話をあまり聞かない。


「分かります」


 真っ先に頷きながら答えたのは、クラムさん。

 そしてすかさず突っ込んだのは、シライさん。


「クラムさんの周りにも居りましたか」

「はい、ですが今思うと、サイコパスでしたね」

《あぁ、だろうな》

「成程」


《あぁ、ネネの周りにも居たか》


 常に笑顔、コレは単なる社交術でありながらも、一貫性が有る事に意味が有る。

 常に笑顔だと思われる程、貫いている、若しくは貫ける技量が有る。


 喋り方がおっとりか、または少し遅いのは、普通ならどんな反応をするかを考えているから。

 笑いのツボや考えが少しズレている、コレに関しても同じ。


 苦手な相手が殆ど居ない。

 コレに至っては、他は全て均等で同一扱いだからこそ、逆に依怙贔屓や分け隔てて接する事の方が難しいだろう。


 サイコパスは天然を完璧に装っている可能性が有る。

 つまりは、天然だろうと養殖だろうと、関わるなら慎重にと言う事。


 いえ、サイコパスが危ないからでは無いですよ。

 天然であれサイコパスであれ、考えが少しズレていると言う事は、一歩間違えれば無神経な発言をする可能性が有る。


「と言う事かと」

《だな》

「確かに、可能性が高いですね」

「凄い、人体の神秘ですよね」

『成程』


 人体の神秘、こう言える事の方が、よっぽど天然だと思うんですが。

 養殖以外は喜ばないんですよね、この言葉。


「あの、因みに、何故そうなんでしょうか」

「確かに、仮面を被る必要性が有るのは分かりますが、何故なんでしょう」

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