130 畑仕事。
お昼寝の後は引き続き畑仕事です。
お水をあげて、少し成長させ雑草を取ります。
それから再びお水をあげて、少し成長させて雑草を取ります。
『まだですか』
「もう少しお待ち下さい」
アズールがニョキニョキさせます。
ネネさんはウネウネが少し苦手で、少し不味い顔をします。
レンズは楽しそうにしてます。
玉響さんは、少し何か変わりました。
ウ〇コとは違う何かですが。
どう言えば良いのでしょうか。
『玉響さん、一緒にお散歩をしたいです』
《はい、喜んで》
どう言えば良いのでしょうか。
『何か変わった気がします』
《あら、お気付きになられてしまいましたか》
『少しです、どう違うのか分かりませんが、何か違います』
《レンズ様と、私はとても相性が良い、そう気付いてしまったのです》
『もう少し詳しくお願いします』
《ふふふ、申し訳御座いません、運命を感じてしまったのです》
『しまった、嫌ですか』
《今は、未だ、ネネ様を追い遣る事はしたくは無いのです》
『好きは、追い遣ってしまいますか』
《まだ、レンズ様のお心の準備が出来ては居りません。私は、ネネ様を綺麗に仕舞って頂いてからが良い、ネネ様を差し置いてまで何かをしたくは無いのです》
『混ざりたく無いと言う事でしょうか』
《そう、ですね、申し訳御座いません。私もこうした事は不得手で、そうなのかも知れない、そこまでしか申し上げる事が出来ません》
『いっぱいになって欲しいですか』
《それを望まれるなら、はい》
『どうすれば準備が出来ますか』
《出来事、時間、様々な要因が必要となりますが。急いでは居りません》
『アナタにも私にも時間の制限が無いからですか』
《はい、ですがレンズ様には有る。ご寿命を延ばされる気は無いのでしょう》
『はい、今の所は』
《ふふふ、お優しいですね》
『はい、家族ですから、死は最悪では有りません』
《はい、そうですね》
新しくレンズを大切にしたいモノが現れました。
コレは必然で運命です。
ですが人種は良く迷います。
間違えます。
『出来るなら、レンズには迷ったり間違えては欲しくないです』
《私は、最後に正しい正解を選べるのなら、それも構わないと思っております》
遠回りの事でしょうか。
『何故ですか』
《ご自分で選んで頂く、その為には時に迷って頂く必要が有る。選んで頂きたいのです、良く考え、選んで頂きたい》
『待てますか』
《はい、私が最後の女になれるのなら、幾らでもお待ち致しましょう。例え短くとも、その人生はレンズ様のモノ、添い遂げると言う事は沿う事なのですから》
『まだ私には良く分かりません』
《私の添い遂げる、ですから。もしかすればヒナ様の添い遂げる形が、他に有るのかも知れませんね》
私の、添い遂げる。
「異世界の、魔法の世界の醍醐味ですね」
《だな、そりゃ人口増加するワケだ》
1日で作付けから収穫まで出来てしまう。
何と言う事でしょう、田舎のスローライフを1日で満喫出来てしまう。
《さぁ、次はお料理を致しましょうか》
「はい」
『はい』
トウモロコシは醬油で焼き、モロヘイヤはスープ、空芯菜は炒め物。
つるむらさきは和え物に、そして紫蘇は炊き立てご飯にシラスと一緒に混ぜ込んで、おにぎりに。
「はぁ、凄い、豪華」
『はい、いっぱい有ります』
《では、頂きましょう》
「はい」
『頂きます』
トウモロコシとバターと醬油。
コレが分からない方とは食卓を一緒には過ごせません。
《酒が欲しくなる》
《薬酒なら御座いますよ、筋肉痛用ですが》
「どうぞお爺様、お譲り致しますわ」
《貰う》
《はい、只今》
「ヒナちゃん、“トウモコロシ”と言って頂けませんか」
『“トウモコロシ”』
可愛い。
「ありがとうございます」
食事中で無ければ胴上げしたい所ですが、後にしておきましょう。
続いてはモロヘイヤスープ、シンプルに昆布と鶏油とお塩だけですが、美味しい。
ミキサー並みに刻んだ甲斐が有りました。
レンズが、ですが。
《本場はニンニク等を入れるそうです》
《いや、コレで十分だと思う》
『はい、美味しいです』
「うん、美味しいです」
《ありがとうございます》
続いては紫蘇とシラスのおにぎり。
執事君にしっかり見極めて頂き、葉が柔らかい状態で収穫出来たので。
良い香りながらも舌触りが邪魔にならない、素晴らしい仕上がりとなりました。
『家でもお願いします』
《だな》
「はい、承りました」
そして箸休めに、つるむらさきの和え物。
海苔の佃煮と少量の梅で和えた品、コレだけでご飯が消える。
《ツマミだな》
「空芯菜の炒め物も同じ感想では」
《おう》
鶏油と秘蔵の鶏がらスープ、それとガルムで炒めただけ、ですが。
はい美味しい、コレもご飯泥棒です。
そう、お米に合うなら当たり前にお酒に合う。
良いんです、お米を食べれば同じ事、酔わなくとも食事が十分に楽しい。
ほんの少しだけ、羨ましいですが。
最後の最後、デザートが有る。
そう、ずんだ餅です。
「やはり、豆類がデザートとして出るのは、少し不思議ですね」
「ですよね、主食であったり、基本は塩味ですからね」
豆を多様する食文化。
栄養が良いですから、隙あらば栄養補給とする。
イソフラボン、胸に効け。
『どうですか灰色兎』
《はい、美味しいです、ありがとうございます》
そうなんです、見た目ほぼ人種ですが、食性が兎。
やっぱり皆で食事は気分が良い、と言うか安心する。
食欲が増すんですよね、同じ料理でも。
《ポンポコリンだな》
『もっと食べたいですが、吐かない限界です』
「また作って、また一緒に食べましょうね」
『野菜の日を作っても良いですか、毎年皆でお祝いしたいです』
ヒナ様のお言葉がネネ様に、見事に刺さりましたね。
「はい、毎年祝いましょう」
《なら、8月31日か》
『や、さい』
《そうそう》
《少しお手間を頂きますが、桃や西瓜も頂けますね》
「沼酸塊、ブルーベリーも時期かと」
「胡瓜、茄子、オクラも?」
「はい」
《ですね、ふふふ》
『灰色兎も来て下さい、家族を連れて』
《はい、必ず》
ヒナ様はご家族を求めてらっしゃる。
けれど、私達の事は何も仰らない。
コレは女王の威厳のなせる技。
公私を分けているのは、悪魔の血。
私の土地には存在しない、精霊に近しくも人種の様な存在。
コレは幸でしょうか。
それとも不幸なのでしょうか。
『もしかして、お野菜の日は本当に有りますか』
気付いたか。
《有る、なんなら毎日何か有るぞ》
『毎日』
《次の日は防災の日、その次は宝くじの日だ》
『宝くじ、お金が当たりますか』
《いやー、そうでも無い》
『当たったら何がしたかったですか』
《車を買って、保険をガッツリ掛けて運転手を雇って送迎させて、専用の酒を造らせて店に出す》
『お仕事ですか』
《だなぁ、あぶく銭は使って、自分達の金は自分達でしっかり貯めて。弟に何不自由無く過ごさせるつもりだった》
『不自由しましたか』
《いや、無いなりに過ごせるんだけどな。お前の為に頑張ってるんだぞって、誇示したかっただけだな》
『愛してるからですか』
《おう、そのつもりだった》
最近のヒナの興味は愛や好意。
愛着に理解は有るんだが、まだ好意には遠く、愛についてはかなり不安定だ。
『先代は好きですが、コレが愛かは分かりません』
執事君も、こうなんだよな。
《アイスは愛してるだろ》
『はい、守るべき存在です、絶対に途絶えさせません』
ココは合ってるんだ、定まってるんだがな。
《俺はどうだ?》
『いつか手放します、なので良く分かりません』
こんだけベッタリしといてコレだ。
しかもコレも、執事君と全く同じ。
《俺はヒナを愛してると思うだろ》
『そうだと思います、ですが特別が分かりません』
女王の血筋、悪魔の気質のせいか。
元のせいか。
せめて先代の名が分かれば良いんだが、何故か秘匿状態のまま。
いや、偏見を持たれない為に。
そうか、俺ら来訪者や宿星用か。
何処まで分かってるんだ、悪魔は。
《俺の未来の相手は分かるか》
『はい』
分かるのか。
凄いな悪魔は。