表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/32

加納唯

翌日の月曜日の朝、今日も肌寒い中で空は青く澄み切っていた。


だが俺の心もブルーで心も寒い。そんな上手くもない事を考え眠い目をこすりながら


いつもの様に電車に乗り会社に向かっていると、突然後ろから声が聞こえてきた。

 

「ちょっと、アンタ、止めなさいよ‼」

 

聞き覚えのあるセリフに聞き覚えのある声、おいおいまさか⁉

 

俺が確認の為に振り向くと、そこにはまたもやあの眼鏡の女子高生がいたのである


しかも相手は明らかにガラの悪い男性。何を考えているのだ、アイツは⁉

 

「あ、何じゃワレ‼誰に向かって能書きたれとるのじゃ‼」

 

「誰って、アンタしかいない、次の駅で降りなさいよ‼」

 

車内は再び騒然となる、しかしあの女はそんな事気にする様子も無く男を糾弾していたのだ


あの女、相手を見て行動しろよ、世間知らずとかいうレベルじゃないぞ、あの馬鹿は⁉

 

「このアマ、殺すぞ、コラ‼」

 

「そんな脅しには乗らないわ、さあ来なさい、警察に突き出してやる‼」

 

益々ヒートアップする男に対し、一歩も引かない眼鏡女子高生


これがコントやドッキリ企画ならば、中々にシュールな絵面だが、リアルでコレはさすがにやばいだろ?

 

これは助けたほうがいいのか?……ええい、知った事か


また面倒に巻き込まれて会社を遅刻したら目も当てられない


そもそも俺には関係ない、前の件でも俺は被害者だし、あの馬鹿が勝手に突っ走って……

 

次の駅で逃げる様に降りる男の腕を掴んで離さない眼鏡女子高生


逆上した男は思わず拳を振り上げた、それを見ていた他の客から軽い悲鳴が上がり


眼鏡女子高生の顔に恐怖が走る。拳が振り下ろされる瞬間、眼鏡女子は思わず身をすくめ両目を閉じる。


「いてててて」

 

自分に向けられた拳がいつまでたっても来ない事を不思議に感じた眼鏡女子は恐る恐る目を開けると


そこには腕をねじ上げられ痛がっている男の姿があった


そしてその男の腕をねじ上げているのは何を隠そう俺である。


「いててて、放せ、放しやがれ‼」

 

「アンタ、女子高生相手に全力で殴りに行くとか、痴漢どころか傷害罪で捕まるぞ」

 

何が起こったのか理解できない眼鏡女子はキョトンとした顔を浮かべてこちらを見ていたが


ハッと我に返り、口を開いた。

 

「貴方、この前の……どうして?」

 

「どうしてだかこっちが聞きたいぐらいだ。で、コイツは本当に痴漢なのか?」

 

「ええ間違いないわ」

 

「本当だな?」

 

「もちろん、だって被害者は私だもん」

 

「そうか……じゃあそういう事だおっさん、もう観念したらどうだ?」

 

必死にもがきながら何とか逃げようとする男だったが、今度は怒りの矛先をこちらに向けてきたのだ。

 

「テメー、一体何のつもりだ‼殺すぞ‼」

 

俺は軽くため息をつき淡々とした口調で男に告げた。

 

「俺こう見えても柔道三段なので、暴力で来るならそれなりの対応をしますが、どうしますか?」

 

俺の言葉を聞いた男は今度こそ観念したのか、ガックリとうなだれ抵抗を止めた。

 

だがやってしまった、これで今日も遅刻確定だ。とりあえず電話だけは入れておくか。

 

駅員が来たので痴漢男を突き出すと俺はお役御免という事で会社に向かうことが出来たが今日も完全な遅刻


今回はきちんと会社に連絡を入れておいたし正当な理由があるとはいえ


あの岡田課長が〈はい、そうですか〉で済むとは思えない……あ~会社行きたくね~

 

そんな重い気分のまま会社へ向かおうとした時。

 

「あの……」

 

後ろからの声に振り向くとそこには例の眼鏡女がいた。

 

「今回は……じゃなくて、今回もありがとうございました」

 

丁寧に頭を下げてきたが俺的にはもうどうでも良かった。

 

「いや別にいいよ、俺が勝手にやった事だし……だが、お前は一体何を考えているのだ?

 

もう少し相手を見て行動しろよ、こう言っては何だが俺がいなかったらアイツに殴られていたぞ⁉」

 

「以後気を付けます……」

 

「ああ、そうしてくれ、じゃあな」

 

「ちょっと待ってください‼」

 

俺が立ち去ろうとした時、またもや呼び止められた。今度は何だ?

 

「あの、前回の事も含めて、きちんとお礼がしたいので、また日を改めてどうでしょうか?」

 

「別にお礼とかいいよ。さっきも言ったが、俺が勝手にやった事だ、大体お前は……」

 

「加納唯……」

 

「えっ?何?」

 

「私の名前、お前じゃなくて、加納唯……」

 

「おっ、おう、わかった……だから……クソっ、もう時間がない、じゃあな」

 

「名前教えてよ‼」

 

「何だ?」

 

「貴方の名前よ‼」

  

この時間の無いときに……何なのだ、この女は。仕方がないので俺は懐から名刺を取り出し無造作に渡した。

 

「これが俺の名刺だ、ここに連絡先が書いてある、用があるのならそこに連絡をよこせ、時間がないから俺は行くぞ‼」

 

その加納唯という名の女子高生の返事を聞くことなく、急いで会社へと向かった俺


もちろん大遅刻であり、結果的に岡田課長からは有り難いお言葉を目一杯いただく事になった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ