合格祝いに駆けつけて
「げげっ、何じゃこりゃあ⁉」
唯がテレビCMをやる様なモデルだと知り、家に帰って来て何気なしに〈ウィキペディキュア〉をのぞいてみた
するとそこにはとんでもないエピソードが載っていたのである。
その中でも特出すべきは【第21回国民的美少女コンテスト優勝】と書かれていた事だ
何だ、これ?【国民的美少女】?あの狂犬女が日本一の美少女だと⁉嘘ですよね?
確かに唯の見た目は可愛いが正直言ってアイツに女を感じた事など一度も無い
まあ七つも年下の女子高生なのだからそれは仕方がないのかもしれないが、それにしても……
〈私、結構可愛いと思うけれど〉という言葉が頭に蘇ってきた
確かに【日本一の美少女】ならばそういう権利はあるだろう
馬鹿とか言ってすみませんでした、でも本人の目の前では絶対に謝らないけれどな。
あれから一か月が過ぎ、あれ以来唯には会っていないがたまにメールが来る様になった
内容はどうでもいい事ばかりで特に特出すべき事の無いものだが、そんなやり取りが何か嬉しかった。
そんなある日、唯からのメールを見て俺は思わず目を細める
その内容はたった一言で【頼みたいことがあります、電話してもいいでしょうか?】というモノであった
何だ、何があった?わざわざこんなメールをよこすなんて……
俺は何かあったのではないだろうか?と心配になり【はい】という短いメールを返信した
すると送って数秒も経たないうちにスマホの着信音が鳴り響いたのである
余程の緊急の用件だろうか?俺は慌てて電話に出た。
「もしもし、唯か?どうした⁉」
〈ゴメンね、駿介、いきなり変なメール入れて……〉
「いや、別にかまわないが、何かあったのか?」
〈何かというか、あったのはあったのだけれど……〉
「どうした?唯らしくない言い方だな、ハッキリ言ってみろ」
〈実は大学に合格したのだけれど……〉
「そうか、それはおめでとう、それで何かトラブルでもあったのか?」
〈トラブルではないのだけれど……駿介、お祝いしてくれない?〉
「は?何だ、どういう事だよ?」
〈大学に合格しただけれど、お祝いしてくれる人がいないの、だから……〉
「えっ、どういう事だよ?大学の合格祝いならば家族とか
友達とかが祝ってくれるはずだろう?何で俺なのだよ⁉」
〈前にも話したと思うけれど私両親いないし、おじいちゃんは海外で今いないの……〉
何やっているのだ、お爺さん。孫の合格祝いの時に海外とか⁉町内会のハワイ旅行にでも行っているのか?
「友達はどうした?」
〈私、友達いないし……祝ってくれる人が誰もいなくて……〉
なんという悲しい事を言う【国民的美少女】だ、祝ってくれそうな相手に思い当たるのがよりにもよって俺しかいないとは⁉
「わかった、すぐ行く、どこに行けばいい?」
〈本当?来てくれるの?〉
「ああ、仕事早めに切り上げて行ってやる、何処に行けばいい?」
〈じゃあ例の駅で〉
「わかった、なるべく早く行くから」
〈ありがとう、駿介〉
俺は会社に〈得意先との食事で直帰する〉と噓の連絡をして仕事を切り上げた
たまにある事なので別にかまわないだろう、営業という仕事は精神的にきつい所もあるが
成果さえ上げていればこういった時間を自由に使うことが出来るという強みがある。
急な事だったのでもちろん合格祝いのプレゼントなど用意していない、何が適切か急いで検索し慌てて店に駆け込んだ。
例の駅に着いた時にはもうすでに唯は来ていた、辺りは既に暗くなり始めていて人通りも増えている
だがこうして改めて見てみると人ごみの中でも一際目を引く美少女がそこにはいた
唯の事を知ったせいなのか、たった一か月ちょっと会わなかっただけでまた一段と綺麗になった気さえした。
「悪い、遅くなった、そして大学合格おめでとう、唯‼」
「ううん、来てくれただけでうれしいよ、ありがとう駿介」
満面の笑みで嬉しそうに微笑む唯は本当に可愛いかった
早めに咲いた夜桜の花びらが夜風に吹かれて唯の頭上から舞い落ちて来くる
それはまるで映画のワンシーンの様だった思わず見とれてしまった俺だが、ハッと我に返り慌てて話しかける。
「で、これからどうする?予定が無いのなら俺が合格祝いに何かおごってやるが」
「本当にいいの?」
「当り前だ、これでも一応社会人だからな、合格祝いに何でも好きなモノを食わせてやる、遠慮なく言え‼」
「本当にどこでもいいの?」
「お、おう……大概の所ならいいぞ」
「クスッ、どうして〈どこでもいい〉から〈大概の所〉に変わるのよ?」
「そりゃあ、俺もしがないサラリーマンだからな
何処でもいいとはいえ限度がある。カッコ悪いが予算的に十万円以内で頼む」
「そんなに高い所行かないわよ、私の行きたい所はね……」
唯は嬉しそうに微笑みながら俺に告げた。
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