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天才少女と最低男

「ヘイいらっしゃい、ご注文は?」

 

「ラーメン大盛り、ニンニク野菜、マシマシで‼」

 

「お客さん、トッピングは後で伺いますから……」

 

「あら、やっちゃった」

 

思わずペロリと下を出す唯。勢いのある注文と活気にあふれた店の雰囲気


唯が指名した店は、俺も何度か来た事のある有名ラーメン店であった。

 

「本当にここで良かったのか?」

 

「うん、私一度来てみたかったの、でも中々女の子一人で入りにくいし……」

 

「ならいいのだけれど、でもあまり大学の合格祝いで来るところでは無いな」

 

「私の合格祝いだから私が来たい所でいいじゃない、さすがにここはおじいちゃんとも来られないし」

 

「まあお年寄りにはここはキツイわな、でもいいのか?ここの大盛りは半端ないぞ⁉」

 

「こう見えても私結構食べるのよ、でももし食べきれなかったら、駿介お願いね」

 

「ハイハイ、で、これ合格祝いだ」

 

俺は懐から先程買ったプレゼントを手渡した。

 

「えっ、嘘⁉私にくれるの?」


「当り前だろうが、【合格祝い】なのだから、ラーメン屋の店主にあげてどうするのだよ」

 

「開けていい?」

 

「もちろん」

 

嬉しそうに包装用紙を開ける唯、俺のプレゼントしたのは赤い高級ボールペンだ。

 

「ありがとう、嬉しいよ、駿介」

 

「何のひねりも無い定番中の定番で悪いが、いきなりだったからそれで勘弁してくれ


本当なら名前入りにしたかったのだが、なにせ唯の連絡が急だったからな


もう少し早く言ってくれていれば名前入りにできたのに」

 

「だって、しょうがないじゃない、〈お祝いちょうだい〉と催促していて大学落ちていたらカッコ悪いじゃないの」

 

「まあ、それもそうか、で、唯はどこの大学を受かったのだ?」

 

「東京大学の法学部よ」

 

「は?東大?しかも法学部⁉唯お前そんなに頭良かったのか⁉」

 

「だから言ったじゃない、私頭いいって……」

 

とんでもない女だな、コイツはバカか天才か?と思ったことがあったが、どうやら天才の方だった様だ


それにしても【国民的美少女】で東大法学部とか、どれだけ基本スペックが高いのだよ、コイツ……

 

「モデルを続けるつもりは無いと言っていたな、将来何をするつもりなのだ?」

 

「私、弁護士になりたいの……」

 

「へえ~意外だな、何か理由があるのか?」

 

「うん、まあ……」

 

先ほどまでのウキウキした雰囲気とは一転して急にテンションが下がってうつむく唯


何だ?珍しく歯切れが悪いな。

 

「別に言いたくないなら無理に言わなくていい、俺にも聞かれたくない話とかあるし」

 

「ゴメンね、駿介」

 

「何で唯が謝るのだよ?」

 

「いや、いきなり呼びつけておいて理由は言いたくないとか、何か私嫌な女じゃない?」

 

「何を今更、初対面の時は俺を変質者呼ばわりしたのだぞ、それに比べれば」

 

「もう、その話は止めてよ、何度も、何度も‼」

 

「しょうがないだろ、あの時の仕返しというか唯をからかう材料としてはすごく面白いし


まあせめてそのぐらいはいじらせろ、あっラーメン来たぞ⁉」

 

目の前に現れたのは山のように野菜がもられたラーメン、全て食べれば俺でも満腹になる一杯だ


この暴力的ともいえるラーメンと目の前の細い体の美少女とのマッチングはなんとも違和感がある。


「うわ~、凄い大盛りだね、来た甲斐があったわ」

 

それから俺達は唯の東大合格祝いのラーメンを夢中で食べた


湯気が立つ大盛りのラーメンを美味しそうに食べる唯の姿はとても楽しそうでこちらまで嬉しくなってくる。


それはおごっているこちらが幸せになってくるような不思議な感覚だった。


「う~ん、おいしかった‼」

 

店を出て嬉しそうに背伸びする唯。


「それにしても本当に食べきるとは……男でも結構苦戦するのに、唯は胃袋もすごいな」

 

「もっと褒めていいわよ、女は褒められて綺麗になるのだから」

 

「いや褒めてないし、どちらかというと皮肉だし


それにその身勝手な理屈はどうにかならないのか?東大法学部の言葉とは思えないぜ」

 

「何よ、今日ぐらい褒めてくれたっていいじゃない」

 

「悪かった、以後気を付けます。それでこれからどうする?口直しにどこかで飲み物でも飲んでいくか?」

 

「私ファミレスでパフェ食べたい‼」


唯は元気いっぱいにそう言い放った。

 

「げげっ、まだ食べるのか?」

 

「デザートは別腹っていうじゃない」

 

「さっきから非論理的な発言が目立つが、唯は頭がいいのか馬鹿なのかわからないな」

 

「ちゃんと試験に合格して受かったのだから、認めてくれてもいいじゃない」

 

「いや、よく言うだろう〈勉強のできる馬鹿〉って、もしかしてお前はそれか?」

 

「どうあっても私を馬鹿にしたいみたいね、本当に意地が悪い、もっと私を褒めてよ」

 

「どうせ褒められ慣れているのだろう?美人で頭がいいとか、唯の様な人間はそうはいないだろうし……」

 

すると唯は突然両目を見開き嬉しそうな表情を浮かべこちらを見つめてきた。

 

「もう一度言ってよ……」

 

「は?」

 

「もう一度、もう一度、私を褒めてよ」

 

「ハイハイ、唯様。お前は美人で可愛くて天才、〈天は二物を与えず〉というが


それを真っ向否定する存在がお前さんだよ、全く世の中って奴は不公平だ」

 

「何よ、その言い方、引っかかるわね」

 

「せめて嫌味ぐらい言わせろ、俺みたいな凡人は唯みたいに何でも持っている訳じゃないからな


皮肉の一つも言いたくなるってモノだ、だがそのぐらい凄い事をやっているのだよ、お前は……


唯はとても可愛い、唯は凄く頭がいい、唯は意志の強さと信念というヤツを持っている


そんな高校生がこの日本にどれだけいると思っている?これは俺の本心だよ


何度も言うお前は凄いのだよ、だからもっと自分を誇れ、胸を張れ


自分の信じる道を堂々と突き進め、何があってもくじけるな、頑張れ‼


世間の奴らに唯の凄さを見せてやれよ。

  

文脈的にちょっと違うとは思うが改めて言うよ、大学合格おめでとう、唯


そしてこれからの唯の人生に幸あらん事を……って、ちょっと言いすぎか?


何だかこっちが恥ずかしくなってきた、今のはできれば忘れてくれ」

 

「何よ、それ……そんなこと言われて忘れる訳無いじゃない……ありがとう駿介、嬉しい、嬉しいよ……」

 

すると唯は両手で自分の顔を覆い、突然声をあげて泣き出したのである


道行く人々が〈何事か?〉とこちらを見て来る


これではどう見ても幼気な女子高生を路上で泣かせた最低男にしか見えないだろう⁉

 

「お、おい、いい加減もう泣くなよ、聞いているのか唯⁉」

 

「無理言わないでよ、自分が悪いじゃないの‼」

 

「そうだけど、そうじゃないだろう……」

  

もう俺は諦めた、初めて会った時からコイツには振り回されっぱなしだ


〈欲求不満の変質者〉という称号に〈路上で女子高生を泣かせる最低男〉


というトッピングが加わったとしてもたいして変わらないだろう……


もうなんでもマシマシで付け加えろ、どうにでも好きにしてくれ‼ 


これからしばらく唯が泣き止むまで俺は甘んじて世間の批判の目を一身に浴びる事になったのである。



頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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