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162 普通と旧怠惰国2。

 普通とは何か、改めて考えてみました。

 大多数の区分、そして連続性が有り、平和を大前提としています。


 ですので、少し寄り道してアンバーに尋ねに行きました。


「あっ」

『どうも』


 アンバーと良く一緒に居た子です、挨拶したのに逃げられました。

 もしかして、何か問題が有ったのでしょうか。


「どうなさいますか」


『先ずはアンバーに尋ねてみます』

「はい」


『ヒナです、アンバーは居ますか』


 アンバーの家には、必ず誰かが居ます。

 それは使用人では無く、家族です。


《いらっしゃいませ、どうなさいましたか》

『学園で一緒に居た子がソコに居ましたが、逃げられてしまいました、何か問題が有りましたか』


《あぁ、いえ、もう終わった事ですから》

『では以前に問題が有ったんですね』


《いえ、単なる意見の不一致ですから、問題有りませんよ》


『分かりました、そう言う事にしておきます』

《ありがとうございます》


『アンバーの今後の日常の予定を教えて頂けませんか、普通を探しています』


《はい、どうぞ、あがって下さい》

『ありがとうございます、宜しくお願いします』


 それからアンバーの日常について、詳しく教えて貰いました。

 なのでお礼に、今度はヴァイオレットの日常について、お茶会を開く事になりました。




《ただいま》

『お帰りなさい、週末にはアンバーとヴァイオレットとお茶をします、日常についてヴァイオレットに尋ねる予定です』


《そうか、じゃあ菓子を用意しないとな》

『はい、また図書館に行きます、新しいお菓子を探します』


《それと茶葉もだな、合うかどうかも確かめないとな》

『はい、お菓子を作って味見をします』


《ならティーセットも自作するのはどうなんだ?》

『作るより買う方が良い腕前です、絵は難しいです』


《なら次は絵画教室か》


『確かに、絵の基礎はまだ習ってません』

《それこそ学校なんだが、面倒か》


『はい、図書館が有りますから』


 完全に、引き籠りと同じ道筋なんだが。


 確かに、迷うな。

 勉強だけじゃない、人間関係だとかを学ぶ場所、なんだが。


 ヒナには、何処まで学ぶ必要が有るのか、正直分からない。


 倫理だとか理屈自体は、ほぼ完璧なんだが。

 経験が圧倒的に足りない、だが、不必要かも知れない。


 既に知っている事に、そう興味は湧かない。

 それを無理に通わせるのは、単なる俺の自己満足でしか無い。


「あの、推奨はあまりされてはいませんが、飛び級は如何でしょうか。1年先だけ、お試しに如何かと、そしてそのまま学年を継続する方も居るそうです」


《成程な》

『お姉さんと一緒ですか』


《意外と、ヒナもお姉さんかも知れない》

『非推奨です』


《けれど、絶対にダメなワケじゃない、だろ》

「はい」


『今日、アンバーの家の近くで、アンバーと良く一緒に居た子が居ました』


《あぁ、活発そうなあの子か》

『はい、挨拶をしたら逃げられました。それにアンバーも、少し嘘を言いました、もう終わった事だと』


《揉め事か》

『その謎が解けないので、あまり自信は有りません』


《成程な、じゃあ解けたらどうする》


『事と次第によります』

《なら、解いてみろ》


『はい』


 コレが有るから、出来るならそろそろ通わせたいんだが。

 無理強いはな。




「ご招待、ありがとうございます」

『お待ちしていましたヴァイオレット、どうぞ』


「はい、お邪魔致します」


 ヒナ様とアンバーとのお茶会。

 そして、やっと、お揃いのドレスが着れましたわ。


《ふふふ、こんにちはヴァイオレット様》

「ご機嫌ようアンバー」


 3人で形を合わせ、其々に好きな色を使ったドレス。

 誰かにお披露目するワケでは無いのですけれど、とても嬉しい。


『面白い提案をありがとうございました、個性について考える事が出来ました』

《ですね、今回は紫を使わせて頂きましたが、どうでしょう?》

「ヒナ様もアンバーも、素敵な色の組み合わせですわ」


 白を基調とした紫のドレス、アンバーは緑を差し色に。

 そしてヒナ様は赤紫、私は薄紫を使わせて頂きました。


『お花みたいです』

「ですわね、次はアンバーの案を取り入れましょう」

《それがまだ、思案中で、相談させて頂けますか?》


「勿論」

『では紅茶とお菓子をどうぞ』

《あ、はい、頂きます》


 ヒナ様は、殆どの事が出来てしまう。

 キノコとハムのキッシュに、珍しい白パンのサンドイッチにはサーモンとクリームチーズ、それとシンプルなスコーンにはグーズベリーのジャム。


 リンゴの小さなタルトにブルーベリージャムの乗ったチーズケーキ、柔らかなチョコレートブラウニーにエクレア、木の実がふんだんに使われたクッキー。


「相変わらず、どれも美味しいですわ」

《はい、食べるのが勿体無い程ですね》

『追加も有ります、今日は少しご相談に乗って頂きたいと思っています』


《あの、以前にお伺いした事でしょうか》

『はい、ですが先ずはアンバーのドレスの案です』


《いえ、先送りにしてしまった事ですし、先ずはヒナ様の事からお願い致します》


『分かりました、普通について知りたいです』

《ヴァイオレット様ですと、日常について、かと》


『はい、出来れば以降の予定や希望、計画について知りたいと思っています』


 私の、以降の希望や日常。


《例えば、夏休みはどうなさるか、ですかね》

「あぁ、成程」

『私には夏休みの計画は有りません』


「それはいけませんわ、貴族は特に、夏休みと言えば計画ですもの」

『社交の盛んな時期、大人になる練習だと伺いましたが、もう既に有りますか』


「勿論ですわ、それこそアンバーにも有る筈ですもの」

《宿題が有りますので、やはり計画は有りますが、そう完璧に全てでは無いですからね》

『教えて頂けますか』


《はい、勿論》

「ですわね」


 ヒナ様の意外なお困り事は、夏休みについてだったのですね。




《やっぱり、子供の事を任せるのは、子供が1番なんだろうか》

『時と事情によるけれど、まぁ、大半はそうだねぇ』


 ヒナがこの数日した事は、菓子の種類を知り試す事。

 それと、道端での同年代の観察。


 そのお陰か、学園に戻るかも知れないと言って来たワケだが。

 ココだけで満足すれば、また戻るかどうか悩むだろうな。


《ただでさえ子供が居なかったんだ、少し助言が欲しいんだが》

『全く間違わない、なんてのは無理だよ。例え押し付けがましいと思われようが、念には念を入れるのが親だ、アンタが正しいと思う事を推し進めたら良いんだよ』


《なら、やっぱり学園に戻したいんだが》

『そう言えば良いだけだろうに、コレだから下手に子に気を遣う大人は困るんだよ。間違えたなら謝れば良い、誰だって独断と偏見で子を育ててるんだ。阿るんじゃない、指導するのが大人で親だろう、嫌われたら死ぬのかいアンタは』


《いや、けど確かにな、自分が死なない為の子育てじゃない筈なのにな》

『そうそう、子が死なず苦しまない為の子育てだ、自分勝手に育てる為の時間じゃないんだよ』


《そこがな、その塩梅が難しい》

『困らない為、為になるだろう事、それだけでも良いと思うけれどねぇ』


 ヒナが困らない為。

 為になるだろう事。


《一先ずは、そう考えておく、ありがとう》

『この位はね、年の功だよ』


《本当に、どっちなんだ》

『さぁ、どっちだろうねぇ』


 食えない婆さんと言うか、爺さんと言うか。


《まぁ良いか。ココ、敢えて(ヒト)種に手を貸す事はしなかった、と有るが》

『人種には、ね』


《あぁ》

『もし善き来訪者ならば、精霊や悪魔が移動させたんだよ。善人と悪人、双方に出会う確率が丁度半分の場所へ、ね』


《気を失ってる間にか》

『必ず介入したがるだろう者には、特に、遠くへやったものだよ』


《アンタもか》

『そうだねぇ、無礼・忘恩・僭越とは無縁な子は、特に遠くへやったものだよ』


《この大陸か》

『勘の良い子だねぇ、違うよ、もっと遠くだ』


《南米大陸は、どうなってるんだ》

『冒険家が気軽には入り込めない場所だけれど、そうなったのには、とある大罪の血筋のお陰だねぇ』


《美食か》

『次が美食の章だね』

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