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153 海の子と畑の子。

 卑怯にも、お昼ご飯の少し前に、お店にお伺いし。

 少し海で過ごし、近くのカフェに行ったんですが。


 居ました、お揃いの髪色の方と。


 それから独占欲だ、って事も理解しました。

 あんなの、本当に、関係者ですって示す様なモノで。


 確かに、そこまで変えたと言うより。

 本当、お願いを聞いたのかな、って感じで。


《お揃いだね》


『したいですか、お揃い』


 私も正直、もう関係者には会いたくない、そう思っているんですが。

 整形を考えた事も無いのに、慣れたり馴染んだりするのかが疑問で、どうにも考えられなかったと言うか。


 念頭に全く無かった、と言っても良い位で。


《ちょっとだけ、少しだけなら、したい》


『遠慮してません?』

《してない、だっていっぱい変えたら、少しタエじゃなくなる気がするから》


『その外見で、コレが良いんですか?』

《うん、匂いとかも好きだし、変に変わったら嫌だから。でもタエが変えたいなら良いけど、俺の意見も少しは、入れてね?》


 そうだ、向こうと価値観が全然違うんだった。

 外見は簡単に変えられる、だからこそ些末な事。


『私の、何が良いんですかね?』

《匂いと味と、優しい所といつも楽しそうな所と、ちゃんと自分の事が分かってて凄い所》


『全部では、無いですけど』

《監督所のって、凄いんだよ、自分の願いが分かって無いのばっかりなんだから》


 繋がりが薄いモノ、そして人種の為にもと、色々な方が居るとは知ってましたけど。

 自分の願いが分からないって、相当だと思うんですけど。


『大丈夫ですか?』

《うん、それより行こうよ、このまま帰るの嫌でしょ?》


 私だけ、情報収集は卑怯だとは思いますけど。

 大人になってから知り合うって、こう、難しいんですね。


『どう、言えば良いのか』

《俺が行くよ、大丈夫、バカなフリが出来て一人前だってレンズが言ってたから》


 レンズさん、何処までもお世話に。

 そうですよね、ヒナちゃんも認めたと言うか、確認しての事なんですし。


『よし、行きましょう』

《うん》


 あー、でもちょっと怖いかも。

 いきなり怪訝な顔されちゃったら。


 いや、嫌なら嫌で、拒絶する権利は誰にでも有るんですから。

 そう、嫌われても仕方無い、皆で仲良くは難しい事なんだから。




『あの、レンズさんとネネさんからお伺いしたんですが』


 アレから2日も経たずに、新しく同郷をご紹介下さって。

 本当に真面目な方なんですね、レンズさんもネネさんも。


「どうぞ」

『すみません、お邪魔します』


 多分、見た目そのままの若い方、ですよね。

 そしてお隣の方は。


《あ、俺は妖精だよ、ほら》


 薄緑色の羽根。


『あ、ウチの子は蛍の妖精でして』

《海の匂いがする》

《蛤の聖獣だから》

「凄い、妖精さんって本当に居るんですね」


《綺麗な水源でしか暮らせないから、あんまり人種とは関わらないんだ》

「ですが興味が湧いたんですね」


《んー、最初から好きだったよ》

「成程、この子は興味が先だったそうで、色々と違うものですね」

《血筋にも知識が無かったから仕方無い》

『あ、意外と居るんですね、ウチの子もそうだったんですよ』


《だった、どう知識を得た》

《精霊の加護、大変だったけど、得て良かったと思ってる》


 精霊の加護。

 監督所で習った覚えは無いんですが。


「その、精霊の加護とは」

『あ、監督所では教えない事、なんですかね?私、行って無くて』

《裏技だって言ってた》

《成程》


 あぁ、もしかして悪魔の助言、的な何かですかね。

 凄い信頼を得ているんですね、成程。


「お声掛けして下さって、ありがとうございます」

『いえ、コチラこそ、どうしてか警戒してしまってすみませんでした』


「分かりますよ、私も、何故外見を変えたのか疑問に思いますから」


 過去に執着が無い事より、何か裏が有るんじゃないか、と。

 警戒しますよね、普通。


『私も、変えようかと少しは考えたんですけど。こう、馴染むモノですかね?』

「全然、不意に鏡に写った自分を見て、未だに驚きますよ。でも、常にどちらかが、一緒に居ますから」


 そこで、あぁ、自分だった。

 そう落ち着いて、また忘れた頃に驚いて。


 けど、他人では無く、自分だとの認識は有るんですよね。

 多分、髪色のお陰だと思います。


『成程』

「寧ろ、多夫一妻の事が、私は気掛かりなんですが」


『あ、そうなんですね』

「あぁ、お聞きになってはいないんですね」


『容姿を変えた同郷の方、としか聞いて無くて』

「では、どう思われますか?」


『大変そうだな、としか。あの私、多分ですがノンセクとか言うのでして、分かります?』


 全く、分からない。


「すみません、不勉強で」

『いえいえ。恋愛が不得手と言うか、恋愛への欲求が無いんですけど、結婚とか子供が欲しくて。それって、やっぱり他とは少し違うかな、と』


「かも知れませんが、凄く合理的で良いじゃないですか。恋愛が全てでは無い、振り回されないって、寧ろ羨ましく思う程ですよ」

《カノンは嫌なのか》


「求めた結果、多大な不利益を被るのが嫌、ですね」

『そこ、私は寧ろ関心が無さ過ぎて、傷付けるんじゃないかと怖くて』

《大丈夫だよ、離れる方が嫌だから》

《嫌なら我慢する、離れるよりずっと良いから》


 妖精と聖獣。

 そこの意見は同じなんですね、不思議。


『あの、もし良かったら、お手紙って』

「私で、大丈夫でしょうかね?」


『寧ろ私の方こそ、なんですよね。恋愛について疎いって言うよりもう、興味が無い、とかですし』


 確かに、同郷と言う点以外、共通点が無さ過ぎですよね。

 だからこそ、どう接すれば良いのか、お互いに困っている。


 他に共通点は。

 子供、ですかね。


「私は、子供をと考えているので。もし宜しければ、子供の為に、はどうでしょうか」


『はい、是非』


 良かった。

 コレで少しは距離が縮まりますかね。


「では私は、クラム・カノンで」

『あ、向こうの言葉で構いませんかね?訛りが酷いのでコレなだけで、全然、英文は読めないので』


「はい、寧ろ私も、書き慣れている方が楽ですから」

『助かります、私は“林檎 妙子”、果物のリンゴが苗字なんですよ』


「美味しそうですね」

『ありがとうございます、良く言われます、へへ』


 やっぱり肉体年齢は、そこまで精神に影響しないんですかね。


 若さが羨ましい。

 もし逆の立場なら、私から関わるだなんて、億劫で怖くて出来ませんでしたよ。




《緊張してた》

『そりゃ勿論ですよ、外見が違うって事は、もしかしたら凄い年上かもだし』


《そっか》

『外見もだけど、年齢も気にしないんだねぇ』


《年だけ重ねて経験が無いと、子供と同じだってネネが言ってたから》

『確かに、でも難しいですねぇ、新しく知り合うって』


《そう?俺が何もしなくても、タエは知り合えてたよ》

『あ、ご協力ありがとうございました、私だけなら声を掛けられなかったかもでしたよ』


 でも、タエは出来てた。


《俺との子供、欲しい?》

『一応は、ですけどまだこうした仲になって3ヶ月も過ぎてませんから、落ち着いてから改めてお返事させて下さい。高揚感だけで、これから先の長い育児期間を過ごせるとは思えませんから』


《何が心配?》

『このまま妊娠して、高揚感のままに馬鹿な名前を付けるだとか、無遠慮な妊婦様になりたくないんですよ』


《馬鹿な名前って?》

『子供が困る様な名前です、それこそ不倫ちゃんとか、神の子ちゃんとか。不謹慎だったり、大き過ぎる名前は、子供の負担にしかなりませんから』


《分かった、じゃあ無遠慮な妊婦様って何?》

『妊娠してるから、と、傍若無人で偉そうな態度を取りまくる方の事です。何よりも優先され、優遇されないと騒ぎ散らかすだとか、そう言う方です』


《居たんだ》

『ですね、独身で身軽だから送り迎えを手伝えだとか、子育ての練習をさせてやるってタダで面倒を見させようとするだとか。凄く親しい知り合いなら良いんですけど、職場の顔見知りだとか、単なる最近知り合ったご近所程度で頼まれましてもね』


《タエは優しそうだからね》

『そうなんですかね?』


《ネネもレンズも、ちょっと怖い顔だと思う》


『あぁ、確かに少しキツそうですけど、中身は違うんですよね』

《うん、優しいけど、俺はタエの優しいが好き》


『優しいって何ですかね』

《注意したり、敢えて注意しなかったりだと思う。理由が有って、言ったり言わなかったり、色々でしょ?》


『監督所って、そこまで学びの場所になってるんですね』

《うん、知識だけじゃダメだって良く分かった。本当にごめんね、何も知らなくて、ちゃんと考えて無かった》


『今は違うんですし構いませんよ、大丈夫、妖精さんにも教えて貰う事が多いんですから』

《もっと教えられる様に頑張るね、だから色々、タエの事も教えてね》


『何が知りたいですか?』

《何で俺は、お土産屋に行ったらダメだったの?》


『まだ私達には早いかな、そうした我儘です』

《そっか、タエが我儘を言ってくれたんだ》


『ですね』

《そっか》


 嬉しい。

 我儘って、気を許してないと無い事だから。


 嬉しいな。

 もっと、我儘を言ってくれないかな。

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