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土砂降りの誓い

俺が大雨の中唯を探し回っていた頃、唯はびしょ濡れの中で前も見ずにうつむきながら走り続けていた


何処へ行こうというのでもない、ただただその場から逃げ出したかったようだ


そんな時、曲がり角で三人組の若い男と正面衝突の様にぶつかる。

 

「痛って、何だ、コラ‼」

 

「こっちまで濡れてしまっただろうが、どうしてくれる‼」


「黙っていないでスミマセンの一言ぐらい言えや、何か言ったらどうだ、あ⁉」


怒りの表情を浮かべながら威嚇するように言い放った男たちだったが


唯は黙ったまま立ちすくんでいた、そんな彼女の態度に三人の男は益々苛立ちを募らせる

 

「このアマ、謝る事も出来ないのか‼」

 

「俺達を舐めているのか?あ⁉」

 

「おもしれえ、社会の常識って奴を教えてやる、ちょっと来い‼」

 

一人の男が不意に唯の腕を掴んだ。

 

「ちょっと、何するのよ‼」

 

いきなり腕を掴まれ驚きの声をあげる唯、恐怖で顔が引きつり全身が震え始めた。

 

「ちゃんと喋れるじゃねーか」

 

「びしょ濡れだが、よく見ればコイツ結構可愛くないか?」

 

「だったら、もっといい声で泣かせてやるか、ちょっとこっちに来い‼」

 

腕を引っ張りながら無理矢理裏路地へと引っ張っていこうとする若い男達


思わずその場で座り込んで抵抗する唯だったが、大の男が三人では相手になるはずも無く


そのままズルズルと引きずられていった。

 

「止めてよ、嫌、駿介‼助けてよ、駿介‼」

 

泣きわめく唯の口を塞ぎ、無理矢理引っ張っていこうとする男達だったが


その悲痛な叫び声がこの大雨の中でも俺の耳に届いたのだ。

 

「何やってやがる、てめえら‼」

 

裏路地で口をふさがれ無理矢理腕を掴まれている唯の姿を見た時


俺の中に例えようのない怒りが込み上げてきた。


まるで体の中の血液が沸騰したかのような、腹の底からマグマが噴出して来たかの様な


今まで味わったことのない感情が俺の全身を支配した。

 

「汚い手で唯に触るのじゃねえ、サッサとその手を離せ、このガキども‼」

 

今迄使った事の無いボキャブラリーが思わず俺の口から飛び出す


興奮状態で自分自身が何を言っているのかすらわかっていない、それほどまでに俺は熱くなっていたのだ

 

「あ⁉何だ、てめえ、この女の知り合いか?舐めているのじゃねえぞ‼」

 

一人の男が居丈高な態度で俺に近づいて来て胸倉を掴もうとした


その瞬間、俺は反射的にその手を掴むとその男を投げ飛ばした。


「ぐはっ」


その男はあっという間に半回転して濡れた地面に背中から叩きつけられ


その衝撃でアスファルトに溜まった水溜りがバシャーンという音をたてる


俺に投げられたその男は口をぱくつかせ、呼吸困難の状態のまま


ヒューヒューと口から異音を鳴らし必死で呼吸をしている


約四年間のブランクがあるとはいえ、中学、高校、大学とやって来た柔道の技はまだ体に染みついていたようだ。

 

「タカシ‼、てめえ、タカシに何しやがる‼」

 

「コイツ何かやっているぞ、気を付けろ、シンジ‼」

 

残りの二人の男は懐から特殊警棒を取り出し構える、完全に俺を敵とみなし戦闘態勢を取って来た。

 

雨が激しく降り続く中で地面にあおむけに倒れているタカシという男は


目から涙を流し、必死で酸素を取り込む様に呼吸をしていた。

 

「てめえ、タカシに何をしやがった⁉」

 

その質問に対し、俺は必至で気持ちを押さえ冷静を装った口調で返す。

 

「コイツには受け身の取れない形で背中から落とした、しばらくは呼吸もままならないだろう


お前らもこうなりたくなかったら、さっさと唯から手を放せ‼そしてどこかに消え失せろ‼」


俺の気迫に二人の男は一瞬怯んだが、すぐに持ち直し怒気を含んだ口調で言い放った。


「てめえが何をやっているのかは知らないが、丸腰で勝てると思うなよ‼


こっちは武器を持っている上に二人いるのだ、絶対にぶちのめしてやるからな‼」


その瞬間、俺はこれ見よがしに思わず笑って見せた。


「何がおかしい‼頭がいかれていやがるのか⁉」


凄む男達を前に完全に主導権を取る為、俺は余裕綽々と言った感じで語り始める。


「これが笑わずにいられるか、俺が丸腰?そんな訳無いだろう」


「てめえ……ナイフでも隠し持っているのか⁉」


「違う、俺の武器はお前らの足元にあるだろう」


「足元だと⁉」


二人の男はチラリと下に視線を向けたがすぐにこちらを見て口を開く。


「何も無いじゃないか、つまらないハッタリを……」


「馬鹿かお前らは、あるだろうお前らの足元にアスファルトが


こんな固い地面に背中からじゃなくて頭から落としたらどうなると思う?


頭蓋骨など簡単に砕けて良くて脳障害、悪ければ死だ、でも構わないだろう?


今の単なる馬鹿から喋るのと歩くのが困難な馬鹿になるだけだ、馬鹿は死ななきゃ治らないというしな


じゃあ俺が治してやるからさっさとかかってこい


その棒を振り下ろした瞬間、お前らの体を一回転させてやる


なあに痛くはない、一瞬で気を失うからな、気が付いたらベッドの上か雲の上だ


楽しいスローライフが待っているぜ」

 

お前等とは格が違うとばかりに言い放ってやった。やや演出過剰気味だったが、それなりの効果はあった様だ


二人の男はゴクリと息を飲み、地面に倒れている男を抱えて逃げるように去っていった。

 

「大丈夫か、唯⁉」

 

濡れたアスファルトに座り込んだままガタガタと震えている唯


余程怖かったのだろう顔面蒼白のまま目の焦点も会っていない程怯えていた。

 

「立てるか?」

 

俺の差し出した手を取りようやく立ち上がると、すがりつくように抱き着いて来た。

 

「怖かった……、私どうなってしまうのだろうって……」

 

「もう大丈夫だ、俺がいる、俺が守ってやるから」

 

俺は唯の震える体を強く抱きしめた、お互い雨でびしょ濡れだが


唯の体温が直接伝わってきて温かみを感じさせる、良かった、唯が無事で……

 

しばらくすると唯は落ち着きを取り戻し、ようやく一息付けた。

 

「大丈夫か唯?」

 

「うん、少し落ち着いた、有難う駿介、まるで白馬の王子様みたいだったよ」

 

「痴漢変態男から随分と出世したな、でも悪くない」

 

俺が微笑みかけると唯は再び抱き着いて来た、俺の胸に顔をうずめて小さな声で囁くように語り掛けてきた。

 

「もう嫌、駿介と離れ離れはもう嫌なの……」

 

「わかった、俺が悪かった、ずっとそばにいるから、唯のそばにいるから……」

 

「本当?嘘じゃない?約束よ」

 

「ああ、約束する……でも知らないぞ⁉」

 

「えっ、何が?」

 

「俺だって唯に会いたいのをずっと我慢していた


唯の勉強や仕事の邪魔をしたくないって、ずっと耐えていたのだからな


こうなったら本当にずっとそばにいるからな、嫌だと言ってもそばにいる


今度はしつこいとかうっとうしいとか言うなよ‼」


するとようやく笑顔を見せた唯、髪の毛もびしょ濡れで化粧も完全に落ちているが


とてつもなく可愛い笑顔。ああ、俺はこの笑顔に魅かれてコイツに惚れたのだ、この笑顔を守りたくて……


コイツは本当にずるいよな、どんなに怒りっぽくても、感情の起伏が激しくてワガママでも


思い込みが激しくて無茶苦茶な事を言って、いつも振り回されてばかりだけれど


この笑顔一つで全部帳消しとか本当に唯はずるい、でもそれがいい……


「言わないよ、ずっとそばにいて、唯は凄いって、唯ならできるって、ずっと私を褒めてよ……


そして私を好きだって言って、そうしたら私は何だってできるから……」


「わかった、ずっとそばにいてやる。唯は、将来は美人敏腕弁護士で


スーパーモデルで世界的な大女優様だ。司法試験何か楽勝だ、ただの合格じゃない、一番で合格しろ


満点を取ってみせろ、唯ならそれが出来る、俺が保証してやる、世間の奴らにお前の凄さを見せてやれ」


「ありがとう、駿介、嬉しい……私頑張るよ、あと、その……」


「わかっている」


俺はもう一度唯を強く抱きしめた。


「俺は唯が好きだ、世界中の誰よりも……お前は俺が守る


その為には白馬の王子にだって、姫を守る騎士にだって、痴漢変態男にだってなってみせるさ」


「クスッ、でも最後のは別にいいかな、でも本当に?」


「ああ、口だけじゃないところを見せてやる」


そう言って俺は唯の細い腰を強引に引き寄せ口づけをした


最初は少し驚いた様子で硬直してしまった唯だったが、すぐに全身の力が抜けそっと目を閉じた


大粒の雨が降りしきる路地裏で俺は唯に誓い告げ、口づけをかわした。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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