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165 魔道具。

《どうだ、シイラ》


「まさかの、チョーカー、ですか」

《おう、飾りが後ろに有るから首輪付きに見えるだろ、敢えて舐められようと思ってな》


 似合いますけど。

 少し、変態的と言うか、特定の性癖の方に刺さりそうだなと言うか。


「あぁ、はあ」

《反応が悪いと言うか、歯切れが悪いんだが》


「どう反応されるつもりだったんですか」

《悪趣味か、若しくは意外と似合うか》


「似合うとは思ってるんですね」

《特定の性癖持ちに刺さるらしい》


「あぁ、そこは自覚してらっしゃるんですね、流石です」

《嫌味か》


「まぁ、ですね」


《最初より、明らかに距離感が有るんだが》

「あ、アレは、勇気が出てた時なので」


《今更人見知りか》


「はい、ですね」

《向こうで、後から文句を良く言われたか。あの時はこうだった、どうして気付いてくれなかったんだ》


「はい、仰る通りで」

《俺がそんな事を言う様に見えるか?》


「まぁ、ヒナちゃんを見る限りは、大丈夫かと」


《あぁ、女が苦手か、特に連絡は取って無いんだな》

「はい」


 何を話せば良いのか、分からない。

 共通する話題が無い。


《子供は、作らないんだな》


「今の所は、はい」


 目下の案は、不死の解決。

 その為だけに、生きている。


《学校も行かないで、日頃は何をしてるんだ、か》

「そこまで読めますか」


《行かない理由も、結局は何通りかに分けられるだろ》


「まぁ、多分」

《大昔、自信が無いヤツは酷く頑固で我儘だと思ってた時期も有るんだが、そうなる理由が有るんだろ》


「無いかも知れませんよ」

《それは言語化出来て無いだけ、若しくは些細な事だと洗脳されてるかだ》


「カウンセラーか」

《あぁ、シイラで魔道具を試すつもりだったんだ。嘘を見抜ける状態を、敢えて可視化させた》


「敢えて、ですか」

《使って無いと分かった方が、言い易い場合も有るだろ》


「善人なら、そうかと」

《まぁ、不可視化も出来るんだけどな》


「まさかのネタバレを、して良いんですか、私が諸悪の根源になるかも知れませんよ」

《信用されるのが不安か》


「はい、裏切ってしまうかも知れませんから」


 思ったのと違う、話してみると何か違う、思ったよりも根暗なんだね。

 意外と重く考える方なんだ、深く考え過ぎ、気にし過ぎだ。


 多分、ココの誰も口にしないとは思いますが、そう感じないだろうとは言い切れない。


 そう思われるかも知れない、そう考えてしまう事も、苦痛だけれど止められない。

 どんなに自意識過剰と言われても、言葉の残像達が今でも暴れ回る以上、防御策を取るしか無い。


《ヒナには、出来るなら必要な事だけを学ばせたいと思ってる。だから必要じゃないなら、利が無いと思うなら、無理する必要は無いんじゃないか》


「サイコメトラー、レンズ」

《怖かったり、不快か?》


「いえ、そこまでモロ出しなのかと心配にはなりますが、不快では無いです」

《素直だから分かり易いだけだ、それに自己認識と合致してるからだろうな》


「褒められるのはキモいです」

《多分、何だかんだ言って、弱そうなヤツに構いたいんだと思う》


「弱そうなヤツは大体、お客様」

《そこが合致してたんだろうな、構いたいヤツに構えてwin-win、天職だったと思う》


「ココでもヤれば良いのでは」

《浅く広くより、出来るなら最後まで面倒を見たい》


「生粋のお兄ちゃん」

《緊張されると腹が立つ》


「ハネムーン期の逆です」

《生理か》


「いえ」

《なら鬱期か、有るらしいな》


「別に死ぬ気は無いんですが」

《生き死にで決めるな、お前は何処の修羅の国の出身だよ》


「いえ、関東出身ですが」

《何処の戦地かと思ったわ》


「贅沢は敵では」

《戦下ならな、快不快で決めろ、生き死にで決めるなハゲ》


「成程、ハゲを気にしてらっしゃる」


《正直、このままで居たいとは思う》

「いっそ丸刈りに、今からしては」


《いや、まだだ》


 イケメンの丸刈り、似合いそうですが。


「あ、すみません、脱線しました」

《真面目か、このまま戻すと試す事になるぞ》


「どうぞ、痛い所を突かないなら」


《分かった》




 可視化、不可視化も問題無し。

 ただ、どうにもな。


「良いですね、魔道具、本当に便利」


《多分、確実に嫉妬されてるぞ、今》


 ずっと、視界の端で真顔でガン見されてるんだが。

 上手い具合に、シイラの視界には入って無い。


「あ、大丈夫です、罰だと思えばどうと言う事は無いので」

《罰か、何をしたんだ》


「例えば、何もしない罰って、有るとは思いませんか」


 虐めに介入しない。

 犯罪を通報しない罪、か。


《あぁ、有るかもだが、時と事情によるだろ》

「けれど、もし自分なら、介入して欲しかっただろう。介入しても死なないなら、介入しても良かった筈、どうして介入してくれなかったんだ」


《シイラ、お前はどっちだ》


「分からないなら何よりです、コレは私の問題ですから」


 物凄く構いたいが。

 コレは悪魔の領分なんだろうな。


《言える様になったら聞く》

「はい、ありがとうございます」


《じゃ、帰るわ》

「はい」

『僕が送るよ』


 俺も多分、厄介な問題でしか人と繋がれないんだろうな。

 安定してると興味が湧かない、関わる気になれない。


 利益より、相手の闇や悩みに惹かれる。


《で、何だ》

『人と(ヒト)種の違いは何だと思う』


《血の混ざり方、じゃないのか》

『人種はね、あまり自分の事では悩まないんだよ。平和なこのままの状態だから、さして疑問を持たない、素直だから向き合う必要も無い』


《だから人を取り合うのか》

『そうだよ、君が構いたくなる様に、僕らも苦悩や葛藤に惹かれる。やっと手に入れた、僕だけが構いたい相手、君も手に入れられると良いね』


 俺だけが構いたい相手。


《助言として受け取っておく》

『是非そうしておくれ、君を待つ相手は、もう居るのだから』


 知り合いに、居るのか。


 いや、今はまだ無理だ。

 やっと、吹っ切れそうなんだ。




『ネネさんの前に初恋の方が現れたそうです、ですが対処は終わりました、送り返されました』


 レンズは、戸惑い躊躇っています。


《そうか》

『その戸惑いや躊躇いは何でしょうか』


《やっと、吹っ切れそうだと、思ってたんだ》


『様子を伺うべきだったでしょうか』

《いや、それこそコレは、俺の問題なんだ。すまん、ヒナは悪くない》


『追加情報を出すべきなのか分かりません』

《いや、くれると助かる》


『カイム子爵が消化のお手伝いをしました、それから今も、新しいお友達に吐き出しているかと思います』


《そうか》

『ネネさんには向こうで直ぐに死んだ事は言いませんでした、送り返した事で死が待っているとは、そう願ってはいなかったそうですから』


《死んだのか》

『はい、謝って死にました、とても後悔していました。ですが、ココでは正気には戻れなかっただろうと、カイム子爵が言っていました』


《狂ってたのか》

『例の事件は彼にも影を落としていたそうです、自己防衛と不完全な言い訳を繰り返し、認知が激しく歪んでしまったそうです。ですが、彼が恥を忍んで間違いを認めたなら、そこまでには至らなかったそうです』


《そうか、確かに言わないのは正解だな》


『悲しみは、分担させる事が正解の場合も有ると学びました』

《そうだな》


『レンズも、誰かに言うべきでは無いのでしょうか』


 悲しみや混乱が今でも有ります。

 レンズはまだ、消化出来ていません。


《あぁ、だな》


 誰にでも、何でも言って良いワケでは無いと学びました。

 レンズは、誰に言えるのでしょうか。

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