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新たなる決意

弁護士への道は俺が思うよりも想像以上に厳しいようで、俺は思わず本音で話しかけた


「俺がネットで調べた〈司法試験の合格率〉は去年で30%ぐらいだったから


唯ならば楽勝だろう、などと軽く考えてしまっていたよ」


俺の言葉に思わず険しい表情を浮かべる唯

 

「弁護士になるには司法試験に受かって弁護士資格を取らなければいけないじゃない


でも司法試験って誰でも受けられるものではないのよ」

 

「そうなのか?〈イチかバチかダメ元で〉みたいな人間も受験するから


合格率が低いのかと思っていたのだが……」

 

唯はゆっくりと首を振って静かに語り始めた。

 

「司法試験を受ける為には二つの道があるの、一つ目は法科大学院を卒業する事」

 

「法科大学院?あまり聞きなれない学校だな、法学部の大学院みたいなモノか?」

 

「まあ、正確にいえば違うけれど、そう考えていいわ


だけれど法科大学院という所は弁護士や検察官になりたい人が


その為に必要な学識及び能力を培う事を専門に教える所よ


いうなれば法のエキスパートを育成する機関といっていいわ」

 

「そこを卒業しないと司法試験を受ける事すらできないという事か⁉」

 

「そういう事、そして法科大学院は通常三年、早い者で二年という就業期間なの」

 

その時、俺はとんでもない事に気が付いた。

 

「おい、唯……それって、かなり優秀な者でも法科大学院を卒業するには二年はかかるという事だよな?」

 

「そうなるわね……」

 

「確か、事務所であの女社長と約束というか交わした契約内容は


〈大学に入って五年間は学業優先〉という契約だったよな?」

 

「ええ……」

 

「おい、ちょっと待てよ……大学に四年間、法科大学院に早くても二年間


という事は最短でも合計六年はかかるという事じゃないか⁉」

 

「正確にいうと、司法試験に合格してから〈司法修習〉といって


一年間の研修期間が必要よ、そしてまた最終的に試験があるの」

 

なんということだ……じゃあ、弁護士になるには七年必要という事じゃないか⁉


いくら唯が天才だといっても、物理的に無理なモノは無理だろう


俺はそんな事もしらずにあの女社長と契約をしてしまったのか⁉


俺は自分の浅はかさに頭は真っ白になった、そんな俺の様子を見て呆れたようにため息をつく唯。


「何て顔しているのよ、ちゃんと話を聞きなさい、駿介」


「しかし唯、俺は……」


「さっき言ったでしょう、司法試験を受けるには二通りあるって」


「そうか、もう一つの方法が⁉」


「うん、時間的に私はそちらを目指す事になるわ


その方法とは【司法試験予備試験】に合格する事よ」


「【司法試験予備試験】?何だかややこしい名前だな」


「まあネーミングセンスは置いといて、わかりやすい名前でしょ?


〈司法試験〉を受ける権利を獲得する試験という訳よ」


「そうか、司法試験は日本一難しい資格試験と聞いたことがあるが


試験を受けるにも資格がいるとは……でも、研修に一年必要という事は?」


「ええ、四年間の大学在学中に【司法試験予備試験】に合格し


本番の【司法試験】にも一発合格する必要があるわね」

 

モデルの仕事をこなしながらそんな離れ業を……とんでもない事じゃないか⁉

 

「唯、いくらお前でも……」


俺がそう言いかけた時、唯はそれを遮るように口を開いた。

 

「出来るわ、世の中には社会人で仕事しながら司法試験を受ける人だっているのよ、できる‼」

 

それは自分に言い聞かせている様にすら見えた


唯がもの凄い才能を持った天才だということは知っている


だが司法試験というのは全国から集まった天才たちがしのぎを削って少ない枠を競い合う


いわば知能のサバイバルウォーなのだ。

 

子供の頃から〈神童〉と呼ばれていた人間ですら何年も司法試験に受からないと聞いたこともある


モデルという仕事もこなしながら本当にできるのであろうか……

 

「唯、俺は……」

 

「そんな顔しないで‼」

 

俺の不安な心を見透かすように、再び俺の言葉を遮った。

 

「難しい事はわかっている、でも信じて、必ず合格してみせるから‼」

 

「しかし、体が持つのか?もう少しモデルの仕事を減らしてもらうように……」

 

「大丈夫よ、さっきも言ったでしょう、これでも減らしてもらっているのよ」

 

「しかし、今の話を聞いたら、いくら何でも無理じゃないのか?」

 

俺はついその言葉を吐いてしまった、唯が凄い才能を持っている事はわかっている


しかしコイツは性格的にぶっ倒れるまで無理をするだろう


いくら頑張ろうと思っていたとしても人間には体力の限界があり


気持ちと体は別物である、正直唯の体が心配なのだ。


そもそも唯は芸能人として成功を約束されたような人間であり


【佐山グループ】総帥の孫娘なのだ、そんな無理などしなくとも


人生の目標を少し軌道修正すれば人生の勝ち組として突き進むことも容易いだろう、だが唯はそれをしない。


〈両親を尊敬し、その志を継ぐために弁護士になりたい〉


その為にはどんな困難でも打ち勝とうとする強靭な意志


理想を追い求めそれに向かってどこまでも突き進む事しか頭にない


そういう愚直で不器用な女なのである、だからこそ眩しく輝く


誰もが振り向き憧れる様な絶対的な何かを持っている


ふと思ったが歴史的な偉人というのはこういう人間なのかもしれないな、と


だが歴史的な偉人というのは一定数の割合で短命である


一瞬で光り輝き燃え尽きる花火のように……


唯にはそうなって欲しくない、そんなとんでもない考えが頭に浮かんだ。

 

「言わないで……」

 

唯は小さな声でボソリと呟いた。

 

「えっ、何だって?」

 

「無理だなんて、言わないで……誰がどう言おうがかまわない


でも駿介だけは信じてよ、私ならできるって〈そんなのお前なら楽勝だ〉って言ってよ‼」


唯のこの反応に正直少し戸惑ってしまった、やはり唯も不安なのだろう


俺がどんな言葉をかけたところで気休めにしかならない事は重々承知している


だがそれにすらすがりたいという気持ちもわからなくはない


どんな形であれ唯の力になるのであれば……

 

「ああ、大丈夫だ、唯ならやれる。弁護士になって、それでスーパーモデルになって


ついでに世界的な大女優になれよ、お前なら必ずできるさ」


自分で言いながら滅茶苦茶な事を言っていると自覚はしている


そのどれか一つに絞ったとしてもおいそれとなれるものではないというのに……


「ありがとう駿介、私頑張るわ」


そう言って微笑んだ唯だったが、その笑顔はどことなく寂しいモノだった


その時俺は決意したのである。唯が夢を掴むまで、俺はどんなことでも協力すると


たとえそれがお互い望まない形だとしても……


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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