161 オバサンと不死と魔獣達。
私には、ココの適正はあまり無いのか、と思っていたんですが。
監督所を出た直後、目眩を感じ、蛤に抱えられ帰宅する事に。
「すみません」
《ううん》
『構わない、承認を望んでいたのだろう』
「はい」
《レンズとか言うのに合流出来無いって言ってくる》
「はい、すみません、宜しくお願いします」
あの女性との対面後、暫くは平気だったのですが。
『思考しては長引くぞ』
「あの思い込みの強さ、気付け無さが恐ろしいんです、もし私が」
『忠告する、心配は要らない』
「ありがとうございます、お願いします」
私は年上だろうからと、皆さんの前では、そう振る舞っていましたが。
幼く、無知なんです、私も。
『どうすれば無になれる』
「影絵で、ウサギと亀を、お願いします」
『分かった、やってみよう』
子供の頃の思い出。
意外と役に立つんですね。
《悪魔については、貸し出し中以外は、コレで全部かな》
「ありがとうございます、ジュリアさん」
《いえいえ、何せ司書ですから》
誰かの為に何かをするなら、先ずは情報収集から。
現地の方、ジュリアさんに相談したかったのですが。
正直、まだそう親しくも無い段階で、すべき事では無いかと。
実際、レンズさんには失敗したワケですし、悩みは病の様に伝染する。
繊細な方なら、特に。
「1番のオススメと、最もオススメしないモノは、どれでしょうか」
かなりの量が有るんですよね、意外にも。
《1番はコレで、最もオススメしないのは、コレですね》
「ありがとうございます、タイトルを記録したら他は返しますね、すみません」
《あぁ、じゃあ、このまま最下位を私が書きますから。シイラさんにはコチラ、上位のオススメをお願いしますね》
「はい、ありがとうございます、お手数お掛けします」
《いえいえ、お役に立てれば何よりですよ、どんどんご相談下さい》
「はい」
相談をするのは、とても億劫な事。
ココは違う、そう理解はしていても。
また、傷付けられるのはもう嫌だ。
罰ならまだしも、まるで相談が罪かの様に、無碍に扱われ傷付けられる位なら。
何も言わない方が良い。
『すみませんね、あの2人で、お話しすべきかなと思いまして』
『正解だよ、君は勘が良いのかも知れないね』
『いやー、勘が良いならもう少し』
『そう、死んだか、若しくは死に掛けた経験や記憶が有るのかな』
『あぁ、はい。ただ記憶は直前までなので、どっちかは分かりませんけどね』
『そのお陰だろうね、かなり向こうは深刻だよ』
『あらー』
ネネさんとレンズさん。
そうは見えませんけど、そんなに深刻な事を。
どれの事、でしょうかね。
『不思議だね、こんなに違いが有るだなんて』
『違いますか、ネネさんやレンズさんと』
『それにシイラとか言う女性も、彼女も多分、勘が良い』
『えっ、じゃあ』
『どうだろうね、そこから先は君達の関係次第だから』
『なら何で言っちゃいますかね』
『ささくれみたいなモノかな、僕は精霊との繋がりが強いから、とても気になるんだよ』
私が気付けない事も、気付く。
『気苦労が多いのでは?』
『ありがとう、時間は有限だからね、関係は取捨選択しているから問題は無いよ』
そうだ、寿命が有るモノと無いモノが居るんだった。
『私は、人種に、してしまったんですが』
『不死に対して、良く考えてみると良いよ』
不死。
『私、こう、1人で考えるのが苦手でして』
『もう大丈夫、戻ろうか』
『あ、はい』
ウチの妖精さんと全然違う。
不思議ですね。
『もう良いかな』
《あぁ、問題無い》
妙さんとロミオ。
確かに、不思議な組み合わせだな。
『けれど、まだ真の願いは分からない』
《だな、コレからかなり遠回りしそうだ》
『凄い、分厚い本、ですけど』
「頑張って読むそうで」
《おう》
『へぇー、それこそ知恵熱出ちゃいそうですけど』
「確かに」
『かも知れないね』
悪魔が去った後、妙さんとロミオがコチラに来たんだが。
更に、見知った顔が。
《カノンは知恵熱を出したから来れない》
《そうか、ありがとうシエル、お大事にと伝えておいてくれ》
《うん、代わりに相談に乗るけどどうする》
クラム夫人の聖獣で、夫。
しかも最初は、興味本位だったらしいが。
《幾つか尋ねたい》
《事と次第によっては答える》
《今も願いが聞こえるんだろうか》
《カノンのだけ、しかも強い願望が有る場合、強い願いが有ると分かるだけ》
《いつ、そうなったんだ》
《受け入れられ混ざり合った後》
《他を必要としなくなった時点で、聞こえなくなるのか》
《らしい、蛸がそう言っていた》
《最初は興味本位だけか》
《うん、願いも無かった、けれど関わったのは相性らしい》
《らしい、か》
《今は分かる、けれど以前は分からなかった》
《もし悪しき者だったら、どうした》
《分からない、けれど大半は嫌悪や憎悪が湧いて、直ぐに遠ざかるらしい》
《そうか、ありがとう》
《何を買って帰るべきだと思う》
《あぁ、ならアイスだな、さっぱりとしたのがオススメだ》
《分かった、ありがとう、もう帰る》
《あぁ、じゃあな》
防衛本能なのか、精霊や悪魔の加護なのか。
もし、悪しき者が願ったなら。
「やはり、そもそも対面出来た時点で、安心しても良いんですね」
《そこは信じて無かったのか》
「いえ、個体差が有るのかと」
《自分のには尋ねたのか?》
「そこも、正直半信半疑でした。対価を得る為に、不当な取り引きはしない、と信じ切ってはいませんでしたから」
《少し、魔獣達を借りて良いか》
「あぁ、どうぞ」
『僕らも少し離れようか、君の苦手な姿かも知れないからね』
『あぁ、はい』
《すまん、助かる》
『構わないよ、君達は初心者だからね』
ネネの為にも、知り合いとは言えど、魔獣の姿を見せない配慮が必要だったな。
本当に便利過ぎだろう、精霊との繋がりが深いモノは。
《どうだ》
《心外だが、仕方あるまい》
『凄い荒んで警戒してた』
《そこは誰にも分かるんだな》
《いや、個体差、それこそ相性の濃度次第で把握出来る度合いは変わる》
《親和性の高さか》
《あぁ》
『けどヤバいのは分かるよ、ヤバいなって感じる』
《本能的な忌避感、嫌悪、憎悪だな》
《それはいつ分かるんだ》
《それも親和性次第だ》
『ネネのは遠くでも分かったから、急いで行ったんだ』
《それ、間に合わない場合も有るのか》
『かもだったから、待ってって大声で叫んだ、そしたら妖精の知り合いが運んでくれた』
《協力し合うんだな》
《奪い合う意味が無い、要求と見合わなければ、いずれ心変わりをされるのだから》
『うん、邪魔したりされてるのは聞いた事も無いよ』
《そうか、なら憎悪はどうだ》
『俺は分かんないけど、凄い恨み言を暫く言ってたのは居るよ、何であんなのと相性が良いんだって』
《最初は無くとも、歪みにより変化し、憎悪を持ったモノも居る》
《有ったのか》
《いや、だが間近で憎悪を膨らませたモノが居た、酷く力を削がれ契約は切られた》
『有るんだ、本当に』
《あぁ、そして同種と番い、その力も何もかもを失った》
それも、精霊や悪魔の加護か。
魔法と言う特殊な仕様に組み込まれた、独特の反応か。
《リスクが有るんだな》
《伴侶であれ兄弟姉妹の様なモノであれ、悪しき変化は裏切りと同等、親しさは傷を作る事になる》
《それは、罰なのか》
《いや、だが裏切り行為だ。だからこそ伴侶を求める者には、しっかりと立場を示し、誤解を避けるが》
『居る居る、いつか好きになってくれると思ったのにって、人種のオスが泣きながら怒ってたの見た事有るよ』
《それは悪しき者へ、敢えて行われる場合も有る》
《そうなのか》
『そうなんだ』
《憎悪の分、期待を持たせ、早期の自滅を願う。次の、より親和性の高いモノを待つ為、心穏やかに過ごす為に》
願われる限り、声は聞こえ続ける。
なら。
《成程な》
『凄いね、全然分かんないや』
《因みにだが、2人は》
《知らぬ方が良い事も有るだろう、特に出遅れたモノには》
『黒蛇が教えないなら教えない』
伴侶の想いを持ちながら、身内として過ごす。
俺以上に、過酷だろうに。
それでも離れる気は、全く無いんだな。
《ありがとう、助かった》
《構わない、いつか返される礼の為だ》
『うん、じゃあ頑張ってね』
《あぁ》
本当に俺は、最後尾なんだな。