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106 魔女狩りと精霊の物語。2

 アレは魔女狩りなんかじゃなかった。

 当然の報いだった。


 私は無知だった。

 知ろうとしなかった。


 だから今は必死に学んでる。

 ココの事を。


 《精霊に虐められているそうだな、助けてやろうか》


 浅黒い肌、真っ青な瞳。

 男なのに、綺麗な人だと思った。


 「私は、下手な治療魔法で、人を害してしまったんです」

 《あぁ、だが知らなかったのだろう、仕方が無い》


 「ですけど、助けるつもりが」

 《亡くなった者は既に蘇生され、治療を受けた、お前が思い悩む必要は無い》


 「そう、なんですか」

 《あぁ、だからお前が精霊に虐められる必要は無い》


 良かった、誰も死んで無い。

 そう安心した。


 「でも、私」

 《手を取れ、お前を助け出してやる》




 人種は低きに流れる。

 何処までも何処までも。


《ふふふ、本当に可愛い子ね》


「ウ、ウンディーネ様」

《償いから逃げ出すだなんて、本当に星屑ね》


「ごめんなさい、でも、誰も」

《確かに蘇生された、けれど、苦痛の代償は払ったの?》


「ごめんなさい、でも」

《勉強が嫌で男に逃げた、さぞ、甘酸っぱい幸福に浸れたのでしょうね》


「そんな」

《あら、愉悦に浸った顔で抱かれていた分際で、罪悪感も実は有ったの。だなんて言うのかしら、ねぇ?》

《罪悪感なんぞは消し飛んでいたがな》


「ノーム様」

《何を裏切られた顔をしている、コレでも人種から守ってやっているのだぞ》

《そうよ、皮を剥ぎ再生する間、石を投げる案を実行しようとしているのだもの》


《俺達は可愛がってやっているだろう》

《精霊として、ね》


「何で、どうして」


《何故、どうして、精霊が人種の味方だと思い込める》

《アレだけ精霊を辱しめ虐げ、良い様に利用していたと言うのに。ねぇ、シルフ、サラマンダー》

『古の人種が精霊の子ですらもぞんざいに扱っていた事を、何も、知らないのだろう』

『良い様に利用するなら、良い様に利用されても、文句は言えないよねぇ』


 精霊が常に人の味方だ、などと。

 何故だ。


 あまりにも都合が良過ぎるだろう。




「ごめんなさい、ごめんなさい、許して」


《何を謝っているのかしらね?》

《言わねば伝わらない事も分からない、か》

『言えないのだろう』

『だろうねぇ』


 私は己の無知を恥じ、不出来を恥じ、行いを恥じています。


 向こうの世界の常識だけで考えていた。

 異世界だから、魔法が有るから。


 だから。


 そう追い詰められているわ。

 可哀想に。


《もう、そろそろ良いんじゃないかしら?》

《アシュタロト、この子を連れて行くの?》


《ふふふ、もっと面白くしてあげる》


《そう、なら譲るわ。ソロモン72柱、29位の悪魔、アシュタロト勲功爵に》


 残念だけれどホッとしている。

 惜しい、けれど手放すべきだとも理解している。


 愛して、憎んでいる。


《ふふふ、ありがとう。さ、行きましょう》

「いや、ごめんなさい、謝るから」

《あら良いの?私達と共に居るか、人種に引き渡されるか、だけれど》


 知らなかった、今も何も知らないまま。

 分からない、どう判断したら良いのか、誰が敵で味方なのか分からない。


 怖い、逃げたい。


《大丈夫、アナタを幸せにしてあげるわ》


「嘘、嘘よ、だってアナタ、悪魔だって」

『面倒だ、眠らせる』

《もう、シルフ、とっても可愛かったのに》

《あぁ、実にそそられる表情だったんだがな》

『ウンディーネもノームも、悪趣味だよねぇ』


《まぁ、好みは其々だもの、じゃあね》




 目が覚めると、知らない場所に居た。


「私は、ココは」

《僕はウンディーネ》

《私はノームだ》

『シルフ』

『サラマンダーだよ』


《さぁ、選んで。ココは君の為の異世界、君の為の世界》


 私の、世界。




《ふふふ》


 人は低きに流れるの。

 何処までも何処までも。


『確かに彼女は幸福かも知れない、だが君が、最も悪趣味だろう』

《あら、シルフ、やっぱり心配で来たのね》


『いや、幸せは確実だろう』

《ふふふ、素敵でしょう》


 彼女の好む外見をした人形の中身は、彼女が最も嫌悪する姿をしているの。

 そして最も油断した瞬間に、全てが暴かれる事になる。


 彼女は愛を試される。

 そうした試練の後、最後に選ばれた者と彼女は結ばれ、子を成す。


 彼女は子を成した相手も化け物だと気付かぬまま、彼女は幸福のままに一生を終え。

 子として生まれ変わり、全ての真実を知る事になる。


 「嫌、そんな、嘘」


『こうして、純粋な人種からココの人種にさせる意味は、何だ』

《彼女をココの主人公にしてあげるの》


『何が知りたいんだアシュタロト』

《素養により本当に知能は左右されるのか、教育により本当に伸びるのか、純粋な人種なら人種のままであり続けようとするのか》


『もう幾人もの実験を終えただろう』

《たったの3万人よ、向こうの人口に比べたら、小指程の数だもの》


『成果は』

《ふふふ、知っているでしょう、精霊と悪魔は何でも知っているのだから》


 精霊は自らを簡単に偽る事が出来無い。

 知らないフリ、見ぬフリ、感じぬフリが簡単には出来無かった。


 けれど、今はもう出来る。


『さぁ、どうだろうねぇ』

《ふふふ、パイを食べに行きましょう、サラマンダー》


 精霊の大元は1つ、()()と言う概念。


 彼ら彼女達は一心同体、共同体であり根源。

 最も原始的な感覚に分化された、()()


『もうそろそろ、封建制度を廃止した方が良いんじゃない?』

《そうね、王様がいっぱい居ると困っちゃうものね、星の子も》


 人種が大好きで大嫌い。

 だから個を細分化し、嬲り殺さない様に、壊さない様に精霊は努力している。


 けれど、大好きな人種に似ているからこそ、失敗もするわ。


 だから悪魔も協力するの。

 精霊も悪魔も、人種を愛しているから。


《まぁ、だが滅多な事では間違えないだろう、慎重なのだから》

《そうね、ありがとうノーム、ふふふ》


 不器用で器用な所が、本当に人種にそっくりなの。

 あの脆くて愛しい人種、私達の神様に、ね。


《やっぱり、僕らが傍に居たいなぁ、だって凄く可愛いんだもの》

《じゃあ、行きましょう、ウンディーネ》


《うん、今度は壊さない様にするよ》

《はいはい》




 学園で魔女狩りについて学んだので、私も偶には誰かを助けてみようと思い各地を回ったのですが。

 居ませんでした。


『アシュタロト、無碍に追放される方も、虐げられている方も居ませんでした』


《そうね、けれど居たなら、どうするのかしら》

『先ずは付け入り、国を内側から瓦解させ王族として使えそうな者だけを救い、他は見せしめの為にも処刑します』


《そうね、そうした後、時には世代交代の際に反旗を翻される》


『追放せず処分が妥当なのに、何故、追放だなんて隙が生まれるだけの事をするのでしょうか』

《無能だからじゃないかしら》


『いえ、無能な者は臆病です、だからこそ無能でも国を継続させられる。運で国を続けられる事は非常に稀です』


《そうね》


『では、この物語は何ですか』

《史実、私の箱庭での出来事、精霊と私の物語》


 天使名 Reiaiel(レイアイエル)

 期待と解放・宗教的感情、神聖な哲学や文字と模範、瞑想を司る悪魔。


 美徳と真実を広める熱意を持つ者を愛し、不信心を打破する者に惹かれ、不信心者と宗教の敵が大嫌いな悪魔。


 アシュタロトは女神でした。

 でも人によって悪魔にされました。


 けれど恨んでいるだけでは無いです、好きで、関わりたがっています。


『良く分かりません』

《そうね、ふふふ》


 嫌なら関わらなければ良いのに、関わります。

 良く分かりません。

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