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9 魔王城。

 翌日、私達はヒナちゃんと一緒に、地獄(ゲヘナ)の王城。

 ソロモン71柱、1番目に名の上がる、かの有名なバアル・ゼバブ王の住むお城へ向かいました。


 そして正式な訪問なので、同伴者として帝国の近衛兵、ケントさんも一応付き添う事になり。


「いやー、凄いっすね、他と全然違う」

《何か、寧ろ私達にとっては馴染み深いって言うか》

「どう見ても魔王城ですよね」


 若しくは、ドラキュラ城。

 何故、態々、おどろおどろしいお城なのか。


『分かります』

《ヒナ様、怖くない?》


『はい、カッコイイと思います、ずっと来てみたかったんです』

「ヒナ様の私室から見えますので、その影響かと」

《あー、夜とか最高にカッコイイかも》

「あー、確かに、満月とか似合いそうっすもんね」

「その満月、真っ赤ですかね」


「あ、それもカッコイイっすね」

『どっちも素敵ですよ、金色も真っ赤も』

《確かに似合いそう》

「では、参りましょうか」

「あ、はい」


 城内まではヒナちゃんと一緒に、以降は別行動となるのですが。

 全く、想像が付かない。


 城内は勿論、実際の地獄も、十六小地獄も。




《何か、気を遣って頂いてる?》


 王様はヒナちゃんと遊ぶから挨拶は不要、そのまま見に行って良いって。


『そうですね、悪名高い故に、星の子であれお会いになる事は滅多に御座いません』


 この黒髪なのに毛先が孔雀色をしてる方は、帝国の未来の女王様、エルちゃんと一緒に居るアンドレアルフスさんの本体。

 今回、案内役をして貰う事になったんだけど。


「何だか、申し訳無いのですが」

『いずれお会いする機会も有るかと、コチラで知恵熱を出されては向こうが騒ぐでしょうから』

《あぁ、ね?》


 エルちゃんは勿論、ネネちゃんラブズが大騒ぎするだろうしね。


「はぁ、お気遣い頂きありがとうございます」

『いえ、では、コチラです』


 中庭とは思えない程に大きな木が生えた場所。

 凄く深くて暗い森の中に、大きくて黒い、おどろおどろしい門。


 何だか、何処かで見た事が有るような。


「向こうの地獄の門、ですかね」

《あぁ!》

『はい、ご存知でしたか』


「若い女と支えてくれた古くからの女の間で揺れ動いた挙句、追い詰められ古い方と籍を入れたものの、最後にやっぱり若い女の方に逢いたい。とかほざいた方の名作ですよね」


《面白い方向の博識》

「兄に慰めて貰った時に知りました、はい」

『ソレに完成させました』


《あ、だから思ってたのと少し違うんだ》

『はい、向こうと同じく、2人の女に鼓舞させて』

「鼓舞、ですか」


『はい』


 この笑み。

 絶対、悪い意味の方だよね。


「成程、実に素敵ですね」

『ありがとうございます、では、どうぞ』




 熱くは無いが、真っ赤に燃え上がる炎の中。

 陽炎なのか幻なのか、ホログラムの様に虚像がチラつく。


 焼かれる死者と、賽の河原。


「賽の河原って、本来は仏教とは関係が無いんだそうです」

《あ、アレ賽の河原か》

『はい、1つは賽の河原、もう1つは煉獄(プルガトリウム)です』


「どちらも不条理で私は大嫌いです」

《あぁ、親より先に死んじゃった子、だっけ》

『はい、そして辺獄(リンボ)は洗礼を受けずに亡くなった者が彷徨う場所』


《あぁ、だから広まらなかったかもって言われてるよね》

「はい、極楽浄土に入る筈の祖父母が寂れた場所に落とされるなら、改宗はしないでしょう」

『そして向こうは血の池地獄、血盆経を元にした血盆地獄、熊野比丘尼(くまのびくに)と呼ばれる方々が主に広めた地獄です』


 月経や出産により流れた血が地を穢す、その為の地獄。


「不条理過ぎでは」

『はい、ですので不条理をさも道理の様に説いた者、そうして利を得た者等が落とされます』


 煮え立つ血の池に落とされた者は、煮え滾った汚血を飲まされ沈められ、不条理さを理解するまで出られる事は無いらしい。


《じゃあ、あの、赤い竹藪は》

不産女(うまずめ)地獄です』


 こよりの様な灯心、行灯の紐で男根の象徴である真っ赤に焼けた竹の根元を掘らされる。


「何故、女だけ、なのでしょうね」

『男に原因が有っては困るからでしょう』

《あぁ》


『ですので、ココでは故意であれ何であれ、不妊にさせた者が罰せられます。良くご覧になって下さい、地面を』


 竹の根元に埋まっているのは、男だった。

 灯心が触れるだけで激痛を誘うのか、ほんの少し触れるだけで顔を真っ赤にし、脂汗を噴き出しながら身悶えている。


 そして再び女に視線を戻すと、指先が腐り落ち骨が幾ばくか見えており、あまりの苦痛に指先を食い千切るが。

 瞬く間に戻った手先は直ぐに腐り始め、果ては飲み込んだ腐った指先が内臓までも腐らせ、臓器がドロドロと腐り出始めた。


《ネネちゃん、もしかしてグロ耐性強い?》

「あ、まぁ、スプラッター映画で慣らされたので」


《お兄ちゃん?》

「父ですね、造形に細かく文句を言ってました」


《あぁ》


『そしてコチラは、両婦地獄です』


 とある男は2匹の女の顔をした蛇に巻き付かれ、とある女は2匹の女の顔をした蛇に巻き付かれ。

 ボキボキ、ゴリゴリと締め上げられ、血反吐を吐いている。


《浮気、ですかね?》

『はい、ですが愛人と正妻、双方に同意を頂けていれば落ちません』

「悔しいですが少し安心してしまいました」


『既にお分かりだとは思いますが、地獄とは決して不条理に罰する場所では御座いません。害された者の苦しみを解き解し、諫め落ち着かせる場、そのついでに改心が望めれば良い場所』

《成程》


「ですが、供養すれば難を逃れられる」

『ですが限界が有ります、害された者が許してこそ。身内が金品で供養しようとも、結局は落ちるのです、後悔し許されなければ落ちるのが地獄。では、ご案内致します』

《はーい》




 賽の河原は、三途の川を渡る者への牽制。

 要は幻、知り合いや可哀想に思える子を見せているだけ。


 で、三途の川なんだけど。

 実は三種類の渡り方が有るから、三途の川なんだって。


 善人は立派な赤色の太鼓橋。

 中位はぎゅうぎゅう詰めの船。


『ソチラの平安中期には、女性の渡河と呼ばれる別の方法が有り、初めての相手に背負われ渡る。そうした俗信が有ったそうです』

「溺れさせる以外に考えられないんですが」


『その為かも知れませんね』


 で、悪人は真っ赤な深い川を渡るんだけど。

 その途中で有名な奪衣婆(だつえば)ってゾンビみたいな亡者に、両手の指を全部折られてから服を奪われる、服が無いと首から下の生皮を剥される。


 んでその服は懸衣翁(けんえおう)って同じくゾンビみたいな亡者が計量するんだけど、罪の重さがココで大体分かるらしい。


 でさ、やっぱり善人は善人なんだよね。

 どうやらココではフワフワと地獄だとしか思えないらしいんだけど、まだ有るからって、服を分けてあげるの。


 でも、流石地獄。

 今度はその人に群がろうとするから、正しく鬼って感じの極卒って言うのが、整列させて。


 そんなこんなで、閻魔大王様の前に並ぶ事になるらしいんだけど。

 門、鏡張り。


 しかも横には立て看板が。


浄玻璃鏡(じょうはりきょう)?》

「若しくは 浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)、ですね」


《ねー、何処から、のが出て来たの?》

「暗黙の了解です」


《んー》

「さ、先に行きましょう」




 閻魔大王は亡くなってから5番目に会う十王の方の1人。

 初七日、最初にお会いするのは。


『アチラが、秦広王(しんこうおう)です』


 傍に書物を持った侍従か家臣を従えた王が、めっちゃ凄みの有るお顔で、迅速に審理を捌いてらっしゃる。


「大変、お忙しそうで」

『刑が満了された方も居りますので』

《あぁ》


 善人であれば、ココで修羅道・人道・天道へと分けられるが。


『コチラでの分類ですが……』


 修羅道は守護霊や、仏に近い場所に格上げされ。

 人道はそのまま、再び人として生まれ変わる。


 そして天道は、極楽浄土や天国。

 しばし英気を養って頂き、格六道へ再分配されるらしい。


《え、じゃあ、天道からいきなり地獄へ行く事も有るんですか?》

『憂さ晴らしもですが、罰し、改心させる手伝いをなさいます』

「あぁ」


 そして手順としては、浄玻璃鏡から得た情報を使い、刑量を決める。

 生前の善悪と、供養。


《ココにも有るんですね、あの鏡》

『後悔させる為でも有りますから』


 橋を渡っていた老人が、鏡を見せ付けられていた。

 そこには若かった頃の老人が子供に何やら話した後、子供は泣き出した。


 けれど時は経ち、お葬式は手厚いものとなった。

 三途の川の渡し賃以上に、沢山の冥銭を手作りし、棺に詰め。


 ちゃんと泣いていた。


 何を言われたのか分からなかった、けれど見ているだけで恐怖と憎しみが伝わって来たのに、子供はしっかりと供養した。

 そのお陰で、お前は濡れず怪我もせずに川を渡れたのだ、と秦広王(しんこうおう)が笏で指すと。


 その手には、手作りの冥銭。

 大きい金額から、小さい金額まで。


 向こうで使い易い様に、と母子が夜更けまで作った物。


『ココが最も、お忙しいかも知れませんね、どの地獄に落とすかはココで決まるも同然ですから』

「何と言う中間管理職」


『当初は三途の川の渡り方から決めてらっしゃったそうですが、見極めの為にも、後方へと移られたそうです』

《あぁ、あの人に衣を貰ったから減刑してあげてくれって方も、居ましたしね》


『はい』

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