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156 19番目の悪魔の相手。3

「つまり、弱くて脆いと簡単で面白くない」

《だな》

『壊す事、落とす事が前提なら、ね?』


《おう》

「恥じないで下さい、出来る事と中途半端に終わってしまった事は別です」

『君もね』


「他人には言えるんです、他人は」

《だよな、俺も分かってはいるんだけどな》


 サレオスが嫉妬しています。

 彼は誰でも愛せると思っていますが、実はそうでも無いと言われています。


『読書会ですか』

《おう、おはよう。まぁ、だな》


『おはようございます』

『おはよう』

「おはようございます、ザクロのホワイトティーですよ」


『頂きます』


 ジュリアやロミオ達に似ていますが、少し違います。

 彼女には不安や罪悪感が有ります。


 少し、レンズと似ています。


《で、コッチは少し胸糞悪い》

「ですよね」

『けれど許しについて考えられる本、だよ』


 許し許される事は難しい場合も有ります。

 私は、まだ両親だった生き物を許せるかどうか、良く分かりません。


『読めば分かりますか』


《いや、1つの選択肢の呈示か、ヒントだな》

「ですね」


 彼女はネネさんとも違います。

 レンズを優先して、言う順番を考えて行動しています。


『レンズは当事者に謝罪しましたか』

《おう》

「あ、したんですね」


《あぁ、してない時代だったのか》

「あ、え?」

『レンズは戻ってやり直しました、最後まで』


「そん、成程」

《と言うか、そこまでして無い俺を、良く許せたな》


「ぶっちゃけますと、アナタを見掛けてから、自称被害者の方について彼に教えて貰いました」

『けれど既に君だけが悪いワケじゃない、そう思っていたよ』

《どうしてなんだ?》


「断罪されている者が、必ず悪だとは限らない」

『向こうのネットで有名だった者が居たろう、彼女はコチラで少し関わったんだ。けれど、その前から、だね』


「独裁政権は悪だ、なら悪を滅ぼすにはどうすれば良いか。妄想ですけど、1つの結論が出たんです」

《首さえ潰せば未来を変えられたか》


「はい、そこです、たった1人が本当に悪いのか。それは明らかに違う場合が有る、独裁政権下で貧困に苦しみ子供が食べ物を盗んだなら、それは政権の悪の産物です。盗んだ事は確かに悪いけれど、子供だけが悪いワケでは無い」


《けど、政治が全て悪いのか》

「そこです、針小棒大に政治の揚げ足取りをして言い訳に使う者も居る、なのでやっぱり多数決だと思います。但し、しっかりと教育がなされ、選ばなかった時の不利益を良く理解している前提で」


《そこも、政治、国の教育次第じゃないか》

「親って教育の義務が無いワケじゃないですよね、忙しいからしない、それってただの言い訳ですよね。ごめんなさい、少し耳を塞いで歌って頂けますか」

『はい』




 コレだけ気配りが出来るのに、彼女は何をしたんだろうか。


「最悪は産まなければ良かった、避妊の手段が有り、最悪は堕胎だって出来る。なのに産んで忙しいだ金が無いだは、親となった生き物の単なる言い訳、子供が犠牲になる必要は無い筈です」


 あぁ、そうか。


《完璧主義で自身に批判的、感受性が高く親兄弟と合わなかった、しかも貧困では無いにせよ恵まれていなかった。自分に厳しく他人に甘い、差し当たっては母親が甘く父親が厳しい家庭、自分さえ我慢すれば良いと悪しき見本を学んだ。忙しいと言い訳をされた、甘やかしがちぐはぐだった、今は両親共に嫌いだ》


「凄いですね、流石です」

《注意される事に慣れてるから、コレだけ批判的な意見にも反抗すらしない、モラハラ男に捕まり易そうだな》


「と言うか、ぶん殴ったら大人しくなりました」

《流石だな、強いと認めるとアイツら引き下がるからな》


「けど、浮気されました」

《あぁ、逃げだな、縋られたか》


「いえ」

《なら軽度のサイコパスかもな、共感してるフリが上手かっただろ》


「はい、多分、です」


 悪魔。

 撫でる位に留めておけ、見せびらかされる事が本当に嫌なんだろうから。


 そうそう。


《ヒナ、もう良いぞ》


『もう良いですか』

《おう》


「凄いですね本当に、カウンセラーになっては?」

《いや、ココでも少し考えたんだが、物分かりが悪い奴と長く付き合いたく無い》


「例え、それが償いになるとしても、ですか」


 ココか。

 悪魔が俺を引き入れたのは。


《ヒナも友人も、俺自身を大切にして欲しいと思ってくれている。それを裏切る行為は、寧ろ償いにはならない筈だ。アンタを思う誰かの為に、しっかり線引きをした方が良い》


「それが、とても難しい」

『悪魔は何でも手伝えます、頼って下さい、それが悪魔です』


「私に、誰かを助ける権利が有るのでしょうか」

《文句を言う位なら困らなきゃ良い、ソイツが代わりにすれば良い、しないのに文句を言うヤツは単なる悪だ》


 救われる手を選べるなら、選べば良い。


 けど、それですら結局は恵まれている立場。

 本当に困っていたら選べない、選んでなんかいられない。


「私の事を」

《どんな事でも俺は多分気にしない、それにコレだけ見抜いてるなら、分かった上で敢えて言ってるのかも知れないだろ》


 言葉を素直に受け入れられたら、どんなに楽か。

 分かるぞ、俺も同じだからな。


「宗教とか立ち上げれば良かったのでは」

《おう、知り合いのサイコパスにも言われた》


「サイコパスと同じ発想」

《良い意味でな》


『それにネネさんにも似てます、優しいです』

「元からじゃないですよ、何とかこうなれた、程度ですから」

《自己評価が低い、きっと愛が足りないんだな》

『そうだね』


 好きな相手が苦しんでるなら、そりゃこうもなるか。


《じゃ、そろそろ帰るか》

『はい、また来ても良いですか』

『勿論』

「次はもう少し、楽しい話題を用意しておきますね」


《いや、人生は楽しい事ばかりじゃないって知ってるしな、大丈夫だろ》

『はい、どんな事も私には勉強になります、色々と教えて下さい』


「大した事は教えられないと思いますが、はい、喜んで」


 似てても、内情や環境は全く違う。

 不思議だな、本当に。


『似ているけど違います、不思議です』

「だな、寧ろ真逆なのに、どうしてか似てる」


『コレが生来の気質ですか』

《あぁ、かも知れないな、確かにな》




 独占欲は独占欲、愛とは別物だ。

 そう思っていたのに、意外と同じ場所に有る場合も有る。


『コレが最大限の譲歩』


 全身に、噛み傷。

 痛みは殆ど無かったのに、傷口が深い。


「どうすれば、こうなりますか」

『肉食動物の歯を生やしたから』


「アレだけ、痛め付ける事に抵抗を示していたのに」

『コレはコレだから』


「マーキング兼、罰ですか」

『そうだね』


「単なる、変態行為では」

『そんなに、また他の誰かに痛め付けられたい?』


「いや、アレはもう、流石に無理です」


 レヴィアが部屋を出たかと思うと、別人が部屋を訪れ。


『アレは僕だよ』


「は?」

『だから声を出さなかったし、嫉妬もしなかった』


「随分と、手の込んだ事を」

『君の為だからね、出来る事なら何だってするよ』


「なら、他に譲渡を」

『それ以外ね』


 会話した程度でコレなのに。

 他人に手を出させるワケが無い。


 だからこそ、泣く泣く、致し方なく私を。


「いや喜んで弄んでませんでしたか?」

『君があんまり健気だったから』


 だからって。


「良く、身の振り方を考えてみます」


 彼は悪魔。

 永遠の不死を生きる、作り出された悲しい存在。


『監督所になら、自由に外出しても構わないよ、けれど寄り道には罰を加える』


 監督所。

 良いも悪いも取り揃えた見本市、だとは聞いていますが。


「ベールの着用は可能ですか」

『勿論、外見を差別する者も多いからね、許可されているよ』


「そんな危ない所には平気で行かせるのに」

『悪魔の管理下だからね』


 その同族意識が、良く分からないんですが。


「分かりました」


 悪魔を苦痛から解放する手立てを考えるにしても、先ずは知識から取り揃えるしか無い。

 もう、そう試行錯誤した者が居た筈なのだから。

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